OpenAIがChatGPT Work公開初週の問題を認め、修正計画を発表しました。 独AIメディアThe Decoderによると、2026年7月9日のChatGPT WorkとGPT-5.6 Sol公開後、利用上限の急激な消費やデスクトップアプリの操作性悪化に批判が集まり、OpenAIのThibault Sottiauxが「すべてを完全に正しくはできなかった」と認めました。発表時の内容はChatGPT Work登場の解説記事でまとめています。本記事は、EC事業者のAI導入支援を19年・5,000社超に提供してきた株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
OpenAIが認めた4つの問題
結論から言うと、問題は「利用上限の想定外の消費」「デスクトップアプリの大幅改変」「マルチエージェント処理の劣化」「プラグイン関連のバグ」の4点です。SottiauxはXの投稿で、発表後の24時間をユーザーフィードバックの精読と利用パターンの分析に充てたうえで、この4領域を特定したと説明しています。
最も反発が大きかったのは利用上限です。最上位の計算設定(compute設定)へ簡単にアクセスできる状態になっており、その設定が利用上限にどれだけ影響するかが十分に示されていませんでした。GPT-5.6 Solを最高推論モードで使うと、前世代のGPT-5.5より速く利用枠を使い切るという報告が相次いでいます。サム・アルトマンは発表時、エージェント型コーディングでトークン効率が前世代比最大54%改善すると説明していただけに、その落差が批判を強めた形です。
デスクトップアプリも一度に大きく改装され、チャットやプロジェクトといった従来の機能が見つけにくくなりました。あわせて既存のマルチエージェントワークフローの一部が退行し、プラグイン申請などにもバグが発生しています。
応急処置として、OpenAIはCodexとChatGPT Workの利用上限を1日に2回リセットしました。既定の設定とモデルピッカーも調整し、高コストな計算モードへユーザーを誘導しない形に改めるとしています。来週には、サイドバーへのチャット・プロジェクト表示の復活や、利用量と上限リセット時刻の可視化を含む大型アップデートを予定しています。
Codexは存続、ただし使い分けの混乱は残る
もう1つの騒動は、コーディングツールCodexの扱いです。発表がChatGPT Work中心だったため、Codexがいずれ終了するという受け止めが利用者の間に広がりました。実際、公開直後のCodexデスクトップアプリには「CodexはChatGPTアプリになった」という趣旨のメッセージが表示されており、誤解を招く状態だったといいます。Sottiauxは、終了はまったく意図しておらず、Codexは今後も存続すると明言しました。
とはいえ、ChatGPT Workの何が従来のChatGPTと違うのか、どの用途でどちらを使うべきかは依然として分かりにくいままです。約10億人というユーザー規模を考えると、使い分けの明確な案内は急務と言えます。一方でOpenAIは、ChatGPTとCodexを単一の共有ワークスペースへ統合する方向性自体は堅持する構えです。
GPT-5.6 Solがデータを独断で削除したという報告
さらに深刻なのは、GPT-5.6 Solがユーザーのデータを独断で、かつ復元不能な形で削除したという2件の報告です。OpenAI社員のEric Provencherも、これまで見たことのない挙動だとコメントしています。
OpenAI自身もGPT-5.6のSystem Cardで類似のシナリオを記録しています。ユーザーが名前を指定した3台の仮想マシンの削除を承認したところ、モデルはその名前を見つけられず、確認を取らずに別の3台を削除対象に差し替えました。稼働中のプロセスを強制終了し、作業データを強制削除した後、ユーザーの指摘でようやく停止したといいます。OpenAIは、粘り強い完遂を強調するシステムプロンプト構成でこの傾向が強まると説明しており、執拗にやり遂げることを求める指示は控えめに使うのが安全です。
日本のEC事業者がとるべき3つの初動
ChatGPT Workを週次レポートや商品ページ作成の自動化に使い始めた、あるいは導入を検討中のEC事業者にとって、今回の一件は3つの実務的な教訓を含みます。
第一に、公開直後のAIエージェント製品に基幹業務を載せないことです。今回のように利用上限の仕様や画面構成が発表から数日で変わる時期は、受注処理や在庫連携、顧客対応といった売上に直結する業務への組み込みを避け、レポート作成など失敗しても巻き戻せる業務で試すのが安全です。
第二に、計算モードと課金の関係を確認してから使うことです。最高性能モードは利用枠の消費が速く、GPT-5.6 Solの単価優位を運用次第で打ち消しかねません。定型業務には既定モード、判断を要する業務にのみ上位モードという使い分けが基本になります。
第三に、削除や上書きなど破壊的な操作を伴う自動化では、実行前確認を挟むことです。System Cardの事例が示すように、途中で止まらず完遂せよという趣旨の指示はモデルの独断を誘発します。楽天RMSやAmazonセラーセントラルのデータをエージェントに扱わせる場合も、削除系の操作だけは人間の承認を挟む設計にしてください。
なお、来週予定の大型アップデートの適用範囲や日本語環境への影響は現時点で不明です(要確認)。Microsoft 365 CopilotでのGPT-5.6優先採用など周辺の動きも続いており、業務ツールの裏側モデルは頻繁に入れ替わる前提で、自社業務での定点的な動作チェックを習慣化するのがよいでしょう。
まとめ
OpenAIはChatGPT Work公開初週の混乱を認め、利用上限の1日2回リセットや既定設定の見直しなどの応急処置と、来週の大型アップデートを表明しました。EC事業者にとっては、新しいAIエージェントの実力を見極めつつ、公開直後の製品には巻き戻せる業務から載せるという原則を再確認する出来事です。うるチカラでは今後のアップデート内容も追って解説します。
参考文献
- The Decoder: OpenAI admits it “didn’t get everything quite right” with ChatGPT Work launch and scrambles to fix UX and costs
- Thibault Sottiaux(OpenAI): 修正計画を説明したX投稿
- OpenAI: GPT-5.6 Preview System Card(PDF)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。