「AIがプログラムを書いてくれる」。この言葉が現実になった2026年、EC事業者にとって気になるのは「じゃあどのツールを使えばいいのか」ということでしょう。Google、OpenAI、Anthropic、そしてAnysphereの4社がそれぞれ異なるアプローチでAI開発ツールを展開しています。
本記事では、Antigravity(Google)、Cursor(Anysphere)、Claude Code(Anthropic)、Codex(OpenAI)の4つを、EC事業者の視点で比較します。結論から言うと、この4つは急速にお互いの強みを取り込み合っており、「これが一番」と断言できる状況ではありません。だからこそ、それぞれの特徴を正しく理解することが重要です。
そもそもこの4つは何をするもの?
4つとも「AIに、プログラム(コンピューターへの命令文)を書いてもらうための道具」です。今まではエンジニアが手作業で書いていたプログラムを、日本語で「こういうものを作って」と伝えるだけでAIが自動生成してくれます。EC事業者にとっては、「エンジニアを雇わなくても業務効率化ツールが作れるかもしれない」という可能性を開くものです。
4つの基本的な違い
まず理解すべきは、操作方法と作業場所の違いです。
Antigravity(Google) は、パソコンにインストールする専用ソフト(IDE)で動きます。画面を見ながらマウスで操作でき、AIに指示を出すチャット画面、プログラムを書く画面、ブラウザでの動作確認画面が1つにまとまっています。2025年11月にGemini 3と同時発表され、Googleが約3,600億円で買収したWindsurf社のチームが開発に関わっています。2026年3月時点ではテスト公開中のため無料で利用可能です。
Cursor(Anysphere) も、パソコンにインストールする専用ソフト(IDE)です。世界中のエンジニアに使われているVS Codeをベースにしており、見た目も操作感もVS Codeとほぼ同じです。2026年2月にはCloud Agentがリリースされ、クラウド上の仮想マシンでAIが自律的にプログラムを作成・テスト・ビデオ録画までこなすようになりました。Fortune 500企業の50%以上が導入しており、評価額は約4.4兆円に達しています。
Claude Code(Anthropic) は、「ターミナル」と呼ばれる文字だけの操作画面で動きます。マウスは使えず、キーボードで文字を打って操作します。最大の強みは、既存のプログラムを丸ごと読み込んで全体の仕組みを理解する能力の高さです。100万トークン(日本語で約50万文字相当)という巨大なコンテキストウィンドウを持ち、大規模なコードベースの改修に力を発揮します。2026年2月にはWeb版とRemote Control機能がリリースされ、クラウド実行やスマホからの操作も可能になりました。
Codex(OpenAI) は、ChatGPTを作ったOpenAIのツールで、インターネット上のOpenAIのコンピューターでAIが作業します。自分のパソコンからは指示を送るだけで、完成品が返ってくる仕組みです。ChatGPTの有料会員ならすぐに使い始められ、月額約1,200円からという手軽な価格設定も特徴です。ビジネスチャットツールSlackとの連携も正式対応しています。
4ツール比較表
以下が、2026年3月時点での比較です。
| Antigravity | Cursor | Claude Code | Codex | |
|---|---|---|---|---|
| 作業目的 | ||||
| 新しく作る | ◎ 全自動で最速 | ○ Cloud Agentで対応 | ○ できる | ○ できる |
| 既存を直す | △ 暴走リスクあり | ○ 確認しながら安全 | ◎ コード理解力が最高 | △ 途中修正しにくい |
| 見た目を作る | ◎ ブラウザ確認まで自動 | ◎ Cloud Agentで対応 | △ ブラウザ確認なし | △ 完成まで見えない |
| 計算・分析 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 定型作業の自動化 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 運用面 | ||||
| パソコン負荷 | 重い | やや重い / Cloud時なし | 軽め / Web版時なし | なし |
| パソコン閉じても | △ 基本止まる | ◎ Cloud Agentで継続 | ○ Web版で継続 | ◎ 全部クラウド |
| ブラウザ自動確認 | ◎ 内蔵 | ◎ Cloud Agentで対応 | × なし | × なし |
| AIモデルの選択肢 | 3種類 | 多数(最多) | Anthropic専用 | OpenAI専用 |
| Slack連携 | × | ◎ | × | ◎ |
| スマホから操作 | × | ◎ モバイルアプリ | ○ Remote Control | ○ |
| 安定性 | テスト版 | 正式版 | 正式版 | 正式版 |
| 料金 | 無料(今だけ) | 月$20〜 | 月$20〜 | 月$8〜 |
【作業目的別の評価】
「ゼロからアプリやシステムを新しく作る」場合、Antigravityが最も得意です。AIが計画立案からコーディング、ブラウザでの動作確認まで全自動で行うため、形になるスピードが最速です。Cursorも同等の機能をCloud Agentで実現していますが、セットアップの手間がやや多くなります。Claude CodeとCodexでも可能ですが、ブラウザでの自動確認機能がないため、確認作業は人間が行う必要があります。
「既存のシステムを修正・改善する」場合、Claude Codeが最も頼りになります。100万トークンのコンテキストウィンドウで数千行のコードを一度に読み込み、「ここを変えるとこっちにも影響が出る」と判断できる理解力は4つの中で突出しています。Cursorも確認しながら安全に進められますが、Antigravityは意図しない箇所まで変更してしまうリスクが報告されています。Codexは途中での方向修正がしにくい点がネックです。
「ウェブページやダッシュボードなど見た目を作る」場合、AntigravityとCursorが強いです。どちらもAIがブラウザを自動で操作して表示結果を確認し、レイアウトのずれや色の問題を自分で見つけて修正します。Claude CodeとCodexにはこの機能がなく、見た目の確認は人間が別途行う必要があります。
「データの集計や計算」「定型作業の自動化」については、4つとも同程度にこなせます。大きな差はありません。
【運用面の比較】
パソコンへの負荷は、Antigravityが最も重く、メモリ16GB以上が推奨されています。Cursorもローカル実行時はやや重いですが、Cloud Agent利用時は自分のパソコンに負荷がかかりません。Claude Codeはターミナルベースなので比較的軽めです。Codexは全てクラウドで処理されるため、自分のパソコンへの負荷はありません。
「パソコンを閉じても作業が続くか」は、2026年2月の一連のアップデートで状況が大きく変わりました。CursorはCloud Agentで完全にクラウド実行が可能です。Claude CodeもWeb版(--remoteフラグ)で複数セッションの並列クラウド実行に対応しました。Codexはもともと全てクラウドで動くため当然対応しています。唯一Antigravityだけが、基本的にローカル実行のためパソコンの電源が必要です。
AIモデルの選択肢については、Cursorが最も豊富で、GPT-5.2、Claude Sonnet 4.6、Gemini 3 Pro、Grokなど多数のモデルを切り替えて使えます。Antigravityも3種類(Gemini 3 Pro、Claude Sonnet 4.5、GPT-OSS)に対応しています。Claude CodeはAnthropicのモデル専用、CodexはOpenAIのモデル専用です。
Slack連携はCursorとCodexが対応しており、チャット上からAIに作業を依頼できます。スマホからの操作は、Cursorがモバイルアプリ対応、Claude CodeがRemote Control機能で対応、Codexもモバイル対応しています。Antigravityはモバイル対応していません。
安定性は、Antigravityのみがテスト版(パブリックプレビュー)で、他の3つは正式リリース済みです。Antigravityではプロジェクトフォルダの移動でデータが壊れる不具合や、セキュリティの脆弱性が指摘されています。
料金は、Antigravityが現在無料(テスト期間終了後は有料予定)、Codexが月額約1,200円から、CursorとClaude Codeが月額約3,000円からです。ただしCursorとClaude Codeは利用量に応じて追加課金が発生する場合があります。
EC事業者はどう選ぶべきか
この比較から見えてくるのは、「1つのツールが全ての面で勝っている」という状況ではないことです。ただし、いくつかの判断基準は明確に提示できます。
プログラミング経験がまったくない場合、Antigravityが最も始めやすい選択肢です。画面を見ながらマウスで操作でき、AIが全工程を自動化してくれます。ただしテスト版であることを理解した上で、本番の業務システムではなく「まず試しに作ってみる」用途に留めるのが安全です。
すでにECサイトを運用していて改修したい場合、Claude Codeの既存コード理解力が最も頼りになります。ShopifyやWordPressなど、すでに動いているシステムに手を入れる作業では、「全体を理解した上で安全に修正する」Claude Codeの特性が活きます。
チームで使いたい、あるいは日中忙しくて放置したい場合、CursorのCloud AgentかCodexが適しています。特にCursorは、作業のビデオ録画付きで品質を証明してくれる仕組みがあり、同社内部でもPRの35%がAIによって作成されている実績があります。
最も現実的なアプローチは、「まず1つ触ってみて、足りなければ別を試す」です。この分野は2026年に入ってから月単位で勢力図が変わっています。2月24日にはCursorとClaude Codeが同日に大型アップデートをリリースし、それまでの比較記事が一気に古くなりました。完璧なツール選びに時間をかけるより、まず手を動かすことの方が価値があります。
なお、AIが書いたプログラムは必ずしも完璧ではありません。特にお客様の個人情報や決済に関わる部分は、必ず人間の目で確認してください。「AIに全部任せる」のではなく、「AIに作ってもらったものを確認して使う」が正しいスタンスです。
引用:
- Google Developers Blog「Build with Google Antigravity」(https://developers.googleblog.com/build-with-google-antigravity-our-new-agentic-development-platform/)
- Cursor公式ブログ「Cloud Agents with Computer Use」(https://cursor.com/blog/agent-computer-use)
- Claude Code公式ドキュメント「Claude Code on the web」(https://code.claude.com/docs/en/claude-code-on-the-web)
- DevOps.com「Claude Code Remote Control」(https://devops.com/claude-code-remote-control-keeps-your-agent-local-and-puts-it-in-your-pocket/)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。 https://uruchikara.jp/contact/

齋藤 竹紘(さいとう・たけひろ)
株式会社オルセル 代表取締役 / 「うるチカラ」編集長
Experience|実務経験
2007年の株式会社オルセル創業から 17 年間で、EC・Web 領域の課題解決を
4,500 社以上 に提供。立ち上げから日本トップクラスのEC事業の売上向上に携わり、
“売る力” を磨いてきた現場型コンサルタント。
Expertise|専門性
技術評論社刊『今すぐ使えるかんたん Shopify ネットショップ作成入門』(共著、2022 年)ほか、
AI × EC の実践知を解説する書籍・講演多数。gihyo.jp
Authoritativeness|権威性
自社運営メディア
「うるチカラ」で AI 活用や EC 成長戦略を発信し、業界の最前線をリード。
運営会社は EC 総合ソリューション企業株式会社オルセル。
Trustworthiness|信頼性
東京都千代田区飯田橋本社。公式サイト alsel.co.jp および uruchikara.jp にて
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