Walmartが、米国で築いた「会員・マーケットプレイス・広告」の循環モデル(フライホイール)を国外へ広げ始めました。Modern Retailによると、サブスク「Walmart+」が2026年6月4日にカナダで初の米国外展開を開始し、同時に組織もグローバル体制へ再編しています。Amazonが先行してきた越境×マーケットプレイス×リテールメディアの統合戦略を、もう一社の小売最大手が本格化させた格好です。日本のEC事業者にとっても、出店先の主戦場がどう変わるかを読む材料になります。
何が起きたか:Walmart+のカナダ展開とグローバル再編
Walmart Canadaで始まったWalmart+は、35ドル以上の同日配送無料、エクスプレス配送割引、サイト送料無料に加え、HBOやMaxを含む動画サービスCraveの視聴特典を束ねた会員プログラムです。Walmart+のSVP兼GMであるDeepak Mainiは「Walmart+は単なる配送サブスクではなく関係構築のドライバーだ」と述べ、利用頻度の向上が習慣化を生み、顧客との接点が増えるほど価値が積み上がる循環を強調しています。
数字も伸びています。米国のeコマース売上は前年比26%増、グローバルeコマース売上も同26%増、米国の広告事業は36%増、グローバル広告は37%増、週間の顧客数は1億5000万人に達しました。組織面では、米国チーフグロースオフィサーだったSeth Dallaireが全社グローバルCGOに昇格し、米国マーケットプレイス責任者のManish Jonejaがグローバルのマーケットプレイス・フルフィルメント統括に就いています。会員・出店者・広告主・物流を一体で回す「フライホイール」を、国境をまたいで設計し直す布陣です。
クロスボーダーの実務も動いています。ベトナムや中国からの在庫を米国・メキシコ・カナダの国境周辺で受け渡す仕組みや、関税・税務を追跡するシステムを構築中で、3か国をまたぐ広告連動の販売戦略も進めているとされています。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
第一に、マーケットプレイスの主戦場が「単品の安さ」から「会員フライホイール」へ移ることです。Walmartが会員費・購入頻度・リテールメディア視聴・再訪・年間支出を一つの輪として設計しているように、楽天市場の楽天会員・楽天ポイント・RMS広告の関係も同じ構造を持ちます。出店者が見るべきKPIは、単発のCVRだけでなく、会員化率とリピート購入の積み上げに移っていきます。
第二に、リテールメディア(モール内広告)の比重がさらに高まる点です。Walmartの広告が前年比36〜37%で伸びている事実は、モールが広告収益を成長エンジンに据えていることを示します。楽天市場のRPP広告やAmazonのスポンサープロダクト広告でも、広告費を織り込んだ商品設計と利益管理が一段と重要になります。
第三に、越境のハードルである関税・税務・物流をプラットフォーム側が巻き取り始めたことです。WalmartがVietnam・中国発の在庫と国境フルフィルメントを整える動きは、Amazonのグローバル物流網と同じ方向で、日本の越境EC事業者にとっては「自前で関税計算と海外配送を抱えるか、プラットフォームの仕組みに乗るか」という選択がより鮮明になります。
今後の展望と初動アクション
まず、自社が出店する楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングそれぞれで、会員プログラムやポイント施策と連動した購入頻度のデータを見直すことをおすすめします。フライホイールは一度の販促より、再訪と習慣化の指標で測るほうが実態に合います。
次に、リテールメディア広告の費用対効果を、商品単位の粗利と合わせて月次で点検する体制を整えておくと、モール側が広告比重を上げても利益を守れます。
最後に、越境を検討している場合は、関税・消費税の表示と返品フローを早めに整理しておくことです。プラットフォームが越境機能を拡充するほど、後発でも参入しやすくなる一方、価格と着荷スピードの競争は激しくなります。なお、Walmartの個別施策が日本のモール運営に直接適用されるわけではないため、自社の出店先の最新規約は都度確認してください。
まとめ
Walmartの越境フライホイール戦略は、モール競争の軸が「会員・広告・物流の循環設計」に移ったことを象徴しています。日本のEC事業者は、単品の安売りではなく、会員化率・リピート・広告効率という循環指標で自社を測り直す好機ととらえるとよいでしょう。
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。