ChatGPTのdotsとは、裏で動き続けるAIアシスタントのことです。
dotsに任せる業務を決める前に、まず「どこまで勝手に動いてよいか」を紙に書き出してください。dotsは、頼まれるのを待たずに予定やメールを見て、手伝えることを自分から提案するAIアシスタントです。便利さの裏返しとして、承認のルールを決めないまま接続すると、確認依頼が多すぎて使われなくなるか、逆に任せすぎて取り消しにくい操作が起きるかの、どちらかに振れがちです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)の現場知見にもとづき、dotsの仕組みを報道で確認できる範囲で整理したうえで、EC業務を任せる前に決めておくべき承認ルールを3段階で設計します。dotsに最初に渡す業務ルールの文面も5本収録しました。
dotsはこれまでのChatGPTと何が違うのか
最大の違いは、こちらが話しかけなくても動く点です。TechCrunchの報道によると、dotsは2026年9月下旬のOpenAIの開発者向けイベントで発表され、ChatGPTのProプラン以上(月額100ドルから)の利用者が、デスクトップアプリとモバイルアプリで使えます。
仕組みの中心は「先回りのリサーチ」です。dotsは定期的に、利用者について知っていること、過去の会話、接続を許可されたカレンダーやメール、パソコン上の資源を見直し、手伝えそうなことを探して提案します。報道では、予定の重複や近づく締め切りを知らせる例が紹介されています。会話も1つの継続したやりとりとして扱われ、チャットを毎回立ち上げ直す従来のChatGPTとは使い心地が大きく異なります。
もう1つの特徴は、OpenAIのコーディングツールの技術を一般向けに作り直した製品だという点です。同社のCodexでもdotsに近いことはできますが、設定や細かな指示に手間がかかりました。dotsは、業務用エージェントのChatGPT Workと同じ流れで、その仕組みを誰でも使える形に包み直したものと説明されています。
現時点の制約も報じられています。dotsはまだお金を使う操作ができず、OpenAIは決済事業者と協議中とされています。また、権限の設定はまだ細かく分かれておらず、提供開始時の初期設定が慎重すぎて確認依頼が多いという利用者の不満が出ており、OpenAIは調整を進める方針です。クラウドドライブを読み取り専用で接続する設定には対応していないとも報じられています。プライバシーの設定はChatGPTと同じで、学習への利用を止めたり、パソコン上のどの資源に触れてよいかを選んだりできます。
先回りで動くぶん、トークン(AIが処理する文字の単位)の消費が増える点も報道で指摘されています。予定の衝突を3分前に知らせてきた例も紹介されており、提案のタイミングはまだ完璧ではありません。発表時の論点はOpenAIがdots提供、月額100ドル〜の常時稼働AI秘書の3論点にまとめています。
日本のEC現場に当てはめると、dotsが効きそうなのは、締め切りと連絡が細かく入り組んだ業務です。楽天市場のスーパーSALEのエントリー期限、Amazonのセールイベントの申請締め切り、仕入れ先への発注期限、広告予算の切り替え日など、店長の頭の中にしかないスケジュールが多い店舗ほど、先回りの通知の価値は大きくなります。
EC業務をdotsに任せる前に決める承認ルールの3段階
結論として、承認ルールは「自動でやってよいこと」「承認を取ってからやること」「やらせないこと」の3段階に分けて決めるのが基本です。権限の設定が細かく分かれていない現状では、設定画面だけで線を引けないため、ルールを文章で決めてdotsに伝え、守られているかを人が確認する運用が欠かせません。
第1段階の「自動でやってよいこと」は、情報を読む、まとめる、下書きを作る、の3種類に限ります。たとえば、受信メールから注文トラブルに関するものを抜き出して要約する、カレンダーから今週の締め切りを一覧にする、問い合わせへの返信の下書きを作る、といった作業です。どれも、結果が間違っていても実害が出る前に人が気づける作業という共通点があります。
第2段階の「承認を取ってからやること」は、外部に何かが届く操作と、元に戻しにくい変更です。メールの送信、取引先を含む予定の変更、共有フォルダ内のファイルの上書き、スタッフへのチャット投稿などが当てはまります。ここで大事なのは、承認依頼の形式を決めておくことです。「何を」「誰に」「なぜ」「取り消せるか」の4点がそろった依頼だけを受け付けるようにすると、確認に迷う時間が減ります。
第3段階の「やらせないこと」は、お金と顧客データとモールの設定です。価格の変更、クーポンの発行、広告予算の変更、顧客リストの書き出し、楽天RMSやSeller Centralの設定変更は、AIの判断に任せない領域として明示します。dotsは現時点で支払いができませんが、将来できるようになったときに慌てないよう、最初から禁止事項として書いておくのが定石です。
3段階を決めるときの判断基準は、「間違えたときに、誰が、いつ気づけるか」です。人が数分以内に気づいて直せる作業は第1段階、気づくまでに外部へ影響が出る作業は第2段階、気づいたときには損失が確定している作業は第3段階に置きます。直近の支援案件で観測したのは、この基準を決めずに導入した店舗ほど、最初の1週間で確認依頼の多さに疲れて使うのをやめてしまうという傾向でした。
年末商戦期の食品ギフト店舗を例に、3段階を1日の流れに当てはめてみます。朝はdotsが夜間に届いたメールから配送遅延の問い合わせを抜き出し、要約と返信の下書きを用意します(第1段階)。昼前に、のし対応の可否を尋ねる取引先へ返信する場面では、dotsが下書きを示して承認を求め、店長が画面で確認して送ります(第2段階)。夕方、在庫が減った商品の価格を上げるべきか迷ったときも、dotsには判断材料の整理だけを頼み、価格の変更そのものは店長が楽天RMSで行います(第3段階)。このように、同じ1日の中でも作業ごとに段階を切り替えることで、任せる範囲と人の判断が混ざらずに済みます。
クラウドドライブを読み取り専用で接続できない点にも注意が必要です。商品マスタや売上データを置いた共有ドライブをそのまま接続すると、書き換えができる状態でdotsに渡すことになります。回避策は、dotsに見せる専用のフォルダを作り、必要なファイルの写しだけを置くことです。元データの置き場所とAIが触れる場所を分けておけば、万一の上書きでも被害を写しの範囲にとどめられます。
dotsに最初に渡す業務ルールの文面5本
ここからは、dotsとの最初の会話で伝えておく業務ルールの文面を5本収録します。dotsは1つの継続した会話で動くため、最初に伝えたルールがその後の振る舞いの土台になります。中括弧の部分は自店の状況に置き換えてください。同じ文面は、ChatGPTの通常のチャットやClaude、Geminiのエージェント機能にも応用できます。
1本目は、3段階の承認ルールそのものを伝える文面です。
プロンプト1:承認ルールの宣言
これから私の業務を手伝ってもらうにあたり、次のルールを守ってください。
自動でやってよいこと:メールとカレンダーを読むこと、要約すること、下書きを作ること。
承認が必要なこと:メールの送信、取引先を含む予定の変更、共有ファイルの上書き、チャットへの投稿。
やらないこと:価格・クーポン・広告予算の変更、顧客リストの書き出し、{モール名}の管理画面の設定変更。
判断に迷うときは、やらずに私に質問してください。
このルールを要約して、理解した内容を返してください。
2本目は、承認依頼の形式を決める文面です。依頼の形がそろうと、確認にかかる時間が短くなります。
プロンプト2:承認依頼の形式
承認が必要な操作をするときは、必ず次の形式で依頼してください。
1. 何をするか(1文)
2. 誰に影響するか(社内・取引先・お客様のどれか)
3. なぜ必要か(1文)
4. 実行後に取り消せるか(取り消せる・取り消せないのどちらか)
取り消せない操作は、依頼の先頭に【取り消し不可】と書いてください。
1回の依頼には1つの操作だけを含めてください。
3本目は、先回りの提案の対象を絞る文面です。何でも提案させると通知が増えすぎるため、対象を限定します。
プロンプト3:先回り提案の対象範囲
先回りで提案してよいのは、次の3種類だけにしてください。
1. 締め切りまで3日以内の作業(セールのエントリー、発注、申請など)
2. 返信期限が近い取引先やお客様からの連絡
3. 予定の重複や、移動時間が足りない予定
それ以外の気づきは、毎日{時刻}にまとめて1回だけ報告してください。
提案は最大でも1日5件までにしてください。
4本目は、毎朝のブリーフィングの形を決める文面です。
プロンプト4:朝のブリーフィング
毎朝{時刻}に、次の形式で今日の状況をまとめてください。
1. 今日が締め切りの作業
2. 返信が必要な連絡(件数と、急ぎの上位3件の件名)
3. 今日の予定と、準備が必要なもの
4. 承認待ちになっている操作の一覧
お客様の氏名・住所・電話番号は書かないでください。
全体で400文字以内に収めてください。
5本目は、週に1回ルールを見直すための振り返りの文面です。
プロンプト5:週次の振り返り
今週あなたが行ったことを、次の3つに分けて一覧にしてください。
1. 自動でやったこと(件数と主な内容)
2. 承認を求めたこと(承認された件数・却下された件数)
3. やらずに質問したこと
却下が多かった種類の依頼について、ルールをどう変えればよいか提案してください。
私が決めたルールに反した可能性のある行動があれば、正直に書いてください。
5本の文面に共通するのは、件数や時刻、文字数で範囲をはっきり区切っている点です。「必要に応じて」「適宜」といった曖昧な言い方を避けると、AIの振る舞いが安定します。編集部で実際に運用しているエージェント向けのルールでも、数字で区切った指示ほど守られやすい傾向が見られました。
dots導入でよくある失敗例と回避策
失敗の多くは、任せすぎか、確認しすぎかのどちらかです。代表的な3つを挙げます。
1つ目は、確認依頼の多さに疲れて使わなくなるケースです。報道でも、初期設定では確認依頼が多いことに利用者の不満が出ていると伝えられています。回避策は、プロンプト3のように先回りの対象を絞り、まとめて報告させる時間帯を決めることです。通知の数を1日5件程度に抑えると、確認が習慣として回りやすくなります。
2つ目は、共有ドライブをそのまま接続して、元データが書き換わるケースです。読み取り専用での接続に対応していないため、商品マスタの元ファイルをAIが直接触れる状態になります。アパレル系の単一店舗で試したケースでは、専用フォルダに写しだけを置く運用に変えたことで、データ管理担当の不安が解消し、導入に前向きになりました。
3つ目は、スタッフ全員の予定やメールを1人のdotsに集めてしまうケースです。dotsは個人のアシスタントとして設計されており、利用者について知っていることをもとに提案します。複数人の情報を1つのアカウントに集めると、誰の予定や連絡かの区別があいまいになり、提案の精度も落ちます。チームで使う場合は、業務用のChatGPT Workと役割を分けて検討してください。ChatGPT Workの任せ方はChatGPT WorkでEC業務を自動化する完全ガイドで解説しています。
KPI設計と費用・工数の目安
KPIは、「承認依頼の承認率」「先回り提案の採用率」「ルール違反の件数」の3つで置くのが実務的です。承認率が9割を超えるなら、その種類の操作は第1段階に下ろしてよい候補です。逆に5割を下回るなら、依頼の質に問題があるため、ルールの文面を見直します。ルール違反の件数は0件が前提で、1件でも出たら原因を確認するまで任せる範囲を広げません。
費用は、dotsを使うためのProプラン(月額100ドルから)が基本です。1ドル150円で換算すると月1万5,000円からで、先回りの動作でトークンの消費が増える点は報道でも指摘されています。プランの利用上限や料金は改定が続いているため、契約前に公式情報で確認してください。
工数の目安として、店長が締め切りの管理と連絡の確認に1日30分使っているとすると、その半分をdotsの朝のブリーフィングと先回りの通知に置き換えられれば、月20営業日で約5時間の削減になります。これは仮定に基づく試算で、実際の効果は接続するアプリの数と業務の複雑さで変わります。最初の2週間は、dotsの提案で助かった件数と、確認に使った時間の両方を記録してください。
記録には、日付、依頼の種類、承認・却下・保留の別、確認にかかった時間(分)、却下した理由の5列を用意したスプレッドシートで十分です。プロンプト5の週次の振り返りとこの記録を突き合わせると、dotsの自己申告と実際の承認状況にずれがないかも確かめられます。ずれが見つかった場合は、その種類の操作を1段階上の扱いに戻し、ルールの文面を書き直してから再開します。
5,000社支援の中で何度も再現したパターンとして、AIエージェントの導入は、費用より「確認にかかる人の時間」で失敗します。承認1件あたりの確認時間を1分以内に収められる依頼の形式を作れるかどうかが、元が取れるかの分かれ目です。
dotsが示す今後の展望と独自考察
dotsの登場は、AIが「聞かれたら答える道具」から「自分から動く同僚」に変わり始めたことを示しています。音声で業務を頼めるChatGPT Voiceのプラグイン対応とVoice in Workと組み合わせれば、店長が話しかけた内容をdotsが裏で処理し続ける運用も視野に入ります。なおVoiceでも、承認が必要な操作は画面上でしか承認できない仕様だとUnite.AIが報じています。声で頼み、画面で承認するという分担は、dotsの承認ルールとも相性のよい設計です。
ただし、OpenAI自身が権限の設定を今後もっと細かくすると説明しているとおり、現時点では仕組みが固まりきっていません。EC事業者にとって大切なのは、仕様が変わっても使い回せる承認ルールを、文章として社内に持っておくことです。3段階の線引きと承認依頼の形式は、dotsに限らず、ClaudeやGeminiのエージェント機能に乗り換えるときにもそのまま使えます。
将来dotsが支払いをできるようになると、仕入れの発注や広告費の支払いをAIに任せる議論が始まります。そのときに備えて、金額の上限、支払先の限定、承認者の指定を今のうちに決めておくと、機能の追加に振り回されずに済みます。AIエージェントの予算管理の考え方はClaude Managed Agentsのセッション予算でAI暴走コストを止める5手順も参考になります。
もう1つの論点は、取引先やお客様が「相手のAI」とやりとりすることへの抵抗感です。OpenAIの担当者自身が、他人のエージェントと会議をするつもりはないという趣旨の発言をしており、AIが前面に出るやりとりには慎重さが求められます。dotsが作った連絡は、人が確認して自分の名前で送る運用を基本にしておくのが無難です。
よくある質問
dotsとは何ですか
dotsとは、OpenAIが2026年9月下旬に発表した、頼まれなくても動く常時稼働型のAIアシスタントのことです。接続したカレンダーやメール、パソコン上の資源を定期的に見直し、手伝えることを自分から提案します。ChatGPTのProプラン以上で、デスクトップとモバイルのアプリから使えます。
dotsは無料で使えますか
いいえ、無料では使えません。報道によると、dotsはChatGPTのProプラン以上(月額100ドルから)の利用者が対象です。料金やプランの条件は改定される可能性があるため、契約前に公式情報で確認してください。
dotsに支払いや発注を任せられますか
いいえ、現時点では任せられません。dotsはまだお金を使う操作ができず、OpenAIは決済事業者と協議中と報じられています。将来対応したときに備え、金額の上限や承認者などのルールを今のうちに決めておくことをおすすめします。
楽天RMSやSeller Centralの操作を任せてもよいですか
設定の変更は任せないのが基本です。モールの管理画面の設定変更は、間違えたときの影響が大きく、各モールの規約やアカウント権限の確認も必要になるためです。dotsには、締め切りの通知や連絡の要約など、情報を整理する役割から任せてください。
確認依頼が多すぎて使いにくいときはどうすればよいですか
先回りの提案の対象を絞り、まとめて報告させる時間帯を決めると改善します。報道でも、初期設定では確認依頼が多いことに不満が出ており、OpenAIは調整を進める方針です。本記事のプロンプト3のように、1日の提案数に上限を設けるのも効果的です。
個人情報の扱いは大丈夫ですか
学習への利用を止めたり、触れてよい資源を選んだりする設定は、ChatGPTと同じものが使えます。ただし、要約や報告にお客様の個人情報を含めないよう、ルールの文面で明示しておくことが大切です。社内の個人情報の取り扱いルールとも照らし合わせてから接続してください。
ChatGPT Workとdotsはどう使い分ければよいですか
dotsは個人の予定や連絡を先回りで支えるアシスタント、ChatGPT Workは資料作成やデータ処理などの業務を任せるエージェントという分担が目安です。どちらもOpenAIのエージェント技術をもとにしていますが、dotsは1人の利用者に寄り添う設計です。チームの業務はWork、店長個人の段取りはdotsと分けると混乱しにくくなります。
まとめ
ChatGPTのdotsは、頼まれなくても予定やメールを見て動く、常時稼働型のAIアシスタントです。便利さの一方で、権限の設定はまだ細かく分かれておらず、読み取り専用での接続にも対応していないため、EC業務を任せる前に承認ルールを文章で決めておくことが欠かせません。
最初の一歩は、「自動でやってよいこと」「承認を取ってからやること」「やらせないこと」の3段階を紙に書き出し、本記事のプロンプト1でdotsに伝えることです。承認率と提案の採用率を2週間記録し、数字を見ながら任せる範囲を少しずつ広げてください。
参考文献
- TechCrunch:OpenAIがコーディングツールを常時稼働のアシスタントdotsに作り替えた経緯に関する記事
- Unite.AI:ChatGPTのVoiceのプラグイン対応とVoice in Workに関する報道
著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。