待つAIから、先回りするAIへ
OpenAIが2025年9月25日にリリースした「ChatGPT Pulse」は、ChatGPTの使い方を根本から変える新機能です。これまでのChatGPTは、ユーザーが質問を投げかけてから回答する「リアクティブ型」でしたが、Pulseは夜間に自動でリサーチを行い、翌朝パーソナライズされた情報を届ける「プロアクティブ型」のアシスタント機能として登場しました。
OpenAIのCEOサム・アルトマンは自身のXアカウントで「私のお気に入りのChatGPT機能」と評価しており、同社のアプリケーションCEOであるフィジ・シモは「これまで富裕層だけが利用できたハイレベルなサポートを、すべての人が利用できるようにする」とビジョンを語っています。
ChatGPT Pulseの3つの主要機能
1. 夜間の自動リサーチと朝の配信
Pulseは毎晩、ユーザーの過去のチャット履歴、保存されたメモリ、フィードバック内容を分析します。そして翌朝、5〜10枚程度のビジュアルカード形式でパーソナライズされた情報を配信します。各カードにはAI生成の画像とテキストが含まれており、一目でスキャンできる設計になっています。
重要なのは、ソーシャルメディアのような無限スクロール設計ではなく、「今日はここまで」というメッセージで終了する点です。これは意図的な設計であり、エンゲージメント最適化ではなく、ユーザーの生産性向上を目的としています。
2. アプリ連携によるコンテキスト強化
PulseはGmailとGoogleカレンダーとの連携が可能です。これらの連携はデフォルトでオフになっており、ユーザーが設定から「プロアクティブアクティビティを許可する」をオンにすることで有効化できます。
連携すると、Pulseは以下のような提案を行います。
- 予定されている会議の議題案を作成
- 誕生日が近い人へのギフト購入リマインダー
- 旅行先のレストランやイベントのおすすめ情報
なお、GmailとGoogleカレンダーのデータはモデルのトレーニングには使用されず、いつでも設定から接続を解除できます。
3. キュレーション機能でカスタマイズ
Pulseが提供する情報は、ユーザーのフィードバックによって日々改善されます。各カードに対してサムズアップ・サムズダウンで評価できるほか、「キュレート」機能から具体的なリクエストも可能です。
例えば「毎週金曜日に地元のイベント情報をまとめて」「プロテニスの最新情報に注目して」といった指示を出せば、翌日のPulseに反映されます。現地時間の午後10時までにキュレーションした内容は、翌朝に反映される予定です。
利用条件と今後の展開
現在、Pulseはモバイルアプリ版(iOSとAndroid)のChatGPT Proユーザーのみが利用可能です。月額200ドル(約3万円)のProプランが必要であり、Web版やデスクトップ版では利用できません。
OpenAIは今後、Plusプランへの展開を予定しており、最終的にはすべてのChatGPTユーザーが利用できるようにする計画を示しています。ただし、Pulseは高い計算リソースを必要とするため、段階的な展開が必要とされています。
また、Pulseを利用するには「メモリ機能」をオンにする必要があります。設定の「パーソナライゼーション」から「保存されたメモリを参照する」「チャット履歴を参照する」「提案でメモリを参照する」をすべてオンにしてください。
なお、日本語版のChatGPTアプリでは、Pulseは「おすすめ」タブとして表示されます。サイドバーの「おすすめ」からアクセスできるほか、設定で「新しいチャットで『おすすめ』を表示する」をオンにすることで、メイン画面にも表示されます。
将来的なエージェント機能への布石
OpenAIは、Pulseを単なる情報配信機能ではなく、将来的なAIエージェント機能への第一歩と位置づけています。長期的には、レストランの予約やメールの下書き作成など、ユーザーに代わって実際のアクションを実行できる機能を目指しています。
ただし、そのような高度なエージェント機能の実現には、AIモデルのさらなる改善と、ユーザーからの信頼獲得が必要です。現時点では、情報収集と提案に特化した機能として提供されています。
プライバシーとデータ管理
Pulseで表示される情報は1日限りで、翌日には自動的に削除されます。ただし、ユーザーが「保存」アイコンをタップしてチャットとして保存した場合や、カードをタップして会話を開始した場合は、通常のチャット履歴として残ります。
また、Pulseで表示されるトピックは、OpenAIのポリシーに違反する有害なコンテンツを表示しないよう、安全性チェックを通過しています。
まとめ
ChatGPT Pulseは、AIアシスタントの新しい形を示す革新的な機能です。ユーザーが質問するのを待つのではなく、AIが先回りして必要な情報を届けることで、日々の情報収集を効率化します。
現在はProユーザー限定ですが、今後より多くのユーザーに展開されることで、AIとの付き合い方が大きく変わる可能性があります。EC事業者にとっても、市場動向の把握や競合分析、顧客トレンドの把握など、ビジネスに必要な情報を自動で収集してくれる強力なツールになるでしょう。
引用: openai
