ChatGPT「ショッピングリサーチ」機能が登場──日本のEC事業者が今すべき3つの準備

投稿日: カテゴリー ChatGPT

2025年11月24日、OpenAIがChatGPTに「ショッピングリサーチ」という新機能を追加しました。ブラックフライデーを目前に控えたタイミングでの発表は、AI×ECの競争が新たなフェーズに突入したことを示しています。週7億人が利用するChatGPTに本格的なショッピング機能が加わる意味は、日本のEC事業者にとっても決して無視できるものではありません。

従来のChatGPTでも商品に関する質問は可能でしたが、今回の新機能は「深い意思決定」を支援するために設計されています。予算や用途、好みを対話形式で確認し、複数の情報源から比較検討した結果を「バイヤーズガイド」として提示する仕組みです。単純な価格確認ではなく、家電やコスメ、スポーツ用品など仕様比較が複雑な商品カテゴリーで特に威力を発揮するとされています。

新機能の概要と技術的な特徴

今回のショッピングリサーチは、GPT-5 miniをベースに、ショッピングタスク専用の強化学習を施したモデルで動作しています。OpenAIによれば、複数の制約条件を含むクエリに対する商品精度は52%に達し、従来のChatGPT Searchの37%と比較して大幅に向上しています。

ユーザーはモバイルまたはWebブラウザからアクセスし、「(+)メニュー」から「ショッピングリサーチ」を選択するか、ショッピング関連の質問を入力すると自動的に提案されます。Free、Go、Plus、Proすべてのプランで利用可能で、ホリデーシーズンはほぼ無制限で使えるとのことです。

重要なのは、この機能がChatGPTのメモリー機能と連携する点です。例えばゲーム好きのユーザーがノートPCを探していれば、その嗜好を踏まえた提案が可能になります。検索中に「興味なし」や「もっとこんな感じ」といったフィードバックを送ることで、リアルタイムに結果を調整できる対話型の設計も特徴です。

OpenAIは「広告ではない」と明言しており、検索結果は公開されている小売サイトの情報に基づいたオーガニックなものとしています。ただし、価格や在庫情報に誤りが生じる可能性があることも認めており、最終確認は各販売サイトで行うよう推奨しています。

激化するAIショッピング競争と日本市場への影響

この発表は、AI検索プラットフォームによるEC機能の争いが本格化していることを物語っています。2024年11月にはPerplexityが「Buy with Pro」を開始し、Shopifyと連携したワンクリック購入機能を提供開始しました。Google検索も2025年5月にAIモードを強化し、Googleショッピングとの連携を深めています。

日本市場においてChatGPTのショッピング機能がいつ本格展開されるかは未定ですが、Perplexityも日本展開を計画しており、楽天やAmazon Japanといった既存プラットフォームを脅かす可能性があります。経済産業省の調査によれば国内EC市場は約23兆円規模に達しており、検索経由での購買行動は売上の30〜50%を占める重要なチャネルです。AIが商品発見の入口になれば、この構図は根本から変わりかねません。

さらに注目すべきは、OpenAIが2025年9月に発表した「Instant Checkout」機能です。Stripeとの連携により、ChatGPT内で直接購入まで完了できる仕組みで、すでに米国のEtsy出品者向けに提供開始。100万以上のShopify加盟店(Glossier、SKIMS、Spanx、Vuoriなど)も順次対応予定とされています。将来的にはショッピングリサーチとInstant Checkoutが統合され、商品発見から購入までがChatGPT内で完結する世界が実現するでしょう。

日本のEC事業者が今から準備すべきこと

海外のAIショッピング機能が日本市場に本格上陸する前に、中小EC事業者が取り組むべき準備は以下の3点に集約されます。

第一に、商品データの構造化です。AIが商品情報を正確に理解するためには、Schema.orgに準拠した構造化データの実装が不可欠です。商品名、価格、在庫状況、レビュー評価などをJSON-LD形式で記述することで、AI検索エンジンに正しく認識される確率が高まります。

第二に、商品説明文の質的向上です。スペック羅列だけでなく、使用シーンやターゲットユーザーを明確にした文章が求められます。ChatGPTのショッピングリサーチは「予算」「誰向けか」「重視する機能」といった質問に基づいて商品を絞り込むため、これらに回答できる情報が商品ページに含まれていることが重要です。

第三に、複数プラットフォームへの対応準備です。楽天やAmazonへの出品だけでなく、Shopifyなどの自社EC基盤を整備しておくことで、将来的にOpenAIやPerplexityのマーチャントプログラムに参加する選択肢が広がります。Perplexityはすでに無料の加盟店プログラムを提供しており、API経由での商品連携も可能になっています。

AIショッピング時代は「検索されるEC」から「AIに選ばれるEC」への転換を意味します。今から商品情報の品質と構造を見直し、新しいチャネルへの適応力を高めておくことが、次の成長機会をつかむ鍵となるでしょう。


引用:openai


投稿者: 齋藤竹紘

齋藤 竹紘(さいとう・たけひろ) 株式会社オルセル 代表取締役 / 「うるチカラ」編集長

   
Experience|実務経験
2007年の株式会社オルセル創業から 17 年間で、EC・Web 領域の課題解決を 4,500 社以上 に提供。立ち上げから日本トップクラスのEC事業の売上向上に携わり、 “売る力” を磨いてきた現場型コンサルタント。
Expertise|専門性
技術評論社刊『今すぐ使えるかんたん Shopify ネットショップ作成入門』(共著、2022 年)ほか、 AI × EC の実践知を解説する書籍・講演多数。gihyo.jp
Authoritativeness|権威性
自社運営メディア 「うるチカラ」で AI 活用や EC 成長戦略を発信し、業界の最前線をリード。 運営会社は EC 総合ソリューション企業株式会社オルセル
Trustworthiness|信頼性
東京都千代田区飯田橋本社。公式サイト alsel.co.jp および uruchikara.jp にて 実績・事例を公開。お問い合わせは info@alsel.co.jp まで。

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