このスキルを使うと、売上・粗利・在庫・顧客の13指標を1本の月次経営レポートにまとめられます。
毎月の経営会議の前夜、楽天とAmazonと自社ECの管理画面を行き来し、売上をコピーし、手数料を差し引き、在庫表と突き合わせて数字を並べる。この作業に半日を溶かしている店長は少なくありません。EC月次経営レポート作成スキルは、この一連の集計と要因分析、次月施策の整理までを生成AIに任せるためのものです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援を2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、ALSEL Agent Skillsで配布するこのスキルの使い方を解説します。
このスキルでできること
このスキルは、EC事業の月次業績を経営者・責任者向けにまとめる作業を一気通貫で処理します。単なる売上集計ではなく、粗利率、平均注文単価(AOV)、転換率(CVR)、広告費対売上(ROAS)、顧客獲得単価(CPA)、在庫回転率、90日以上の滞留率、そして顧客生涯価値と獲得コストの比率(LTV/CAC比)まで、経営判断に直結する13前後の指標を一枚に統合します。
最大の特徴は、モール手数料を差し引いた「実質粗利率」を、表面粗利率と分けて提示する点です。楽天市場のシステム利用料やポイント原資、AmazonのFBA手数料、Yahoo!ショッピングのアフィリエイト費用、自社ECの決済手数料はチャネルごとに構造が違います。売上構成比だけを見て「楽天が一番売れているから楽天に投資」と判断すると、手数料控除後の手取りではYahoo!のほうが厚い、という逆転を見落とします。このスキルは各チャネルの実質手取りまで分解するため、リソース配分の判断がぶれにくくなります。
在庫の見方も組み込まれています。在庫金額が前月比で20%以上増えていれば異常値として検出し、「売上は伸びたのに手元現金が減った」状態の原因を在庫増として切り分けます。在庫1,000万円の増加は現金1,000万円の減少と同義、という視点を毎月のレポートに織り込めるのは、経営者にとって大きな安心材料になります。
実際の使い方
使い方はシンプルです。Claude Codeなどの実行環境で「先月のEC月次レポートを作って」と指示し、各チャネルの売上・注文件数・広告費・在庫金額といった数字を渡すだけです。売上の計上基準(注文確定か、出荷か、決済か)やキャンセル・返品の扱いを最初に確定させる設計になっているため、毎月同じルールで集計され、前月比・前年比が正しく並びます。
入力できるデータが一部しかなくても、スキルは「仮定」と「追加確認したいこと」を冒頭で分けて明示し、仮定ベースの初稿を返します。完璧なデータがそろうのを待たずに、たたき台から始められるわけです。出力は経営サマリー、主要KPI、チャネル別実績、要因分析、在庫KPI、顧客KPI、そして次月施策の7ブロックで構成され、施策は「あれもこれも」で10個並べるのではなく、期待効果と予算を添えて3〜5個に絞られます。
計算式は内部で検算されます。AOVは売上を注文件数で割った値、ROASは売上を広告費で割った値、といった基本指標がずれていないかを確認したうえで数字が並ぶため、会議の場で「この数字おかしくない?」と指摘されるリスクを下げられます。過去にうるチカラで解説したEC経営のKPIと判断軸の考え方を、毎月の実務に落とし込む道具だと考えると分かりやすいはずです。
導入による業務インパクト
従来、3チャネルを回す店舗が月次レポートを手作業でまとめると、集計と資料化だけで4〜6時間かかるケースを現場でよく見ます。このスキルを使うと、数字を渡してから初稿が返るまでの実作業を大きく圧縮でき、空いた時間を要因分析と施策検討という「人がやるべき仕事」に振り向けられます。
注意点も正直に書いておきます。モール手数料率やFBA料金、ポイント原資率は変動するため、最新値は各サービスのヘルプで確認する前提です。また、LTVは過去に初購入した顧客グループの実績と将来予測を混同しないこと、観測期間の足りない新しいコホートはまだ確定値ではないことを、スキルも注意喚起します。数字を出すこと自体より、その数字から次の一手を決めることが目的だという設計思想が一貫しています。在庫の滞留や欠品損失まで見たい場合は、Amazonの在庫管理をAIで最適化する方法と併せて使うと、レポートと打ち手がつながります。
まとめ
EC月次経営レポート作成スキルは、売上だけで一喜一憂せず、粗利・在庫・顧客価値をセットで見たい成長期のEC事業者に向いています。まずは先月分の数字を手元に集め、「仮定でいいので初稿を作って」と投げてみるのが最初の一歩です。手作業の集計から解放され、経営者が判断に集中できる状態を、月末のたびに再現できるようになります。
参考文献
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。