生成AI搭載の検索エンジンPerplexityが、広告ビジネスにおいて重要な転換点を迎えています。月間アクティブユーザー1億人を超える同社は、2024年11月に広告プラットフォームを立ち上げましたが、その成長戦略には多くの課題が存在します。日本のEC事業者にとって、この動向は今後の検索マーケティング戦略を考える上で無視できない要素となるでしょう。
新興プラットフォームが直面する広告収益化の壁
Perplexityの広告事業は、現在約50社の広告主と契約を結んでいますが、その多くはテスト段階に留まっています。広告業界の専門家によると、同社の年間広告収益は5000万ドル未満と推定され、これは同規模のユーザーベースを持つプラットフォームとしては控えめな数字です。特に注目すべきは、広告主の多くが6桁台(10万ドル台)の予算でテストを行っている点で、本格的な投資には至っていない現状が浮き彫りになっています。
日本のEC市場においても、楽天やAmazon Japanといった既存プラットフォームの広告システムが確立されている中、新たな広告チャネルへの投資判断は慎重にならざるを得ません。特に中小規模のEC事業者にとっては、ROIが不透明な新規プラットフォームへの広告投資はリスクが高いと言えるでしょう。
AI検索時代のマーケティング戦略転換
Perplexityの事例から見えてくるのは、AI搭載検索エンジンが従来の検索広告モデルに大きな変革をもたらす可能性です。同社のCPM(1000インプレッションあたりのコスト)は50ドル以上と、業界平均を大きく上回る価格設定となっています。これは、AIによる高度なターゲティングと、ユーザーの検索意図をより深く理解できる可能性を反映した価格設定と考えられます。
日本のEC事業者は、このような高単価でも費用対効果が見込める商品カテゴリーの選定が重要になります。例えば、高額商品や専門性の高い商品、リピート購入が期待できる商品などは、AI検索広告との相性が良いと予想されます。また、商品説明や顧客対応にAIを活用することで、広告からの流入後のコンバージョン率を高める施策も同時に検討すべきでしょう。
今後のEC広告戦略における重要な視点
Perplexityが直面している課題は、新規参入者が既存の巨大プラットフォーム(Google、Meta)に対抗することの難しさを示しています。しかし同時に、AI技術の進化により、検索体験そのものが大きく変わる可能性も示唆しています。日本のEC事業者は、現在の主要広告チャネルへの投資を維持しながら、新興AIプラットフォームの動向を注視し、小規模なテスト投資から始めることが賢明でしょう。
特に重要なのは、自社のEC サイトやマーケットプレイス内での商品情報の構造化です。AI検索エンジンは構造化されたデータをより効果的に理解し、適切なユーザーに商品を提示できるため、商品データの整備は将来的な広告効果を左右する重要な要素となります。また、生成AIを活用した商品説明の自動生成や、チャットボットによる顧客対応の高度化など、広告流入後の顧客体験向上にもAI活用を進めることで、総合的な売上向上が期待できます。
引用:digiday
