ChatGPTのメニューに、突然「サイト」という項目が増えていることに気づいた人も多いのではないでしょうか。
この「サイト」は、Webサイトを検索するための機能ではありません。
ChatGPTとの会話だけで、Webサイトやダッシュボード、計算ツール、社内ポータルなどを作り、そのままURLで公開できる新機能です。
これまでのChatGPTは、文章や画像、プログラムを「作ってもらう」ことが中心でした。
しかしChatGPT Sitesでは、作ったプログラムを別のサーバーにアップロードしたり、レンタルサーバーを契約したりしなくても、ChatGPT内で作成、確認、修正、公開まで完結します。
EC事業者にとっても、広告分析ダッシュボード、利益シミュレーター、商品発売カレンダー、社内マニュアルなどを、これまでより圧倒的に短い時間で作れる可能性があります。
この記事では、ChatGPTの「サイト」とは何なのか、何ができるのか、EC業務でどう活用できるのかを分かりやすく解説します。
ChatGPTの「サイト(Sites)」とは
ChatGPT Sitesは、ChatGPT上でWebサイトや軽量なWebアプリを作成し、そのまま公開・共有できる機能です。
OpenAIは2026年7月9日、ChatGPT Sitesをパブリックベータとして発表しました。ダッシュボード、プロジェクト管理ツール、発売カレンダー、プロトタイプ、社内ポータル、レポートなどを、ChatGPTから作成できると説明しています。
一言で表すなら、次のような機能です。
ChatGPTがWebサイトを作るだけでなく、公開するためのサーバーまで用意してくれる機能
通常、Webサイトを公開するには、次のような作業が必要です。
- HTMLやJavaScriptなどでサイトを作る
- サーバーやホスティングサービスを契約する
- ファイルをアップロードする
- ドメインやSSLを設定する
- 修正するたびに再び公開作業を行う
ChatGPT Sitesでは、これらの多くをChatGPT側が処理します。
例えば、次のように依頼します。
楽天RPP広告の実績を確認できるダッシュボードを作ってください。
商品別の広告費、売上、ROAS、CPC、CVRを表示し、前週との比較ができるようにしてください。
するとChatGPTがサイトを作成し、プレビューを表示します。
その後も、
ROASが300%未満の商品を赤く表示して
スマートフォンでも見やすくして
商品管理番号で検索できるようにして
と会話形式で修正できます。
完成後は、公開範囲を設定してURLを発行できます。
ChatGPT Sitesは、単なるホームページ作成機能ではない
ChatGPT Sitesという名前から、会社案内や店舗のホームページを作る機能を想像するかもしれません。
もちろん、ランディングページや会社紹介サイトを作ることもできます。
しかし、この機能の本当の価値は、入力や計算、検索、絞り込み、データ保存などができる「動くWebサイト」を作れることにあります。
例えば、次のようなものです。
- 数値を入力すると利益が計算されるシミュレーター
- CSVを読み込んで広告実績を表示するダッシュボード
- 担当者や進捗状況を変更できるプロジェクト管理画面
- 条件に回答すると商品を提案する診断コンテンツ
- 社員ごとに必要な情報を表示する社内ポータル
- ファイルや画像をアップロードできる管理ツール
OpenAIの公式資料でも、Sitesにはホスティングだけでなく、アクセス制御、ストレージ、データベース機能が含まれるとされています。
保存が必要なデータにはリレーショナルデータベース、画像や文書などのファイルにはオブジェクトストレージを利用できます。公開サイトに「ChatGPTでログイン」を追加し、ユーザーごとにデータを保存することも可能です。
つまり、ChatGPT Sitesは単なる「AIホームページ制作ツール」ではありません。
小規模な業務システムやWebアプリまで、ChatGPTとの会話で作れる機能と考えた方が正確です。
Chat、Work、Codex、Sitesの違い
現在のChatGPTには、Chat、Work、Codex、Sitesという複数の機能があります。
違いが分かりにくいため、簡単に整理します。
| 機能 | 主な役割 |
|---|---|
| Chat | 質問、相談、文章作成、アイデア出し |
| Work | 調査や分析を行い、資料や成果物を完成させる |
| Codex | プログラムやシステムを開発する |
| Sites | 作成したWebサイトやWebアプリを保存・公開する |
Sitesは、Chatの代わりになる機能ではありません。
WorkやCodexで作ったものを、実際に他人が使えるWebサイトとして公開するための場所です。
Web版ではWorkから、デスクトップアプリではWorkまたはCodexからSiteを作成できます。OpenAIは、Chatを日常的な質問、Workを長い工程を伴う仕事、Codexをソフトウェア開発向けとして位置づけています。
ざっくり表現すると、
- Chatは「相談する場所」
- Workは「仕事を任せる場所」
- Codexは「システムを作る場所」
- Sitesは「完成したものを公開する場所」
です。
ChatGPT Sitesの使い方
ChatGPT Sitesを使う基本的な流れは次のとおりです。
1.WorkまたはCodexを開く
Web版ChatGPTでは「Work」を選択します。
デスクトップアプリでは「Work」または「Codex」から作成できます。
通常のチャット画面ではなく、Webサイトや成果物の作成に対応したモードを利用します。
2.作りたいサイトを文章で説明する
プロンプトの中に「Webサイトを作って」と書くか、@Sitesを指定します。
例えば次のように依頼します。
@Sites
EC事業者向けの粗利益シミュレーターを作ってください。
商品原価、販売価格、送料、モール手数料、広告費率を入力すると、
1件あたりの粗利益と粗利率が表示されるようにしてください。
スマートフォンでも使いやすいデザインにしてください。
対象ユーザー、目的、必要な機能、使用するデータを具体的に伝えるほど、最初の完成度が高くなります。
3.プレビューを確認する
ChatGPTがサイトを作成すると、非公開のプレビューが表示されます。
ここで、文章、デザイン、計算結果、ボタン、入力フォームなどを確認します。
4.会話で修正する
修正もコードを書く必要はありません。
計算結果をもっと大きく表示してください。
粗利益がマイナスの場合は警告を表示してください。
楽天、Amazon、自社ECで手数料率を切り替えられるようにしてください。
このように指示すると、ChatGPTがサイトを修正します。
5.公開範囲を決めて公開する
完成後、共有範囲を設定します。
アカウントやワークスペースの設定によって、次のような公開方法があります。
- 自分と管理者だけ
- 指定したユーザーやグループ
- ワークスペース内の全員
- インターネット上の全員
公開するとURLが発行され、他の人がブラウザから利用できるようになります。対応しているアカウントでは、所有している独自ドメインをDNS設定によって接続することもできます。
ChatGPT Sitesでできること
Webサイトやランディングページの作成
商品紹介ページ、サービス紹介サイト、イベント案内ページ、採用ページなどを作れます。
文章だけでなく、レイアウト、ボタン、フォーム、ナビゲーションなどもまとめて作成できます。
ダッシュボードの作成
CSVや表形式のデータを使い、売上や広告実績をグラフや表で表示できます。
検索、並べ替え、絞り込み、期間比較などを組み込むことも可能です。
計算ツールの作成
入力した数値をもとに結果を表示するシミュレーターを作れます。
粗利益計算、広告予算計算、送料比較、値引き率計算、発注数計算など、EC業務との相性が非常に良い機能です。
社内ポータルの作成
社内マニュアル、担当者一覧、プロジェクトの進捗、会議資料、重要リンクなどを1つのページにまとめられます。
公開範囲を社内や特定メンバーだけに制限することもできます。
データやファイルの保存
必要に応じて、入力データやユーザーの進捗、アップロードされた画像・文書などを保存できます。
単なる一時的なWebページではなく、継続して使う小規模な業務アプリも作れます。
アクセス解析
Sitesにはアクセス解析機能が用意されており、別途アクセス解析用のSDKを追加しなくても、ユニーク訪問者数やページビュー、その推移を確認できます。
なお、公式資料では、現時点のアクセス解析機能はEnterpriseワークスペース以外のSitesで利用できると説明されています。
EC事業者におすすめのChatGPT Sites活用例
ChatGPT Sitesは、ECサイトそのものを作るよりも、EC運営を支えるツールを作る用途に向いています。
1.楽天RPP広告ダッシュボード
楽天RPP広告のCSVをアップロードし、次の数値を一覧表示します。
- 広告費
- 広告経由売上
- ROAS
- CPC
- CTR
- CVR
- 注文件数
- 前週比
- 前月比
「ROASが低い商品」「広告費が急増した商品」「クリックは多いが売れていない商品」を自動で抽出する画面も作れます。
担当者がExcelを加工しなくても、広告改善の対象をすぐに確認できるようになります。
2.商品別の利益シミュレーター
販売価格、原価、送料、決済手数料、モール手数料、広告費を入力すると、利益を計算するツールです。
セールやクーポンを実施した場合の利益も比較できます。
例えば、
- 10%OFFにした場合
- ポイント10倍にした場合
- 送料無料にした場合
- 広告費率が15%になった場合
といった条件を切り替えながら、利益への影響を確認できます。
3.商品発売・販促カレンダー
楽天スーパーSALE、Amazonプライムデー、Yahoo!ショッピングのキャンペーン、自社ECの販促予定などをまとめます。
各施策に対して、
- 担当者
- 商品選定
- ページ制作
- 広告設定
- メルマガ
- 在庫準備
- 締切
- 進捗状況
を表示すれば、ECチーム向けの発売管理ツールになります。
4.クライアント向けレポートサイト
ECコンサルティング会社であれば、クライアントごとの月次レポートをSite化できます。
PDFを毎月作り直すのではなく、売上推移、広告実績、検索順位、課題、次月の施策を1つのページにまとめます。
公開範囲を限定すれば、クライアント専用の報告ポータルとして使えます。
5.商品診断・おすすめツール
利用目的や悩み、予算、サイズなどの質問に回答してもらい、条件に合う商品を提示する診断コンテンツを作れます。
例えば、
- ゴルフ用品診断
- ギフト商品診断
- 化粧品タイプ診断
- ダンボールサイズ診断
- 家具サイズ診断
- 法人向けプラン診断
などです。
診断や商品比較まではChatGPT Sitesで行い、購入時には楽天市場、Amazon、Shopifyなどの既存ECサイトへ移動してもらう形が現実的です。
6.社内用の商品登録支援ツール
商品情報を入力すると、次の内容を生成・整理するツールも作れます。
- 楽天の商品名
- キャッチコピー
- 商品説明文
- Amazonの商品タイトル
- 箇条書き
- 検索キーワード
- メルマガ文章
- SNS投稿案
ただし、生成AIを直接動かす部分にはAPIや外部サービスとの接続が必要になる場合があります。
ECサイトそのものをChatGPT Sitesで作れるのか
商品を紹介するサイトやランディングページは作れます。
しかし、楽天市場、Amazon、Shopifyの代わりになる本格的なECサイトとして利用するのは、現時点ではおすすめできません。
OpenAIはChatGPT Sitesについて、決済カード情報の処理や金融取引を行う用途を禁止しています。
そのため、ChatGPT Sites上でクレジットカード決済を行い、注文を完了させるような使い方はできません。
また、Sitesは現在パブリックベータであり、利用量にはプランごとの上限があります。一部のフレームワーク、プライベートネットワーク、バックグラウンドサービス、ホスティング構成もサポートされていません。
EC事業者は、次のように使い分けるのがよいでしょう。
| 用途 | 推奨サービス |
|---|---|
| 商品販売・決済・注文管理 | Shopify、楽天市場、Amazonなど |
| オウンドメディア・SEO記事 | WordPressなど |
| 広告分析ダッシュボード | ChatGPT Sites |
| 利益計算・商品診断 | ChatGPT Sites |
| 社内ポータル・進捗管理 | ChatGPT Sites |
| 新サービスの試作品 | ChatGPT Sites |
ChatGPT Sitesは既存のECシステムを置き換えるものではなく、既存システムの周辺にある業務を素早くツール化するものと考えると分かりやすいでしょう。
データは自動的に最新になるのか
ここは注意が必要です。
現時点では、ChatGPT Sites自体が楽天市場やAmazon、Googleスプレッドシートなどのデータと常時接続し、リアルタイムで更新し続けるわけではありません。
OpenAI Academyでは、Sitesは現在、ライブデータソースへ直接接続できないと説明されています。情報を更新したい場合は、別の自動化処理で最新情報を取得し、その内容を確認してSiteを更新する形になります。
例えば、楽天RPPのダッシュボードを作ったとしても、広告データが自動で毎日反映されるとは限りません。
次のような運用が必要です。
- CSVを定期的に取得する
- ChatGPTのScheduled Tasksや外部ツールでデータを整理する
- 最新データを確認する
- Siteを更新・再公開する
将来的には、プラグインやAPI、Scheduled Tasksとの連携によって、より自動化された運用が増えていくと考えられます。
ChatGPT Sitesを使える料金プラン
2026年7月21日時点で、ChatGPT Sitesはパブリックベータとして提供されています。
公式ヘルプでは、FreeとGoを除く有料プランが対象です。ただし段階的に提供されており、Pro、Pro Lite、Enterprise、Eduから先に展開され、PlusとBusinessにも順次提供されています。アカウントによっては、まだ表示されていない場合があります。
また、パブリックベータ期間中は、プランごとに利用量の上限があります。
上限に達した場合、次のような制限が発生する可能性があります。
- 新しいSiteを作成できない
- ストレージを追加できない
- アクセスの多いSiteを公開し続けられない
既存Siteの編集や管理は可能ですが、本格的な商用サービスとして大量のアクセスを集める用途には、まだ慎重な判断が必要です。
ChatGPT Sitesを作るときのプロンプト例
EC事業者が最初に試すなら、次のようなプロンプトがおすすめです。
楽天RPP広告ダッシュボード
@Sites
楽天RPP広告を分析するダッシュボードを作ってください。
対象ユーザーはECの広告運用担当者です。
CSVをアップロードすると、商品管理番号ごとに以下を表示してください。
・広告費
・売上
・ROAS
・クリック数
・CPC
・CTR
・CVR
・注文件数
ROASが300%未満の商品を目立たせてください。
前週と比較して数値が悪化した商品も一覧表示してください。
パソコンとスマートフォンの両方で見やすいデザインにしてください。
粗利益シミュレーター
@Sites
EC商品の粗利益を計算するシミュレーターを作ってください。
入力項目は以下です。
・販売価格
・商品原価
・送料
・梱包費
・モール手数料率
・決済手数料率
・広告費率
・ポイント原資率
・クーポン金額
計算結果として以下を表示してください。
・1件あたりの粗利益
・粗利率
・損益分岐となる広告費率
・損益分岐となる販売価格
粗利益がマイナスの場合は警告を表示してください。
商品発売管理サイト
@Sites
ECチーム向けの商品発売管理サイトを作ってください。
商品ごとに以下を登録できるようにしてください。
・商品名
・商品管理番号
・発売日
・担当者
・販売チャネル
・商品ページ制作状況
・画像制作状況
・広告設定状況
・在庫準備状況
・現在の課題
発売日、担当者、進捗状況で絞り込めるようにしてください。
登録内容は次回アクセス時も残るようにしてください。
ChatGPT Sitesを公開する前の注意点
ChatGPT Sitesは簡単に公開できるからこそ、公開前の確認が重要です。
機密情報を公開しない
作成時の会話、アップロードしたファイル、サイト内の文章に、次の情報が入っていないか確認しましょう。
- 顧客情報
- 社内の売上情報
- 原価情報
- APIキー
- パスワード
- 個人情報
- 未公開の商品情報
- 他社から提供された機密資料
APIキーなどの秘密情報は、プロンプトやファイルに直接書かず、Siteの設定画面から環境変数として管理する必要があります。
公開範囲を確認する
「ワークスペース内だけ」のつもりが、「インターネット上の全員」に設定されていないか確認します。
一般公開する場合は、ログアウトした状態や別のブラウザからアクセスし、実際の訪問者に何が表示されるかを確認しましょう。
フォームと個人情報に注意する
問い合わせフォーム、自由入力欄、ログイン機能などを設置する場合、利用者の個人情報を取得する可能性があります。
公開前には、取得する情報、利用目的、保存方法、プライバシーポリシーなどを確認する必要があります。サイトの内容や法令への対応は、作成者側の責任となります。
公開前にバージョンを保存する
Sitesで発行されるデプロイURLは、すべて本番用のURLです。
修正内容を確認せずにデプロイすると、利用者にそのまま公開されます。
まずバージョンを保存して内容を確認し、問題がなければ公開する運用が安全です。
まとめ:ChatGPTは「回答するAI」から「使えるものを作るAI」へ
ChatGPT Sitesは、ChatGPTとの会話からWebサイトやWebアプリを作り、そのままURLで公開できる機能です。
重要なのは、単にホームページを作れることではありません。
これまでExcelやスプレッドシート、PDF、社内チャットに分散していた情報を、誰でも使える画面に変えられることが大きな価値です。
EC事業者であれば、まずは次のような小さなツールから始めるのがおすすめです。
- 商品別の利益計算ツール
- RPP広告分析ダッシュボード
- 商品発売管理サイト
- クライアント向け月次レポート
- 社内マニュアル
- 商品診断コンテンツ
一方で、ChatGPT Sitesはまだパブリックベータです。
決済を行う本格的なECサイトや、大量のアクセスを前提とした基幹システムではなく、まずは1つの明確な業務課題を解決する小さなサイトやツールから試すのがよいでしょう。
これまで生成AIは、「文章を書かせる」「質問に答えさせる」という使い方が中心でした。
ChatGPT Sitesの登場によって、生成AIは文章を作るだけでなく、実際に社内や顧客が使う仕組みまで作る存在になりつつあります。

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。