2026年2月28日(金)、世界を揺るがす2つの出来事が同時に起きました。米国とイスラエルがイランへの大規模軍事攻撃を開始したこと、そしてトランプ大統領がAI企業Anthropicの技術を全連邦機関から即時排除するよう命じたことです。
しかし、驚くべきことに、その禁止令が出たわずか数時間後、米軍はイラン空爆の作戦においてAnthropicのAIモデル「Claude」を使い続けていたことがWall Street Journalの報道で明らかになりました。この一件は、AI技術が現代の軍事作戦にどれほど深く組み込まれているかを浮き彫りにしています。
禁止令と空爆が交差した一夜
2月28日金曜日、トランプ大統領はTruth Socialに投稿し、Anthropicを「急進左派のAI企業」と名指しで批判しました。「現実世界を何も分かっていない人間たちが運営している」と糾弾し、全連邦機関に対してAnthropicの技術の即時使用停止を命じています。現在使用中の省庁には6カ月間の移行期間が設けられました。
同日、ヘグセス国防長官もXに投稿し、Anthropicを「国家安全保障上のサプライチェーンリスク」に指定すると発表。これは通常、中国やロシアの企業に適用される分類であり、米国のテック企業に対しては前例のない措置です。
ところが、その命令が出たまさにその夜、米中央軍(CENTCOM)を含む複数の軍司令部は、イランへの攻撃作戦においてClaudeを情報分析、標的選定、戦闘シミュレーションに活用していたのです。
対立の発火点は「マドゥロ捕獲作戦」
この対立の起源は、2026年1月に遡ります。米軍がベネズエラのマドゥロ大統領を捕獲した作戦において、PalantirとAWSの機密クラウドを経由してClaudeが使用されていたことが判明しました。
Anthropicはパートナー企業のPalantirに対し、銃撃が発生した作戦でClaudeが使われたかどうかを問い合わせました。ペンタゴン側はこれを、軍事作戦に対する事後的な統制の試みと受け取りました。Anthropic側はこの解釈を否定していますが、ここから両者の関係は急速に悪化していきます。
Anthropicが譲らなかった条件は2つです。Claudeを米国市民に対する大規模監視に使わないこと、そして完全自律型の致死兵器システムに使わないこと。ヘグセス国防長官はこれに対し、あらゆる合法的な軍事目的に無制限でアクセスできるよう要求しましたが、Anthropicはこれを拒否しました。
ヘグセス氏はAnthropicを「傲慢と裏切り」と非難し、「米国の戦闘員がビッグテックのイデオロギー的気まぐれに人質に取られることは決してない」と宣言しています。
「簡単には置き換えられない」——軍事AIの深い浸透
2025年7月、国防総省はAIサービスの調達契約として最大2億ドル規模の契約をAnthropic、OpenAI、Google、xAIなどのAI企業と締結していました。Claudeは、PalantirやAmazon Web Servicesの最高機密クラウドを通じて、機密レベルの軍事・情報活動での使用が認可された唯一のAIモデルでした。
これが問題を複雑にしています。ヘグセス国防長官自身も、Claudeが軍のワークフローに深く統合されており、即座に切り離すことの難しさを認めています。「より良い、より愛国的なプロバイダー」への円滑な移行を確保するため、最大6カ月の移行期間を設定せざるを得ませんでした。
Anthropicとの決裂後、OpenAIのサム・アルトマンCEOはペンタゴンとの合意を発表し、ChatGPTを軍の機密ネットワーク内で展開することを明らかにしました。イーロン・マスクのxAIも、Grokモデルを米軍の安全な環境で運用する契約を締結しています。しかし、軍関係者やAI専門家の間では、Claudeの完全な代替には相当な時間がかかるとの見方が強いとされています。
AI倫理と軍事利用のはざまで
この一連の事態は、AI技術の軍事利用をめぐる根本的な問いを突きつけています。
Anthropicは「サプライチェーンリスク」指定を法廷で争う方針を表明しています。同社の主張によれば、この指定は国防総省との契約におけるClaude使用にのみ適用でき、他の顧客への提供には影響しないとしています。
注目すべきは、GoogleやOpenAIの従業員430人以上がAnthropicへの連帯を示す請願書に署名したという報道です。これは、テック業界全体がAIの軍事利用の境界線について重大な関心を抱いていることを示しています。
さらに興味深いのは、OpenAI自身もAnthropicと同じレッドライン——大規模監視と自律型兵器の禁止——を共有していると述べている点です。今はペンタゴンとの蜜月期にありますが、同じ対立がいずれOpenAIにも訪れる可能性は十分にあります。
AIは戦争の「インフラ」になった
この事件が最も鮮明に示しているのは、AIがもはや軍事作戦における「オプション」ではなく「インフラ」になったという現実です。
大統領が禁止を命じても、数時間では切り離せない。それほどまでにAIは現代の軍事オペレーションに組み込まれています。情報分析、標的選定、シナリオシミュレーション——かつて何百人もの分析官が行っていた作業を、AIが担うようになりました。
2026年は、AI戦争の時代が本格的に始まった年として記憶されることになるかもしれません。そしてその最前線で、技術企業がどこまで国家の要求に応じるべきかという問いが、これまで以上に切実な意味を持ち始めています。
引用元: heguardian

齋藤 竹紘(さいとう・たけひろ)
株式会社オルセル 代表取締役 / 「うるチカラ」編集長
Experience|実務経験
2007年の株式会社オルセル創業から 17 年間で、EC・Web 領域の課題解決を
4,500 社以上 に提供。立ち上げから日本トップクラスのEC事業の売上向上に携わり、
“売る力” を磨いてきた現場型コンサルタント。
Expertise|専門性
技術評論社刊『今すぐ使えるかんたん Shopify ネットショップ作成入門』(共著、2022 年)ほか、
AI × EC の実践知を解説する書籍・講演多数。gihyo.jp
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「うるチカラ」で AI 活用や EC 成長戦略を発信し、業界の最前線をリード。
運営会社は EC 総合ソリューション企業株式会社オルセル。
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