ChatGPT Pulseとは、過去の対話をもとにAIが毎朝、自分向けの要約を先回りで届ける機能のことです。
これまでのChatGPTは、こちらが質問して初めて答える「待つAI」でした。ChatGPT Pulseは、夜のあいだに過去の対話や保存した情報を分析し、翌朝に自分向けのカード形式の要約を届ける「先回りするAI」です。本記事は2026年6月時点の状況に合わせて全面更新し、EC事業者がPulseを市場の変化監視や競合ウォッチに使うための設定の考え方と、ブリーフィングの精度を上げる指示文を10本掲載します。情報を取りに行く時間を、AIが用意した要約を読む時間に置き換えるのが、Pulseの本質的な価値です。
待つAIから、先回りするAIへ
Pulseの仕組みはシンプルです。ユーザーの対話履歴、保存された記憶(メモリ)、過去のフィードバックを夜間に分析し、翌朝に5〜10枚程度のカードとして要約を提示します。各カードはテキストと画像で構成され、その日に知っておくとよいトピックが並びます。GmailやGoogleカレンダーと連携させれば、予定や受信内容も踏まえた要約になります。質問を打ち込む手間なしに、関心領域の動きが毎朝まとまって届くのが、従来のChatGPTとの決定的な違いです。
登場は2025年9月で、当初はモバイルアプリ専用、かつ上位プランでの提供が中心でした。2026年に入り、提供範囲は段階的に広がってきています(対応プランや提供地域の詳細は時期により変わるため、ChatGPTの公式案内で要確認)。EC事業者にとって重要なのは、機能の細かな提供条件よりも、「毎朝の情報収集をAIに任せる」という運用をどう設計するかです。Pulseは設定とフィードバック次第で、届く要約の質が大きく変わります。
現場で繰り返し見るのは、Pulseを入れたものの、何を要約させたいかを伝えていないために、関心とずれたカードが届いて使わなくなるパターンです。Pulseは、こちらの関心を学習して精度を上げる仕組みなので、最初に「何を毎朝知りたいか」を明確に伝える初期設定が肝になります。ChatGPTをEC運用に組み込む全体像はChatGPTを楽天RMS運用で使う方法も合わせて読むと、Pulseの位置づけが見えてきます。
ChatGPT Pulseの主要機能とEC運営での使いどころ
Pulseの機能は大きく3つです。1つ目は、過去の対話に基づく自動要約です。日々ChatGPTで相談している内容の延長で、関連する新しい論点や続きを翌朝に提示します。EC運営でいえば、前日に相談した商品企画や広告の話題について、考えるべき続きをカードで投げかけてくれる、という使い方になります。2つ目は、連携アプリを踏まえた要約です。カレンダーの予定やメールの内容を踏まえ、その日の準備に役立つ情報をまとめます。
3つ目は、フィードバックによる学習です。届いたカードに対して評価(良い・いまいち)を返すと、翌朝以降の要約に反映されます。EC事業者が市場のトレンドや競合の動きを毎朝把握したい場合、この学習を使って「自分の関心領域を毎朝ブリーフィングするアシスタント」に育てられます。市場トレンドの監視、競合店舗の動向ウォッチ、顧客の関心の変化の把握といった、これまで手作業で情報源を巡回していた業務を、Pulseの要約に置き換える余地があります。
EC運営での使いどころを具体化すると、朝の30分を情報収集に使っていた担当者が、Pulseのカードを5分で読み、残りを施策の検討に回す、という時間の組み替えが可能になります。ただしPulseの要約はあくまでAIの整理であり、重要な意思決定は一次情報で裏取りする前提です。要約で「気づき」を得て、必要なものだけ深掘りする、という二段構えが現実的な使い方です。
たとえば、食品ギフトを扱う店舗なら、母の日やお中元、年末といったギフト需要の立ち上がりを早めに知らせてもらう設定が効きます。アパレルなら、季節の変わり目の需要変化や、競合の値下げの動きを毎朝のカードで把握できます。化粧品やサプリのように規約や表現の制約が厳しいジャンルでは、モールのガイドライン更新を優先的にブリーフィングさせると、薬機法や景表法に関わる仕様変更を見逃しにくくなります。共通するのは、これまで複数のサイトやニュースを巡回して集めていた情報を、Pulseが一枚のカード群にまとめてくれるという点です。情報源を探す時間が消え、読んで判断する時間だけが残ります。
ブリーフィングの精度を上げる10の指示文
Pulseの要約の質は、こちらが何を求めているかを伝えるほど上がります。ここでは、Pulseに毎朝のEC向けブリーフィングを出させるための指示・フィードバックの文例を10本示します。これらは通常のChatGPTの対話やメモリ設定、カードへのフィードバックとして使い、関心領域を学習させていきます。{ジャンル} などの中括弧を自店の値に置き換えてください。
(指示1:関心領域の宣言)
私は{ジャンル}のEC事業者です。毎朝のブリーフィングでは、次の3領域を優先してください。
1. {ジャンル}の市場トレンドと需要の変化
2. 主要モール(楽天・Amazon・Shopify)の仕様変更やキャンペーン情報
3. 競合がよく使う訴求や価格の動き
(指示2:要約の粒度指定)
ブリーフィングのカードは、各3〜4文で要点だけにまとめてください。
詳細が必要なときは私が深掘りするので、最初は見出しと結論だけで構いません。
(指示3:競合ウォッチの観点)
競合に関するカードでは、次を観点にしてください。
- 新商品・セールの動き
- 訴求メッセージの変化
- レビューで言及が増えている不満や要望
事実と推測を分け、推測には「目安」と添えてください。
(指示4:季節需要の先読み)
今後30〜60日で需要が立ち上がりそうな{ジャンル}のイベントや季節要因があれば、毎朝のカードで早めに知らせてください。
発注や企画の準備に間に合うタイミングで提示してほしいです。
(指示5:モール仕様変更の監視)
楽天・Amazon・Shopify・Yahoo!ショッピングの仕様変更やガイドライン更新に関する情報は、優先度を上げてブリーフィングしてください。
特に商品ページ・広告・手数料に関わる変更は見逃したくありません。
(指示6:自店の課題に紐づけ)
私はいま{自店の課題:CVR改善/リピート向上 など}に取り組んでいます。
毎朝のカードでは、この課題に関係する打ち手のヒントを1枚は含めてください。
(指示7:フィードバックの方針)
(届いたカードへの評価として)
このトピックは私の関心に合っています。今後も{この領域}の情報を増やしてください。
逆に、{無関係な領域}のカードは減らしてください。
(指示8:情報の信頼性の扱い)
ブリーフィングで数字や統計に触れるときは、出典の有無を明記してください。
裏が取れない情報は「未確認」と添え、断定しないでください。
(指示9:アクションへの落とし込み)
各カードの最後に、私が今日とれる小さなアクションを1つ提案してください。
読むだけで終わらせず、すぐ動ける形にしてほしいです。
(指示10:週次の振り返り)
週末のブリーフィングでは、その週に届いた主要トピックを5つに集約し、
来週優先すべきテーマを3つ提案してください。
これらの指示とフィードバックを続けると、Pulseは自店の関心に沿ったブリーフィングへと育っていきます。ChatGPTのEC活用全体はChatGPT EC活用大全で俯瞰でき、Pulseはその日常運用の入口として機能します。
Pulseを業務に組み込む3つのステップ
Pulseを使い始めるときは、いきなり全部任せるのではなく、段階を踏むと精度が安定します。ステップ1は、関心領域の初期設定です。本記事の指示1のように、自店のジャンルと、毎朝知りたい3領域を最初に伝えます。ここを曖昧にすると、的外れなカードが届いて使われなくなります。最初の1週間は、届いたカードに丁寧に評価を返し、関心の輪郭をPulseに学習させる期間と捉えると、その後の精度が変わります。
ステップ2は、連携の取捨選択です。GmailやカレンダーをPulseに連携させると、予定や受信内容を踏まえた要約になりますが、業務で機微な情報を扱う場合は、何を連携させるかを慎重に決めます。まずは連携なしで関心領域の要約だけを試し、必要だと判断した連携だけを後から足す、という順番が安全です。連携は便利さとプライバシーのトレードオフであり、最初から全部つなぐ必要はありません。
ステップ3は、運用への定着です。毎朝Pulseのカードを読む時間を決め、その中から「今日深掘りするもの」を1つだけ選ぶ習慣をつけます。すべてのカードに反応しようとすると続かないため、1日1アクションに絞るのが現実的です。アパレル系の単一店舗で試したケースでは、朝礼前の5分でPulseのカードを確認し、その日の施策に1つ反映する運用に定着させたところ、情報収集と施策実行の間の時間差が縮まったという例がありました(効果は運用体制による目安)。Pulseは導入して終わりではなく、毎朝の小さな習慣に組み込んで初めて効果が出ます。
利用条件とプライバシーの注意点
Pulseは、こちらの対話履歴・メモリ・連携アプリの情報をもとに要約を作ります。便利な反面、何を学習させ、何を連携させるかは慎重に選ぶ必要があります。Gmailやカレンダーといったアプリ連携は任意で、連携すればその情報も要約の材料になります。業務で機微な情報を扱う場合は、どこまで連携させるかを社内で決めておくと安心です。要約に使われる情報の範囲は設定で管理でき、不要な連携は解除できます。
もう一つの注意は、Pulseの要約を鵜呑みにしないことです。AIが整理した要約は出発点であり、発注や価格、規約対応といった重要な判断は、必ず一次情報で確認します。Pulseは「気づきの入口」として使い、深掘りと決定は人が担う、という分担が安全です。ChatGPTの会話やデータを社内で整理する方法はChatGPTの保存先とEC業務での管理も参考になります。
将来のエージェント機能への布石
Pulseは、AIが先回りして動く「エージェント」へ向かう流れの一歩と位置づけられます。いまは要約を届けるところまでですが、今後は要約から一歩進み、提案されたアクションの一部をAIが下準備する方向へ広がる可能性があります(具体的な機能拡張は要確認)。EC事業者にとっては、情報収集だけでなく、定型的な準備作業までAIが先回りする未来が見えてきます。
その時代に備えて今できるのは、Pulseに自店の関心と課題を学習させ、毎朝のブリーフィングを運用に組み込んでおくことです。AIに何を任せ、何を人が判断するかの線引きを、要約という軽い段階から練習しておくと、エージェント機能が広がったときに無理なく移行できます。Pulseは、その練習台として手頃な入口になります。
補足すると、Pulseと従来の「アラート設定」は似て非なるものです。検索アラートやニュース通知は、こちらが条件を細かく決めて初めて動きますが、Pulseは対話の積み重ねから関心を推測し、条件を明示しなくても関連トピックを拾い上げます。その分、最初は的外れも混じりますが、フィードバックを続けるほど精度が上がる学習型である点が違いです。条件を組む手間を、毎朝の評価という軽い作業に置き換えたのがPulseだと捉えると、使い方のイメージがつかみやすくなります。EC運営では、扱う商材や注力する施策が季節や事業フェーズで変わるため、固定条件のアラートより、関心の変化に追従するPulseのほうが運用に馴染む場面が少なくありません。
よくある質問
ChatGPT Pulseは無料で使えますか
Pulseは上位プランでの提供が中心で、対応プランは時期により変わります。最新の提供条件は公式案内で確認してください。まずは自分のプランで利用できるかを確かめ、使えない場合は通常のChatGPTで関心領域の対話を続け、メモリを育てておくと、利用可能になったときにスムーズです。
Pulseの要約はどのくらい正確ですか
要約はAIによる整理であり、事実の保証ではありません。数字や統計には出典の有無を確認し、重要な情報は一次情報で裏取りする前提で使います。Pulseは気づきを得る入口として有効ですが、意思決定の根拠にする前に確認する習慣が必要です。
EC運営でPulseは何に使えますか
市場トレンドの監視、競合店舗の動向ウォッチ、モール仕様変更の把握、季節需要の先読みなどに使えます。朝の情報収集の時間を要約を読む時間に置き換え、空いた時間を施策の検討に回す、という使い方が現実的です。複数の担当者がいる場合は、それぞれの関心領域でPulseを育てると、商品・広告・カスタマーサポートといった役割ごとに最適化されたブリーフィングが届くようになり、チーム全体の情報感度が底上げされます。
Pulseに自店の関心を覚えさせるには
最初に関心領域を明確に伝え、届いたカードに評価を返し続けることです。本記事の指示文を使って優先領域や粒度を伝え、関心に合うカードは良い評価、ずれたカードは減らす指示を返すと、要約が自店向けに育っていきます。
Pulseを使うときのプライバシー上の注意は
対話履歴やメモリ、連携アプリの情報が要約の材料になります。機微な業務情報を扱う場合は、どのアプリを連携させるかを社内で決め、不要な連携は解除しておくと安心です。要約に使う情報の範囲は設定で管理できます。
著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。