AIに「コードを書かせる」が当たり前になった日──ロンドンで見えたEC事業者の未来図

投稿日: カテゴリー Claude

ロンドンで開催されたAnthropicの開発者イベント「Code with Claude」で、ある衝撃的な光景が広がりました。登壇者が「先週、Claudeが完全に書いたプルリクエストをマージした人?」と問いかけると、会場の半数近くが手を挙げ、続いて「自分でコードを一行も読まずにマージした人?」と聞かれても、ほとんどの手が下りなかったのです。これは単なる開発手法の進化ではなく、ソフトウェアを「誰が」「どう」作るかという根本構造の転換を示しています。日本のEC事業者にとっても、この潮流は決して他人事ではありません。

AIコーディングは「ニュース」から「日常」へ変わった

Anthropicによると、同社内のソフトウェアの大半はすでにClaudeが書いており、Claude Code自体もClaudeが書いた部分が大半を占めているといいます。OpenAI、Google、Microsoftも同様の主張を展開しており、トップ企業ほど「手書きコードがいかに少ないか」を競って発表する状況になっています。

注目すべきは、今年2月にリリースされたClaude 4.6、4月のClaude 4.7というアップデートによって、エンジニアが「安心して仕事を丸ごと任せられる」レベルに到達したという点です。Anthropicの方針は明確で、「Claude にプロンプトを与える」から「Claudeに自分自身でプロンプトさせる」への転換を目指しています。エラーメッセージすら人間の目に触れず、Claudeが自分でテストし修正し、すべてが動くまで反復する──そんな世界観が現実化しつつあります。

イベントで発表された新機能「Dreaming(ドリーミング)」は象徴的です。Claude Codeのエージェントがタスク中に学んだことをメモとして残し、次のエージェントがそれを読んで素早くキャッチアップする。さらにDreamingがそれらメモを横断して読み込み、パターンを見つけてコードベース全体への理解を深めていく仕組みです。

日本のEC事業者にとっての具体的インパクト

このトレンドは「シリコンバレーの開発者向けの話」では終わりません。Spotify、Delivery Hero、Lovable、Base44、Monday.comといった企業が事例として登壇していますが、日本のEC事業者が直面している課題こそ、AIコーディングが最も劇的に効く領域です。

楽天RMSのCSV処理、Shopifyのカスタムテーマ調整、Amazon出品データの一括加工、Yahoo!ショッピングのストアエディタ用スクリプト、Google Merchant Centerのフィード変換──これらはすべて「定型的だが手作業だと数時間〜数日かかる」業務の典型です。月商1000万〜5000万円規模のショップが社内エンジニアを雇うのは現実的でなく、外注すれば1案件20万〜50万円が相場。ここにClaude Codeのようなツールを導入すれば、店長自身が「コードを読まずに」業務ツールを内製化できる時代が来ています。

実際、当社オルセルでも、Rakuten一括コントロールCSV生成、Amazon SEO採点パイプライン、Shopify Liquidの日本語リファレンス検索など、これまでなら外注前提だった開発を社内のAI運用で完結させる事例が積み上がっています。重要なのは「コードが書けるかどうか」ではなく「業務要件を言語化できるかどうか」に競争軸が移ったという事実です。

「Let it cook」の裏で進む二極化──放任か、設計か

一方で、記事内ではAIコーディングへの懸念も率直に紹介されています。Hacker Newsには「生成されたコードを『問題ない』と言う人は、コードを読んでいない人だけだ」という投稿が引用され、AIツールに業務を渡しすぎて自分のコーディング能力が落ちたと感じる開発者の声、AIが生成するコードがセキュリティ上脆弱になり得るという研究者の警鐘も紹介されています。

Claude エンジニアリングリードのKatelyn Lesse は「古いソフトウェア開発のベストプラクティスは今もすべて有効。多くの人やチームがこの瞬間にそれを見失っているだけ」と語っています。さらに「現時点でClaudeはミッドレベルのエンジニアと同等の実力。ただしシステム設計や難しいトラブルシューティングには専門家が必要」と現状認識を示しました。プロダクトリードのAngela Jiang は「最終的にClaudeが自分自身を構築できるようになることを目指している」と語っています(要確認:両者の発言はMIT Technology Reviewによる取材ベース)。

この構図はEC事業者にも完全に重なります。AIに丸投げして「動けばいい」で運用する事業者と、「AIに何をどう任せるか」を設計できる事業者の差は、これから1〜2年で売上・利益率・人時生産性に決定的な差となって現れます。楽天RPPのROAS最適化ロジック、Amazonの在庫補充自動化、越境ECの自動翻訳パイプライン──これらは「AIが書いたコード」をレビューせず動かすと、広告費の垂れ流しや出品停止という形で直接損益を直撃します。

まとめ──日本のEC事業者は何から始めるべきか

Code with Claudeが示したのは、コードを書くという行為そのものが「一部の専門家の仕事」から「業務要件を持つすべての人の道具」に変わったという事実です。日本のEC事業者がいま取るべき行動は明確です。第一に、社内の繰り返し業務を棚卸しし、「人がやる必要のないもの」を切り分けること。第二に、Claude Code やClaude のような生成AIツールを試験的に1業務だけでも導入し、運用感覚を掴むこと。第三に、AI が出力した結果を必ずレビューする人・仕組みを残すこと。この三つを並行で進められた事業者から、来期以降の競争優位を確立していくはずです。

「AIに任せられる業務」と「人が責任を持つべき業務」の線引きを設計できるかどうか。それが、今後のEC事業者の勝ち負けを分ける最大の論点になります。

引用:https://www.technologyreview.com/2026/05/21/1137735/anthropics-code-with-claude-showed-off-codings-future-whether-you-like-it-or-not/

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投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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