Ask Mikeとは、Michaelsが導入した商品発見のための会話型AI接客のことです。
本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。北米の手芸・クラフト大手Michaels(マイケルズ)が、Google CloudのGemini Enterprise for Customer Experienceで構築した会話型のAI接客「Ask Mike」を2026年5月に公開しました。キーワードで探す従来のサイト内検索ではなく、作りたいものを言葉で伝えると商品を提案する仕組みで、公開から数週間で約7.5万件の会話を集めています。生成AIによる商品発見は、日本のEC事業者にとってもサイト内検索とレコメンドの設計を見直す契機になりそうです。
Ask Mikeで何が起きたか、Gemini Enterpriseの生成AI接客
MichaelsのAI接客「Ask Mike」は、キーワード検索を会話に置き換えて商品発見を後押しする仕組みです。買い物客は「子どもの誕生日会を計画したい」「手作りカーテン用の生地がほしい」といった曖昧な要望を普通の言葉で伝えるだけで、Michaelsの品ぞろえから絞り込んだ提案を受け取れます。パソコン、モバイルブラウザ、iOSとAndroidのアプリで利用できます。
公開元のGoogle Cloudによると、2026年5月の公開から数週間で会話数は約7.5万件に達し、そのうち6割超が商品発見に関する対話でした。流通メディアのChain Store Ageは、Michaelsが構想から本番稼働までを約6週間で立ち上げた点を伝えています。長年Google Cloudを使ってきた既存基盤の上に載せたことが、この短期構築を可能にした背景です。
Google CloudのPaul Tepfenhartは「AIを買い物体験の中心に据える動きであり、サービス窓口としてだけでなく、発見とコンバージョンを本当に牽引するものだ」と述べています。実際にコンバージョンへどれだけ効いたかについて、流通専門メディアのModern Retailは、Ask Mikeが従来のサイト内検索と比べてコンバージョン率を高めたと報じています。ただし具体的な数値はMichaels側の発表に基づくもので、第三者による検証は公開されていないため、現時点では参考値として捉えるのが妥当です(要確認)。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
この事例が日本のEC事業者に示すのは、サイト内検索を「言葉で探す」前提に組み替えるという方向性です。楽天市場やAmazon、Shopify、Yahoo!ショッピングのいずれで運営していても、検索とレコメンドは売上に直結する導線であり、生成AIはその設計を大きく変え得ます。
論点の1つ目は、検索を意図データの入り口として捉え直すことです。従来の検索ログは入力された単語しか教えてくれませんが、会話型のやり取りは「何を作りたいか」「どんな場面で使うか」というプロジェクト全体の文脈を残します。Ask Mikeで6割が商品発見に使われた事実は、買い物客が「商品名を知らないが作りたいものは決まっている」状態で来店している証拠であり、これは日本の手芸・食品・DIY・ギフトなど発想起点で買う商材に共通する課題です。
2つ目は、まず標準搭載のAI機能を使い切ることです。ShopifyのセマンティックAI検索やレコメンド、楽天やAmazonの検索・関連商品表示など、既存プラットフォームにも会話や意図をくむ機能は増えています。Michaelsが6週間で立ち上げられたのは、ゼロから基盤を作らず既存のクラウド資産に載せたからでした。日本の中小事業者も、自前開発の前に手元の標準機能でどこまで発見体験を改善できるかを検証するのが現実的です。
3つ目は、会話や検索のログを商品企画と在庫、特集ページに還元することです。「どんな言葉で探されたか」は需要のシグナルそのものであり、ゼロ件ヒットの検索語や頻出する相談内容は、次の仕入れや特集タイトル、商品名の付け方に直結します。AI接客を導入して終わりにせず、対話ログを週次で読み解く運用まで含めて設計することが差になります。
今後の展望と初動アクション
まず取り組むべきは、自店の「探しにくさ」を1つ特定して小さく検証することです。Michaelsは今後、商品詳細ページにAIによる商品概要や文脈に応じた質問候補を組み込む計画を示しており、AI接客は検索窓の中だけでなく購買プロセス全体へ広がっていきます。
具体的な初動としては、次の4点が着手しやすい順番です。第一に、サイト内検索のゼロ件ヒット率と検索離脱率を計測し、どのカテゴリで「見つけられずに離脱」が起きているかを可視化します。第二に、モールやカートに標準搭載されたAI検索・レコメンド機能を有効化し、導入前後の回遊率とコンバージョン率を比べます。第三に、検索ログと問い合わせ内容を毎週見直し、頻出ワードを商品名や特集に反映します。第四に、単一のAIベンダーに依存しすぎないよう用途ごとにモデルを使い分け、氏名や住所を含む顧客データをどのAIに渡してよいかの線引きを先に決めておきます。
いきなり大型のAI開発に踏み込む必要はありません。標準機能の活用とログ運用という足元の改善だけでも、発見から購入までの体験は着実に変えられます。
まとめ
生成AIによる接客は、問い合わせに答える「サービス窓口」から、商品発見と購買を生む「入口」へと役割を変えつつあります。Michaelsの事例が示すのは、既存のクラウド基盤を土台にすれば短期間でも実装できるという現実です。日本のEC事業者は、大型投資よりも標準機能の活用と会話ログの読み解きから始めるのが、無理なく成果につながる道筋だといえます。
参考文献
- Michaels® Unveils ‘Ask Mike’ AI Assistant, Built With Google Cloud’s Gemini Enterprise(PR Newswire)
- Michaels Unveils ‘Ask Mike’ AI Assistant(Google Cloud Press Corner)
- Michaels teams with Google on new ‘Ask Mike’ AI shopping assistant(Chain Store Age)
- Michaels Launches Ask Mike AI Shopping Assistant Built With Google Cloud Gemini(Pulse 2.0)
あわせて、AIショッピングエージェントへのEC対応、サイト内レコメンドのAI実装、AI経由の流入がECファネルを変える動きもご覧ください。
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。