モデルコンテキストプロトコル(MCP)とは、AIモデルが外部のツールやデータに安全につながるための共通規格のことです。そのMCPの最新仕様が2026年7月28日に確定し、公開以来で最大の刷新となります。目玉はサーバー側の「ステートレス化」で、これまで大規模なAIエージェント連携を難しくしていた仕組みが取り除かれます。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、2023年から生成AI導入支援を提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、EC事業者の視点も交えて解説します。

何が起きたか|MCPが「ステートレス化」で大規模運用向きに
結論から言うと、MCPの最新版「2026-07-28」は、公開以来で最大の改訂です。TechCrunchによると、この新仕様は7月28日に確定し、一般の利用者には気づかれにくいものの、AI連携の土台を大きく変えるとされています。
MCPは、エンジニアが接続ごとに専用のつなぎ込みを作らなくても、AIがカレンダーやデータベース、社内ツールに安全に接続できるようにするための「配管」にあたる規格です。2024年にAnthropicが公開して以来、生成AIが外部のデータや機能を扱う際の事実上の標準になってきました。
今回の目玉は、サーバー側を「ステートレス(状態を持たない)」にする変更です。MCP公式ブログのリリース候補の告知によると、接続の最初に必要だった「握手(ハンドシェイク)」と、会話を識別するための「セッションID」が廃止されます。これにより、どのリクエストもどのサーバーでも処理できるようになり、特定のサーバーに接続を固定しておく必要がなくなります。結果として、ごく普通のラウンドロビン方式の負荷分散だけで大規模に運用できるようになり、維持も理屈のうえでは安く済むようになります。
なぜ重要か|エージェント連携の「見えない壁」が下がる
重要なのは、これまでセッション管理の負担が、企業による本格的なMCP連携の普及を妨げる一因になっていたからです。
MCPのインフラを手がけるArcadeのNate Barbettiniは、TechCrunch経由で次のように説明しています。「今の仕組みは、あるサーバーがあなたを覚えている前提になっている」。しかし実際の企業は、アクセスを多数のサーバーに分散させており、それぞれのサーバーは既定では互いのセッション情報を知りません。そのため従来のMCPサーバーは「どのリクエストが誰のものか」を管理するだけで余計な負担を強いられ、負荷分散の仕組みとも相性が悪い状態でした。この負担こそ、話題の割に大規模な自社MCP連携がなかなか広がらなかった理由の一つだと指摘されています。
新仕様では、状態管理をプロトコル任せにせず、必要なら「カゴのID(basket_id)」のような明示的な識別子をツールが発行し、AIが次の呼び出しに引き継ぐ形をとります。これは通常のWeb APIと同じ発想で、状態をAIから見える形で扱えるようになります。まさにECの買い物カゴを思い浮かべると分かりやすく、EC×AIとの相性の良さがうかがえます。
刷新はステートレス化だけではありません。サーバーが画面(UI)を提供できる「MCP Apps」と、時間のかかる処理を扱う「Tasks」が正式な拡張機能になり、認可の仕組みもOAuthやOpenID Connectに近い形へと強化されます。さらに、機能を廃止する際は最低12か月の猶予を設ける正式な廃止ポリシーも導入され、いちど作った連携が長く使える土台づくりが進みます。
今後の動き|EC×AIの「配管」として要注目
今後、MCPは普通のWebサーバーと同じ感覚で運用できるようになります。リリース候補は5月に確定済みで、正式版が7月28日に公開され、主要なSDKは約10週間の検証期間内での対応が見込まれています。派手なモデル発表の裏で、AIを実務に載せるための土台が静かに整いつつあります。
EC事業者にとっての意味も見えてきます。MCPは、AIエージェントが在庫や注文、カートといった店舗のシステムに接続するための「配管」です。ステートレス化によって大規模な自社MCPサーバーの提供が現実的になれば、AIに自社データを安全に開くときの標準になる可能性があります。実際、TechCrunchの別報道ではXが自社をAIツールから使いやすくするMCPサーバーを提供しており、外部サービスがMCP対応を進める流れが出ています(各EC事業者の具体的な対応時期は要確認)。
関連する動きとして、AIエージェント同士の商取引を想定したユニバーサル・コマース・プロトコル(UCP)やエージェント決済プロトコル(AP2)、AIエージェントをオープンなインターネットで動かす構想も進んでいます。MCPはその土台にあたる規格として、あわせて押さえておきたいところです。
まとめ
MCPの2026-07-28仕様は、ステートレス化を軸に、公開以来で最大の刷新となります。派手なモデル発表とは違って目立ちませんが、AIが外部とつながる「配管」を、大規模運用に耐える形へと整える重要な一歩です。モデルの進化に比べてインフラ整備は地味で時間もかかりますが、着実に前進しています。EC×AIの実装を見据える立場からも、MCPの動向は継続して注視する価値があります。
参考文献
- TechCrunch — AI’s most important protocol is getting a little bit easier to use(Russell Brandom)
- Model Context Protocol Blog — The 2026-07-28 MCP Specification Release Candidate
- Arcade — MCP going stateless(Nate Barbettini)
- Model Context Protocol 公式ドキュメント
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。