PCを閉じても動き続けるAI──Claude Code「Routines」がEC業務の自動化を次のフェーズへ進める

投稿日: カテゴリー Claude

「自動化したい業務はあるのに、サーバーを立てるほどでもない」──EC運営の現場では、こうしたグレーゾーンの作業が積み上がっていませんか。毎朝の競合ニュースチェック、問い合わせメールの一次対応、開発タスクの定型処理。一つひとつは小さくても、積み重なると店長やマーケ担当者の時間を確実に奪っていきます。Anthropic社が2026年4月に公開した「Routines」は、この領域を狙った機能です。Claude Codeに保存した自動化を、自分のPCを閉じたままクラウド側で動かし続けてくれます。EC事業者にとって何が変わるのか、何ができて何ができないのかを、実務目線で整理します。

クラウドで動く「保存型AIエージェント」という発想

Routinesは現在リサーチプレビューとして提供されている、Claude Codeの新機能です。仕組みはシンプルで、プロンプト・リポジトリ・コネクター(Slack、Notion、Linear、Google Driveなど外部サービスとの接続設定)を一度パッケージ化して保存しておくと、それがAnthropicのクラウド上で自動実行されるという構造になっています。トリガーは三種類用意されており、「毎朝7時」のようなスケジュール起動、外部からのAPI呼び出し、そしてGitHubのイベント反応から選べます。一つのRoutineに複数のトリガーを組み合わせることも可能です。

これまでの定期実行AIといえば、自社サーバーやクラウドファンクション、cron設定、Mac miniをクローゼットに置いて常時起動といった泥臭い運用が主流でした。Routinesの本質的な価値は、こうしたインフラ管理を全部Anthropic側に丸投げできる点にあります。利用可能なのはPro・Max・Team・Enterpriseプランで、1日あたりの実行上限はProが5回、Maxが15回、Team・Enterpriseが25回と段階的に設定されています。

先に押さえておきたい「できないこと」

EC事業者が誤解しやすいポイントを最初にお伝えしておきます。Routinesはクラウド上で動くため、ログイン操作が必要なGUI画面の自動化はできません。具体的には、楽天RMS、Amazonセラーセントラル、Yahoo!ストアエディタといった主要モール管理画面に勝手にログインして、入札を変えたり商品を編集したりすることは仕様上できません。これらは別の手段(自前のブラウザ自動化、Claude in Chrome、公式APIなど)で対応する領域です。

逆に言えば、APIで完結する業務、外部サービス連携で済む業務、思考や分析が中心の業務は、Routinesが圧倒的に得意です。EC事業者が活用しやすい領域に絞って見ていきます。

EC事業者が今すぐ使える、4つの実践ユースケース

1つ目は、業界ニュースの日次キュレーションです。 毎朝決まった時刻にRoutineが起動し、EC業界・AI業界・楽天やAmazonの公式アップデートを巡回。重要度を判定して上位3〜5本に絞り込み、自社事業に関連する観点のコメントを添えてSlackに投稿する、という運用が組めます。経営者やマーケ責任者が出社直後に「今日押さえるべきニュース」を把握できる体制は、判断スピードに直結します。

2つ目は、問い合わせフォームの一次対応自動化です。 自社ECサイトの問い合わせフォームから入った問い合わせを、APIトリガーでRoutineに送信。Claudeが内容を読み解いて「商品クレーム」「配送トラブル」「購入前相談」「BtoB案件」などにカテゴリ分けし、それぞれに合わせた返信ドラフトを生成。担当者のSlackやメールに「カテゴリ+返信案」が届く仕組みです。中小ECで起こりがちな「問い合わせの一次仕分けで時間を取られる」課題に、サーバー構築なしで対応できます。

3つ目は、Shopifyや海外マーケットプレイスなどAPI公開型ECの定期分析です。 ShopifyやBASE、海外のShopeeやLazadaなど、APIが公開されているプラットフォームでは、Routineから直接データを取得できます。週次で売上・コンバージョン率・流入経路を取得し、前週比・前月比を計算して、Claudeが「先週との変化点」を文章でレポートする。Notionに自動投稿しておけば、月曜の朝礼資料がそのまま完成しています。

4つ目は、開発・サイト運用関連の自動化です。 GitHubトリガーを使えば、自社ECサイトのリポジトリへのプルリクエストに自動でレビューコメントを付ける、リリース時に変更点を要約してSlackで関係者に通知する、といった運用が可能です。エンジニアを抱えるEC企業や、サイト改修を内製している事業者には、レビュー工数の削減効果が大きく出ます。

自前スクリプトと、どう使い分けるか

Routinesがすべての自動化に適しているわけではありません。決まったルールで動く処理──たとえばCSV変換、API経由の在庫同期、定型レポートのフォーマット作成などは、GASやPythonで自前構築したほうが、コストも実行回数も自由度も上です。Routinesの1日5〜25回の上限は、頻度の高いバッチ処理には向きません。また実行のたびにサブスクリプションの使用量を消費するため、単純な定型処理を回すには割高になります。

使い分けの判断軸はシンプルで、「毎回中身が違う処理で、AIの判断が必要か」がイエスならRoutines、ノーなら自前スクリプトです。ニュース選定や問い合わせ仕分けなど、結果が文脈依存になる業務はRoutines向き。一方で、毎日決まった時刻にデータベースから売上を取り出して集計するだけならPythonやGASで十分です。両者を組み合わせて、定型部分は自前で回しつつ、AIの判断レイヤーだけRoutinesに切り出す構成が、もっとも費用対効果が高くなります。

日本のEC事業者は、ここから何を始めるべきか

最初に試すべきは、低リスクで効果が見える業務です。具体的には、「業界ニュースの朝刊化」あたりが手堅い候補になります。失敗してもダメージがなく、毎日効果を実感できる領域です。慣れてきたら、問い合わせ対応の一次仕分けやAPI連携系の分析へと展開していくのが自然な流れになります。

導入時の注意点は二つあります。一つは、Routineが無人実行のため、途中で承認プロンプトが出ない仕様だということ。プロンプト設計の段階で「何をやらせるか」と「何を達成したら成功か」を明確に書き切る必要があります。もう一つは、コネクターと環境変数のスコープ管理です。各Routineに必要最小限のアクセス権だけを渡すことで、想定外の操作を防げます。

リサーチプレビュー段階のため仕様変更の可能性はありますが、「インフラを持たずにAIエージェントを24時間動かせる」という発想自体は、今後のEC運営の標準装備になっていくはずです。早めに触っておくことで、競合より一歩先の自動化体制を築けます。

引用:https://claude.com/blog/introducing-routines-in-claude-code

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投稿者: 齋藤竹紘

齋藤 竹紘(さいとう・たけひろ) 株式会社オルセル 代表取締役 / 「うるチカラ」編集長     Experience|実務経験 2007年の株式会社オルセル創業から 17 年間で、EC・Web 領域の課題解決を 4,500 社以上 に提供。立ち上げから日本トップクラスのEC事業の売上向上に携わり、 “売る力” を磨いてきた現場型コンサルタント。 Expertise|専門性 技術評論社刊『今すぐ使えるかんたん Shopify ネットショップ作成入門』(共著、2022 年)ほか、 AI × EC の実践知を解説する書籍・講演多数。gihyo.jp Authoritativeness|権威性 自社運営メディア 「うるチカラ」で AI 活用や EC 成長戦略を発信し、業界の最前線をリード。 運営会社は EC 総合ソリューション企業株式会社オルセルTrustworthiness|信頼性 東京都千代田区飯田橋本社。公式サイト alsel.co.jp および uruchikara.jp にて 実績・事例を公開。お問い合わせは info@alsel.co.jp まで。

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