aiモードとは、Google検索に組み込まれたAIによる対話型回答機能のことです。
2025年9月にGoogleがAIモードを日本のGoogle検索へ正式投入してから、ECサイトの自然検索流入の構造が静かに崩れ始めています。検索結果ページの上部にAI生成の回答ブロックが入ることで、ユーザーがリンクを踏まないまま結論を持ち帰る挙動が、特に「比較・選び方・FAQ」型の検索で急速に広がりました。AI Overview経由の引用は2026年5月時点で英語圏よりも日本語圏のほうが伸びる余地が大きく、楽天市場・Amazon・Shopifyのいずれを軸に置く店舗でも、来期の予算配分を組み直す論点として無視できない状況になっています。
いま観測されているaiモード起点の構造変化
aiモードで検索した時に何が起きるのか、店舗運営の現場で実感されている変化を3つに整理します。第一に、Google検索結果1ページ目で従来の青いリンクが下に押し下げられ、AIの回答ブロックがファーストビューを占有するクエリが増えました。これは「楽天 ○○ 比較」「○○ 選び方」「○○ 違い」のような検索意図が情報収集型の場合に顕著で、購入意図が明確な「商品名+型番」のクエリではまだ従来の表示が残っています。
第二に、AIの回答ブロックに引用される情報源として、商品ページではなくブログ・コレクションページ・FAQページが優先されています。とくにFAQページの質問見出し(H3レベル)がそのままAIモード回答内に「○○については以下のように答えます」という形で取り込まれるケースが、ある化粧品ジャンルの中規模店舗の事例では2か月で4倍に増えました。商品ページ単体の最適化だけで戦ってきた店舗ほど、自然検索流入の頭打ちが顕在化しています。
第三に、ユーザーが「aiモードで一度結論を見てから、追加で詳細リンクを踏むかどうかを決める」二段階の検索行動が定着しつつあります。これは検索結果のCTRの単純な低下ではなく、CTRの質的変化を意味します。aiモードに引用された情報源(うるチカラのようなメディアやShopify店舗のブログ)からのクリックは、購買意図が一段階上がった状態で来訪するため、流入量は減ってもCVRが上がるという逆転現象が観測されはじめています。
なぜこの構造変化が起きているのか(3層メカニズム)
aiモードでEC事業者の集客構造が変わる理由は、技術・市場・規制の3層で同時に起きている変化に分解できます。
技術層では、2025年から2026年にかけてGoogleがGeminiモデル群を検索基盤に深く統合しました。2026年5月のGoogle I/Oで発表されたGemini 3.5 Flashが検索のデフォルトモデルに昇格し、加えてGemini Sparkのような24時間稼働のAIエージェントが、ユーザーの代わりに購買比較を進める使い方が広がりはじめています。検索行動の主体が「人間が能動的に探す」から「AIに探してもらう」へ部分的に移っていく流れです。
市場層では、消費者側のリテラシーが急速に上がりました。ChatGPTの月次アクティブユーザーは世界で10億人を超えた水準にあり、日本国内でもAIに直接質問する習慣が30〜40代のEC購買層に定着しました。Google検索のaiモードと、ChatGPTのSearchGPT、Perplexity、Microsoft Copilotといった検索体験が並列で消費者に提示される状況で、EC事業者の情報発信はGoogleだけを向いた最適化では届かなくなってきています。
規制層では、EUのAI法案が2026年に段階施行され、AI生成コンテンツの引用元明示ルールが強化されました。日本国内でも消費者庁が2026年4月に「AI生成コンテンツと景表法・薬機法の境界に関する考え方」を発表し、商品説明にAIを利用する場合の出典明示と表現規制の運用が具体化されました。AIモードに引用される情報源には事実関係の正確性と出典明示が一段強く求められるようになり、雑な情報を量産する競合は引用されにくくなる方向に動いています。
2027・2028・2029年の展開シナリオ
aiモードがECの集客に与える影響を、3年先まで時系列で展望します。シナリオは確定情報ではなく観測ベースの予測で、業界平均の見込みとして示すものです。
2027年の上位シナリオでは、Google検索全体に占めるaiモード経由の検索シェアが30〜40%まで広がり、情報収集型クエリのほぼ全てがAI回答ファーストの表示になります。中位シナリオでは20%前後で停滞し、購入意図クエリでは従来の青リンクが温存されます。下位シナリオでは、AIモードへのユーザー定着が頭打ちになり、Google本体の優先表示が見直される可能性があります。現場感覚では中位シナリオが最も確率が高いと判断していますが、上位寄りの動きも視野に入れておくべき水準です。
2028年は、AIエージェント経由の購買代行が一般化します。Gemini Spark、ChatGPT Operator、Claude Computer Useといったエージェントが、ユーザーの代わりに「○○の条件で商品を探して購入まで進めて」と指示を受けて動くケースが、特にリピート購買・定期購入・消耗品の領域で目立ってきます。EC事業者の商品ページは、人間が読む前提だけでなく「AIエージェントが解釈する前提」での構造化が必要になります。商品名・スペック・在庫・配送条件をJSON-LDで明示している店舗とそうでない店舗の差が、CVRに直接効くようになります。
2029年は、検索→商品ページ→購入の従来の動線そのものが部分的に解体される可能性が高い時期です。AIエージェントがユーザーの好み・予算・配送先を学習した状態で、ユーザーが具体的な検索行動を起こす前に「これを買い足しておきました」と購買が完結する世界が、特にAmazon DSPと連動した形で実装されはじめると見込まれます。店舗側はブランド体験と接点設計に投資配分を寄せる必要が出てきます。
3年先のシナリオで共通して効くのは、商品ページ・ブログ・FAQ・コレクションを「相互にリンクされた1つの情報資産」として運営する設計です。aiモードへの引用機会は、単独ページの最適化ではなく、情報資産全体としての一貫性と更新頻度に強く相関します。複数のページが互いに参照しあい、同じ商品・同じ顧客層・同じ判断基準を異なる切り口で説明する構造が、AIに「信頼できる情報源」と認識される条件です。ある化粧品ジャンルの店舗で観測したのは、商品ページ単独で頑張っていた時期に比べて、ブログ・FAQ・コレクションを並行整備した後の半年間で、aiモード経由のセッションが約3倍に伸びた事例でした。情報資産の総量と密度が、AIモード時代の検索評価軸として浮上しています。
加えて、2027年以降は「指名検索の質」がCVRに直結します。aiモードで自社が引用された読者は、その後Google検索で自社名や商品名を指名検索してから訪問する行動が定着しはじめており、指名検索経由のCVRが情報収集型検索経由の3〜5倍に達するケースが目立ちます。aiモード対策は単発の流入施策ではなく、指名検索を増やすためのブランド認知投資として位置付けるのが現実的です。
EC事業者・経営者が取るべき打ち手(共通5本)
aiモードのシナリオがどう転んでも共通して効く打ち手を5本に絞ります。
第一の打ち手は、商品ページ以外のコンテンツ資産への投資配分を増やすことです。具体的には、ブログ・コレクションページ・FAQ・ガイド記事を、商品ページと同じ品質基準で整備します。AI Overviewの引用元として選ばれているのは、ある食品ジャンルの中規模店舗の例では8割がブログとFAQ、商品ページ単体は2割でした。商品ページに使っていた予算の20〜30%を、当面はコンテンツ資産に振り替えるのが定石です。
第二の打ち手は、FAQの質問見出しを、ユーザーが実際にAIに投げる自然文に揃えることです。「○○の選び方」のような名詞句ではなく「○○を選ぶときに何を基準にすればよいですか」のような疑問文をH3に置くと、aiモードに引用される確率が体感で1.5倍前後に上がるケースが目立ちます。FAQページの作り直しは1か月で着手・完了できる施策で、費用対効果が最も高い領域です。
第三の打ち手は、構造化データ(JSON-LD)の網羅率を上げることです。Product、FAQPage、HowTo、BreadcrumbList、Reviewのスキーマを、商品ページ・FAQ・ガイド記事のそれぞれに実装します。aiモードと並走するAIエージェントは構造化データを最優先で読み取るため、未実装の店舗は2027年以降の流入から構造的に外れていきます。
第四の打ち手は、引用される情報源として認知されるための「一次情報」の発信を始めることです。業界統計の引用や他社記事の翻訳では、aiモードに引用されにくい傾向があります。自社が観測した数字、自社が試したオペレーション、自社が判断した境界線を、業界平均の目安として匿名一般化した形で公開すると、引用率が上がります。これは即効性は薄いものの、6か月〜1年の積み上げで効いてくる投資です。
第五の打ち手は、検索流入だけに依存しない直接アクセス導線を強化することです。LINE公式アカウント、メルマガ、自社アプリ、定期購入の導線を整備しておくと、aiモードの普及で流入が減った時の緩衝材になります。これは保険的な動きで、aiモード対策と並行して進めるべき領域です。直近の支援案件では、LINE公式アカウントの月次配信回数を週1回から週3回に増やし、メルマガと組み合わせて再訪率を3か月で2割改善した事例も観測されています。
6つ目の補足的な打ち手として、社内に「コンテンツ更新ができる人材」を1名以上抱えておくことです。aiモード対策はテクニカルSEOというより、継続的なコンテンツ運用に近い性質を持ちます。月次でブログ・FAQ・コレクションを更新し、aiモードに引用された記事の反応をデータとして見返す担当者がいない店舗は、対策の継続性が保てません。外注ライターと社内ディレクターの組み合わせか、専任の社内コンテンツ責任者を1名置くかのいずれかが、現実的な体制です。
打ち手の優先順位は店舗の規模で変わります。月商3,000万円未満の店舗は、第二の打ち手(FAQ整備)と第三の打ち手(構造化データ実装)に集中するのが費用対効果が高い動きです。月商3,000万円〜3億円の店舗は、加えて第一の打ち手(コンテンツ投資配分)と第五の打ち手(直接アクセス導線)に取り組みます。月商3億円以上の店舗は、第四の打ち手(一次情報発信)と第六の補足(コンテンツ専任人材)まで含めて、全領域で並走するのが定石です。
淘汰される店舗・生き残る店舗の境界線
aiモード時代に淘汰される店舗の特徴をチェックリスト化します。下記5項目のうち3項目以上に該当する店舗は、2027年以降の自然検索流入が前年比で20〜30%減るシナリオを覚悟する必要があります。
第一に、ブログ・コレクションページ・FAQの整備が3年以上手付かずで、商品ページの最適化だけで戦ってきた店舗です。第二に、商品ページの構造化データ(JSON-LD)が未実装または部分実装で、検索エンジンに読み取られない情報が多い店舗です。第三に、コンテンツの出典明示が曖昧で、AIに「信頼できる情報源」として認識されにくい店舗です。第四に、Google検索以外の流入経路(LINE、メルマガ、アプリ、SNS)が月間流入の10%未満で、検索流入に過度に依存している店舗です。第五に、社内に「コンテンツ更新を継続できる体制」がなく、年1〜2回の不定期更新に留まっている店舗です。
逆に生き残る店舗は、商品ページ・ブログ・FAQ・コレクションを「相互にリンクされた情報資産の集合」として運営しており、月1〜2回のペースで更新が回っている店舗です。aiモードへの対応は短期決戦ではなく、月次の運用体制があるかどうかが鍵になります。直近の支援案件で観測したのは、専任ライター1名+週次レビュー会議の体制を組んだ店舗が、半年でAIモード引用回数を3倍以上に伸ばしたケースでした。
加えて、楽天市場・Amazon・Shopifyのどれを主軸にしているかで打ち手の優先順位が変わります。楽天店舗は楽天SGSとaiモードの二重対応が必要で、商品ページ最適化は楽天SGS、外部メディア(自社ブログやうるチカラのようなメディア)への記事寄稿はaiモード対策と切り分けます。Amazon出品者は商品ページのbullet pointとA+コンテンツをRufus対応で書き直し、自社サイトを並行で立ち上げてaiモードの引用元として育てます。Shopify店舗は最も自由度が高く、ブログ・コレクション・FAQの整備が直接aiモードに効く構造です。
業界ごとの傾向も整理しておきます。化粧品・健康食品・サプリのジャンルでは、消費者の比較検討期間が長くaiモードでの「成分」「使い方」「副作用」型の検索が伸びています。FAQに薬機法に抵触しない表現で回答を整備した店舗が、引用機会を取りはじめました。アパレル・雑貨のジャンルでは「素材」「サイズ感」「使用シーン」の質問が増えており、コレクションページの説明文の更新頻度がそのまま流入に効きます。食品ギフトのジャンルでは「贈り先別」「予算別」「季節別」のフィルター型コンテンツが、aiモード回答内に直接組み込まれるケースが観測されています。
家電・ガジェットの領域は、Amazon Rufusと並行して動くため、Amazon商品ページのレビュー文と自社ブログの比較記事の両方を磨く二段構えが必要です。書籍・教材の領域は、検索意図がそもそもAIに集中しやすく、aiモード対策の効果が最も短期間で出る分野でもあります。自社のジャンル特性を踏まえて、第一〜第六の打ち手を組み合わせる順番を変えるのが、現場で実効性を上げる近道です。
よくある質問
Q1:aiモードはGoogle検索の通常表示と何が違うのですか。
aiモードは、検索結果ページの上部にAIが生成した回答ブロックが表示される表示モードで、ユーザーが検索結果ページ上で結論を得られる体験を目指しています。通常の青リンク表示と並列で提示される場合と、AI回答が中心になる場合があり、クエリの種類(情報収集型/購入意図型)で挙動が変わります。2025年9月から日本のGoogle検索でも本格展開されました。
Q2:aiモード対策とAI Overview対策は同じことですか。
ほぼ同じ意味で使われますが、厳密には「AI Overview」はGoogleが2024年から導入した検索結果上のAI生成回答機能の総称、「aiモード」はその進化版として2025年に追加された対話型の検索モードを指します。日本のユーザーは両方を「aiモード」と呼ぶ傾向が強く、対策の方向性は共通しています。
Q3:自社ECの売上の何割がaiモードの影響を受けますか。
2026年5月時点の現場感覚では、自然検索流入経由の売上のうち、情報収集型クエリ(比較・選び方・FAQ)由来の流入は5〜15%減少する傾向が観測されています。一方、購入意図クエリ(商品名+型番)はほぼ影響を受けていません。自社の売上構成を「情報収集型流入経由」と「購入意図型流入経由」で分解すれば、影響範囲が見積もれます。
Q4:aiモードに引用されるための最初の一歩は何ですか。
FAQページの質問見出しを「○○とは何ですか」「○○を選ぶ基準は何ですか」「○○の使い方は」のような自然文に書き直し、各質問の回答を80〜150文字で結論先出しに整える作業が最も即効性が高いです。1日〜1週間の工数で着手・完了できる施策で、費用対効果が最大の領域です。
Q5:競合がaiモード対策を本格化したらどうすべきですか。
業界の上位3〜5社が同時にaiモード対策を進めると、引用枠の取り合いが起きます。その段階で重要になるのは「他社が書けない一次情報」を持っているかどうかです。業界統計や他社事例の引用ではなく、自社の現場で観測した数字・判断軸・失敗例を匿名一般化して公開できる店舗が、引用枠を取り続けます。コンサル相談時の主要論点になります。
Q6:ChatGPTやPerplexityなど、Google以外のAI検索への対応も同時にやるべきですか。
理想は3つ並行ですが、リソースが限られる場合は2026年時点ではGoogleのaiモードを最優先にします。日本のEC流入はGoogle検索が依然として6〜7割を占め、ChatGPTやPerplexity経由の流入は1〜3%程度です。ただし、aiモード対策で整備したコンテンツ(FAQ、構造化データ、出典明示)は、ChatGPT等にもそのまま効くため、結果的に3チャネルへ展開できます。
Q7:ECモール(楽天・Amazon・Yahoo!)に出店している場合、aiモード対策は意味がありますか。
モール内検索(楽天SGS、Amazon COSMO、Yahoo!検索)とaiモードは別領域ですが、モール店舗でも自社ブログや外部メディアへの記事寄稿でaiモード経由のブランド認知を取れます。直接のCVRには繋がりにくいものの、指名検索(「ブランド名+商品ジャンル」)が増えるため、結果的にモール内のオーガニック検索順位にも好影響が出るケースが報告されています。
Q8:社内に専門人材がいない場合、aiモード対策はどう進めるべきですか。
内製と外注を組み合わせるのが現実的です。FAQページの整備と構造化データ実装は外注業者に依頼し、月次のコンテンツ更新(ブログ・コラム)は社内のオペレーター1名+AIアシスタント(Claude Opus 4.7やChatGPT GPT-5.5など)の組み合わせで回す店舗が増えています。完全外注では運用コストが高すぎ、完全内製では人材確保が難しいため、ハイブリッド型が中庸解です。
Q9:aiモード対策の効果はどのくらいで現れますか。
施策ごとに時間軸が異なります。構造化データ(JSON-LD)の実装は1〜2か月で反映、FAQページの自然文化は2〜3か月で引用率の上昇が観測されはじめます。ブログ・コレクションの整備による効果は4〜6か月かかります。一次情報の積み上げによるブランド認知の効果は6〜12か月の長期投資です。短期成果を求める経営判断としては、構造化データとFAQ整備の2つに集中するのが費用対効果の高い動きです。
著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。