ドイツの研究コンソーシアムが7月13日、オープンLLM「Soofi S」を公開しました。
総パラメータ316億のうち、1トークンあたり約32億だけを動かす省リソース設計でありながら、完全オープンなモデルの中ではドイツ語・英語の両ベンチマークで首位を取ったと報告されています。学習はすべてドイツ国内のインフラで行われており、欧州の「ソブリンAI(自国主権のAI)」路線を象徴する発表です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
何が起きたか:独コンソーシアムが316億パラメータのオープンモデルを公開
結論から言うと、ドイツAI連盟(KI Bundesverband)が調整役を務める研究コンソーシアムが、オープンな大規模言語モデルSoofi S 30B-A3Bを公開しました。The Decoderの報道によると、事前学習レポートの時点で、完全オープンなモデルの中では英語・ドイツ語のベンチマーク集計スコアで最高値を記録し、これまでの上位モデルであるOLMo 3 32BやApertus 70Bを上回ったとされています。
Soofi SはMoE(Mixture of Experts)型のモデルで、総パラメータは316億ですが、トークン生成時に実際に使うのは約32億にとどまります。アーキテクチャはNVIDIAのNemotron 3 Nanoをそのまま採用したもので、Mamba-2レイヤーと通常のアテンションレイヤーを組み合わせたハイブリッド構成です。52レイヤーのうちKVキャッシュを保持するのは6レイヤーだけで、長い入力でもメモリ負荷が増えにくい設計になっています。
この設計の効果は処理速度に表れています。コンテキスト長4万トークン・32並列リクエストの条件で、140億〜240億パラメータ級の従来型モデルと比べてGPUあたり約8倍のトークン生成速度を出したと報告されています。4,000トークンから256,000トークンまでコンテキストを伸ばしてもスループットがほぼ落ちない点も特徴です。

なぜ重要か:ドイツ語特化の学習データと「主権インフラ」での学習
このモデルの重要性は、性能数値そのものより「何を使って、どこで学習したか」にあります。学習データは合計約27兆トークンで、第1フェーズではドイツ語が7.2パーセント、第2フェーズでは15.3パーセントを占めます。参照元であるNVIDIAのレシピでは英語以外の全言語を合わせても約5パーセントですから、ドイツ語への傾斜配分がいかに大きいかがわかります。
その結果、コードベンチマークのHumanEvalで73.8パーセント、MBPPで70.2パーセント、ドイツ語版MBPPで84.2パーセントと、オープンソースの同格モデルでは最高のスコアを出しました。ドイツの地域知識を問うINCLUDE-DEでも61.2ポイントで、より大きいQwen3.5 35B-A3Bと並んで首位です。一方で、ドイツ語の数学コンペ問題や長文からの単語抽出タスクには明確な弱点も残っており、レポート自体がそれを隠さず記載しています。
学習は2026年3月から5月にかけて、ミュンヘンにあるドイツテレコムのIndustrial AI Cloud上で、最大512基のNVIDIA B200 GPUを使って行われました。総計約253,000GPU時間で、施設は再生可能エネルギーで稼働していると報告されています。モデルの重みだけでなく、学習・評価コード、データソースごとのトークン数まで記した詳細な一覧もHugging Faceのコレクションなどで公開されており、チームはOpen Source AI Definition 1.0を満たすとしています。学習データの約99パーセントは第三者が独立に再構築可能とされる一方、モデル自体の正式なライセンスは未確定です(要確認)。
今後の動き:欧州発オープンモデルの産業応用フェーズへ
コンソーシアムは次のフェーズとして、技術文書の処理、コード生成、エージェント型システムといった産業応用でモデルを検証するパートナー企業を募集しています。参加機関にはフラウンホーファー研究所(IAIS・IIS)、ドイツ人工知能研究センター(DFKI)、ダルムシュタット工科大学などが名を連ねており、ドイツ連邦経済エネルギー省の資金提供を受けた国家プロジェクトとしての性格が濃い取り組みです。
注目すべきは、多言語を広くカバーするEuroLLMやTeukenと、性能最優先の国際的なオープンウェイトモデルの「中間」を狙うという立ち位置です。特定の言語に深く最適化した中規模オープンモデルという路線が成果を出したことで、同様の「自国語特化オープンモデル」の動きが他の言語圏に広がる可能性があります。日本でも国産LLM開発が続いていますが、学習データの構成比・除外したデータソースまで文書化するSoofi Sの徹底したオープンネスは、透明性の面でひとつの基準になりそうです。
まとめ
Soofi Sは、ドイツ語比率を高めた27兆トークンの学習と省リソースなハイブリッド構成で、完全オープンモデルの独英ベンチマーク首位を取った316億パラメータのLLMです。性能・透明性・主権インフラの3点を同時に示した事例として、欧州発オープンAIの現在地を知るうえで押さえておきたい発表です。
参考文献
- The Decoder: German AI consortium releases Soofi S, an open 30B model that tops benchmarks in both English and German
- Soofi 公式サイト: Soofi S 30B-A3B
- Soofi Project: Pretraining Tech Report(Hugging Face)
- Soofi Project: Soofi S モデルコレクション(Hugging Face)
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。