Perplexity Buy Nowとは、AI検索の回答内でそのまま購入まで完結できる購買機能のことです。
AI検索サービスPerplexityの購買機能Buy Nowは、2026年7月に月間利用者200万人を超え、ショッピング機能全体の流通額は年換算20億ドル規模に達したと報じられています(報道ベースの数字、要確認)。注目すべきは、この新しい購買経路でDTC(自社EC)ブランドやShopifyストアの露出が相対的に増えている構造です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、Buy Nowの仕組みとMerchant Program登録の実務、日本のEC事業者が取るべき初動を解説します。
Perplexity Buy Nowを取り巻く2026年の構造変化
Buy Nowの仕組みを先に整理します。Perplexityの利用者が「予算150ドルでキャンプ用のコンパクトなバーナーを探して」のように相談すると、AIが候補商品を推薦し、対応商品なら回答画面内のボタンからそのまま決済まで完了します。決済はPayPalとVenmoが処理し、販売者はマーチャント・オブ・レコード(売主としての立場)を維持したまま、Perplexity側への販売手数料はかかりません。送料はPerplexityが負担する無料配送が適用される設計で、カゴ落ちの最大要因を購買経路の側が消しにきています。
この経路への商品掲載を左右するのがPerplexity Merchant Programです。無料で申請でき、登録すると商品データのインデックス(AIの商品データベースへの取り込み)が優先され、チャット内決済の対象になり、検索・購買トレンドのダッシュボードも提供されます。とりわけShopifyストアは扱いが優遇されており、米国のShopifyストアの商品データは連携経由で自動共有され、チャット内決済は2026年1月から全Shopifyマーチャントに開放されました。申請自体は5分程度で済む簡易なものです。
もう1つの構造変化が、Amazonとの関係です。AmazonはPerplexityのエージェント経由での自社サイト購入を認めない方針を取っており、その結果としてPerplexityの商品推薦ではAmazon以外の情報源、つまりDTCブランドや独立系ストアの商品が相対的に上位へ浮上しやすくなったと分析されています(海外の運用者向け分析の報告ベース、要確認)。モール内の検索順位競争では大手に届かない中小ブランドにとって、AI検索経由は「土俵ごと変わる」チャンスになり得ます。当媒体ではShopifyがAI経由売上の計測を開始した動きも扱っており、AI経由の商流を数字で追う基盤も揃い始めました。
Merchant Programに登録した場合に得られるダッシュボードの価値にも触れておきます。提供されるのは、自社商品がどんな検索・相談の文脈で表示されたかというトレンドデータで、これはモールの検索キーワードレポートのAI版に相当します。顧客が「どんな言葉で探すか」ではなく「どんな相談をするか」が見える点が新しく、商品開発やページ改善の一次情報として、販売額以上の価値を持つ可能性があります。キーワード広告の検索語句レポートを商品改善に使ってきた運用者なら、この データの使い道はすぐに想像がつくはずです。
規模の評価も冷静にしておきます。月間200万人・年換算20億ドルという数字は、日本の楽天市場やAmazon.co.jpの流通額と比べればまだ小さな水準です。ただし、ChatGPTが決済連携を進める動きをChatGPT内決済の記事で扱った通り、主要AIサービスがそろって「会話から購入まで」を囲い込みに来ており、Buy Nowはその先行事例として増加率と設計思想を見るべき対象です。
日本のEC事業者にとっての使いどころ
現時点で最も恩恵が大きいのは、米国向けに販売している、または販売を計画している事業者です。Merchant ProgramのShopify自動連携は米国ストアが対象のため、越境ECでShopifyの米国向けストアフロントを持つ日本ブランドは、追加開発なしでAI検索経由の販路を1つ増やせる位置にいます。食品・美容・工芸など「検索では見つけてもらえないが、相談型の質問なら推薦され得る」商材ほど相性がよく、たとえば「日本製のギフト向け包丁で200ドル以内」のような質問は、モール検索よりAI相談で発生しやすい典型例です。
国内販売が中心の事業者にとっては、今日の売上への直接効果は限定的です(日本語圏でのBuy Now展開は未発表、2026年7月時点・要確認)。それでも準備を勧める理由は、対策の中身がGoogleのAI OverviewやChatGPT検索への対策と共通だからです。AIが商品を推薦する際に参照するのは、構造化された商品データ(価格・在庫・仕様・配送条件)と、第三者の評価やレビュー、そして商品ページの明快な記述です。この整備は国内のAI検索経由流入にもそのまま効きます。
商材別の相性も整理しておきます。相性がよいのは、指名検索が発生しにくいが相談は発生する商材です。具体的には、こだわり食品(「贈答用で日持ちする和菓子」)、機能性雑貨(「在宅勤務の腰痛対策になる椅子で5万円以内」)、趣味性の高い道具(「初心者向けの燻製器」)などが典型です。逆に、型番指名で買われる家電消耗品や、ブランド指名の強い化粧品は、AI相談を経由せず指名検索で完結するため、この経路の恩恵は相対的に小さくなります。自社の主力商材が「相談されて選ばれる」型か「指名されて買われる」型かを見極めることが、投資配分の最初の判断です。
Perplexity自体の業務利用も接点になります。当媒体のPerplexityのメモリとモデル切り替えを扱った記事で解説した通り、Perplexityは市場調査・競合調査の道具としてEC事業者の利用が広がっています。自社が調査に使う道具の中に購買経路が組み込まれた、と捉えると、この変化の距離感がつかみやすいはずです。まず使い手として体験し、次に売り手として登録する。この順序が理解の近道です。
実装手順とプロンプト3本|露出調査から商品データ整備まで
実務の手順は3段階です。第1段階はMerchant Programへの申請で、Perplexityのマーチャント向けページからストア情報を登録します(無料・5分程度)。Shopifyストアの場合は連携設定を確認するだけで商品データの共有が始まります。第2段階は自社商品の露出状況の調査、第3段階は商品データの改善です。第2・第3段階で使えるプロンプトを3本掲載します。ChatGPT・Claude・Geminiでも動く汎用の書き方です。
1本目は、AI検索で自社カテゴリがどう推薦されているかの定点観測です。Perplexity本体に投げて使います。
プロンプト1:AI検索露出の定点観測(Perplexityに直接入力)
{自社商品カテゴリ}を探しています。予算は{価格帯}で、用途は{用途}です。
おすすめを5つ、それぞれ推薦理由と価格つきで比較してください。
購入できるストアも教えてください。
このプロンプトを月1回、主要カテゴリ×3〜5パターンの質問で実行し、自社と競合のどちらが・どんな理由で推薦されるかを記録します。推薦理由の記録が重要で、AIが「軽さ」を根拠にするカテゴリなら商品ページで重量を目立たせる、という改善の根拠になります。
2本目は、商品データの構造化チェックです。手元のAIに自社の商品ページを評価させます。
プロンプト2:AI推薦視点の商品ページ診断
あなたはAI検索経由のEC最適化の専門家です。
以下の商品ページ情報を読み、AIショッピングアシスタントが推薦候補として
扱いやすいかを診断してください。
1. 価格・在庫・配送条件・返品条件が明記されているかの判定
2. 商品仕様(サイズ・素材・重量・対応環境)の記載漏れ一覧
3. 「どんな人の・どんな質問への答えになる商品か」が読み取れるかの評価
4. 改善優先度トップ5と修正文案
商品ページ情報:
{商品ページの本文を貼り付け}
3本目は、相談型質問への適合度を高めるコンテンツ設計です。
プロンプト3:相談型質問への回答コンテンツ設計
あなたはECのコンテンツ設計者です。
{商品名}について、購入者がAI検索に投げそうな相談型の質問を20個作り、
それぞれに対して、商品ページ・FAQ・ブログのどこで答えるべきかを設計してください。
条件:
1. 質問は「用途相談」「比較」「不安・懸念」「ギフト」の4分類で作る
2. 各質問への回答の要点を1〜2文で添える
3. 回答に必要な情報が現状の商品ページに無い場合は「情報収集が必要」と明記
商品情報:
- ジャンル:{ジャンル}
- 価格帯:{価格帯}
- 主要訴求:{訴求}
プロンプト2の診断で頻出する指摘パターンにも触れておきます。編集部で実際に運用しているプロンプトでは、日本のEC事業者の商品ページに共通して「配送・返品条件が商品ページから読み取れない」「仕様が画像内にしか書かれていない」という2つの指摘が繰り返し出ます。前者はモール共通ページに書いてあるからと省略されがちですが、AIは商品単位で情報を評価するため、商品ページ内への明記が必要です。後者は深刻で、画像に焼き込まれた仕様表はAIのテキスト解析で拾われにくく、せっかくの情報が推薦の根拠として機能しません。仕様は必ずテキストでも記載する。これはAI検索時代の商品ページの新しい基本です。
3本の出力はスプレッドシートに集約し、露出調査(プロンプト1)で見つけた負けパターンを、診断(プロンプト2)と設計(プロンプト3)で潰す循環にすると、月2〜3時間の運用で回ります。
失敗例と回避策
現場で繰り返し見るのは、AI経由の新チャネルを「登録すれば売れる場所」と誤解するパターンです。Merchant Programの登録は土俵に上がる手続きにすぎず、推薦されるかどうかは商品データの質と第三者評価で決まります。登録して数週間売上ゼロでも異常ではありません。定点観測で推薦理由を集め、負けている根拠を1つずつ潰す運用まで含めて1つの施策です。
もう1つのNGは、無料配送の設計を確認せずに損益計算を誤ることです。Buy Nowの無料配送はPerplexity側が負担する設計と説明されていますが、条件や対象は変更され得ます(要確認)。越境販売では関税・返品送料の扱いも絡むため、AI経由の注文の実際の粗利を初月に必ず実測してください。チャネル別の損益を見ずに広告的な期待だけで在庫を積むのは、新チャネルあるあるの典型的な失敗です。
レビュー・第三者評価の軽視も落とし穴です。AIの推薦は自社ページの記述だけでなく、レビューサイト・比較記事・SNSでの言及を根拠に組み立てられます。自社ページをどれだけ磨いても、第三者の評価がウェブ上に存在しない商品は「推薦の根拠が足りない」状態になります。米国向けなら現地レビューメディアやコミュニティでの露出、国内ならレビュー資産の蓄積と比較記事への掲載が、遠回りに見えて推薦確率を上げる本筋です。
3つ目は、日本語の商品データのまま米国向け露出を期待することです。AIの推薦は商品データの言語品質に依存します。機械翻訳のままの英語ページは、仕様の単位(インチ・ポンド・華氏)や表現の不自然さで推薦の根拠として弱くなります。米国向けに本気で乗るなら、主力商品だけでも英語ネイティブ品質の商品データを用意する投資が前提です。
KPI設計と費用・工数目安
費用面のハードルは低く設定されています。Merchant Program自体は無料、販売手数料もゼロで、必要なのは既存のShopify契約(ベーシックプランで月25米ドル〜、2026年7月時点の米国価格・要確認)と運用工数だけです。定点観測と商品データ改善の運用は月2〜3時間、英語商品データの整備を外注する場合は1商品数千円〜が相場の目安です。
越境対応を本格化する場合の追加費用も見積もっておきます。英語商品データの整備が1商品数千円〜、米国向け配送体制(越境配送代行の利用)で1注文あたり配送実費+手数料、決済まわりはShopify PaymentsやPayPalの通常手数料です。初期に主力10商品で試す場合、整備費用は数万円のオーダーで収まり、モールへの新規出店(初期費用+月額固定費)と比べて試行のコストは低い部類に入ります。撤退コストもほぼゼロのため、越境の入り口としての試しやすさはこの経路の隠れた利点です。
KPIは3層で置きます。第1層は整備の進捗で、Merchant Program登録の完了と、主力商品の構造化データ完備率。第2層は露出で、月次の定点観測での自社商品の推薦回数と推薦理由の変化。第3層が成果で、Merchant Programのダッシュボードで確認できるAI経由の表示・購入と、Shopify側の参照元別売上です。AI経由チャネルはまだ絶対額が小さいため、初年度は売上目標より「推薦される状態を作れたか」を目標に置くほうが、施策の継続判断を誤りません。業界の目安として、AI経由流入は検索・広告と比べて購入意図が固まった状態で届く分CVRが高い傾向が各所で報告されており、流入数ではなく転換率と客単価で評価する視点が適切です。
今後の展望と独自考察
Buy Nowが示した設計思想で最も重要なのは、「手数料ゼロ・送料はプラットフォーム負担・売主の立場は販売者に残す」という、モールと真逆の条件で販売者を集めに来た点です。PerplexityはEC の出店料で稼ぐのではなく、購買データと利用者の滞在価値で稼ぐ構造を選びました。ChatGPTの決済連携、AmazonのAlexa for Shopping、GoogleのAIモードと、AI各社の商取引参入が出揃いつつある中で、販売者側の条件はしばらく「取り合い」により良化する局面が続くと見ています。条件が良いうちに複数のAI経路へ商品データを通し、どこが自社商材と相性がよいかを実測しておくのが、この局面の合理的な立ち回りです。
日本市場への波及シナリオも描いておきます。Perplexityは日本でもソフトバンクとの提携で利用者を伸ばしており、UI の日本語化は既に進んでいます。購買機能の日本展開に必要なのは、決済(日本で使われる決済手段との接続)と商品データ(日本のストアからのフィード)の2つで、Shopifyが日本でも広く使われていることを踏まえると、技術的な障壁は高くありません。展開時期は未発表ですが(要確認)、米国で起きた「DTC・独立系ストアの相対的浮上」が日本で再現された場合、楽天・Amazon中心のチャネル構成に自社ECを加える動きが加速する可能性があります。自社EC強化の投資判断に、AI経由流入という新しい変数を織り込む時期に来ています。
中期的には、AI経路の推薦ロジックがブラックボックスであることが最大の論点になります。モールの検索アルゴリズムには長年の運用知見が蓄積されていますが、AI推薦は根拠の説明が生成のたびに揺れ、再現性の検証が困難です。だからこそ、本記事のプロンプト1のような定点観測を自社データとして蓄積している事業者と、していない事業者の間に、説明できる知見の差が開いていきます。プラットフォームの発表を待つのではなく、自店の商材での実測を資産化する。5,000社支援の経験から言えるのは、新チャネルの初期にこの習慣を持った店舗が、チャネルが本格化したときの先行者になるということです。
よくある質問
Perplexity Merchant Programは日本の事業者でも登録できますか
申請自体は可能ですが、Shopify連携による商品データの自動共有は米国ストアが対象です(2026年7月時点・要確認)。日本国内向け販売への直接効果は限定的なため、米国向け販売の有無で優先度を判断してください。
登録に費用や手数料はかかりますか
いいえ、かかりません。Merchant Programは無料で、Buy Now経由の販売にもPerplexityへの手数料はありません。決済はPayPal・Venmoが処理し、販売者はマーチャント・オブ・レコードを維持します。決済事業者側の手数料は通常通り発生します。
Buy Nowの無料配送は誰が負担しますか
Perplexityが負担すると説明されています。販売者の送料負担で成立している施策ではありませんが、条件は変更され得るため、参加時点の規約確認と注文単位の損益実測をおすすめします。
月200万人という規模は大きいのですか
いいえ、楽天市場やAmazonと比べればまだ小さい規模です。重要なのは絶対数ではなく、購入意図の固まった相談型の流入である点と、手数料ゼロなど販売者条件の良さです。成長率を見ながら小さく実測する段階と捉えてください。
国内ECしかやっていなくても準備する意味はありますか
はい、あります。商品データの構造化・仕様の明記・相談型質問への回答整備は、GoogleのAI OverviewやChatGPT経由の国内流入対策と共通です。Perplexity固有の作業はMerchant Program登録だけで、残りは汎用のAI検索対策です。
最初の一歩は何ですか
Perplexityに本記事のプロンプト1を入力し、自社カテゴリで何が推薦されるかを見ることです。10分で現在地が分かります。米国向け販売があるならMerchant Program申請(5分程度)まで済ませてください。
参考文献
- Perplexity公式ブログ: Shop like a Pro
- Shopify: Perplexity Shopping: How to Optimize Your Store for AI (2026)
- WebFX: Meet the Perplexity Merchant Program
- Novadata: Perplexity Buy Now agent hits 2M monthly shoppers, $2B GMV
著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。