PwCの報告書4本に、AIが作った実在しない出典が見つかりました。
AI検出ツールを開発するGPTZeroは2026年7月28日、PwC中東法人が2024年から2026年に公開した4本のレポートに、実在しない論文や内容の合わない参照先が含まれていたとする調査を公開しました。うち1本は「84%の確率で全文AI生成」と判定されています。大手コンサルの不祥事として読み流せる話ではありません。商品説明やブログ記事を生成AIで量産し始めた日本のEC事業者にとって、AI幻覚出典は明日にも自社サイトで起きうる事故だからです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
何が起きたか:4本のレポートと111件の参照先
結論から言えば、問題の中心は「文章がAIっぽいこと」ではなく、根拠として並べられた参照先が機能していなかったことです。GPTZeroが調べたのはPwC中東が公開した4本で、参照先はそれぞれ17件、43件、19件、32件の計111件でした。AI検出スコアはレポートごとに50%から100%まで幅がありますが、共通していたのは、引用先を開いても本文の主張がそこに書かれていないという状態です。
最も問題視されたのが2025年の「Transforming Governance」です。このレポートは「Citizen Pulse」という自社フレームワークを、デンマーク、サウジアラビア、米国、オーストラリアの政府が採用していると記述しました。ところがGPTZeroが確認したところ、Citizen Pulseの存在を裏づける公開情報はこのレポート以外に見当たらず、根拠として貼られていたリンクはデンマークの行政ポータルや豪myGovのトップページで、いずれもその名称に触れていませんでした。製品そのものと4カ国との取引実績が同時に創作された形です。

生成AI利用の痕跡も残っていました。EV充電インフラを扱ったレポートでは、参照先URLに「utm_source=chatgpt.com」というパラメータがそのまま混入していたほか、リヤドの大気質を扱った学術論文が実在しないことも確認されています。The DecoderやIrish Timesも同調査を報じており、GPTZeroの一連の調査でDeloitte、EY、KPMGに続き、いわゆるビッグ4の4社すべてが同種の指摘を受けたことになります。なおPwC側の公式見解は本稿執筆時点で確認できていないため、要確認とします。
EC事業者に効いてくる論点:誤情報はAI検索が拡散する
この調査で日本のEC事業者が本当に注目すべきは、GPTZeroが「井戸に毒を入れる」と表現したパートです。同社が実験したところ、Perplexity、ChatGPT、Geminiの3つのAIがいずれも、問題のレポートに書かれていた虚偽の主張をそのまま回答として再生産しました。誤情報は人間に読まれる必要すらなく、クロールされて索引化されるだけで拡散します。

うるチカラでも米検索の43%にAI要約が到達した件を取り上げましたが、自社の商品ページやコラムは、いまやAIに読まれる前提で書く時代に入っています。ここでAIが作った数字を検証せずに載せると、二重の損失が発生します。ひとつは、誤った数値が自社発の情報としてAIに引用され続けること。もうひとつは、楽天市場・Amazon・Shopifyのいずれで販売していても、根拠のない効果表示や「業界No.1」といった表現が景品表示法や薬機法の問題に直結することです。AIが自信満々に出してきた比較データほど、出典の実在確認が必要になります。
明日からの初動:出典検証3手順と2つの罠
第一に、数字と出典を必ずセットで台帳化します。スプレッドシート1枚で構いません。掲載した数値、取得元URL、取得日、確認者の4項目を残すだけで、後から検証できる状態になります。
第二に、リンク先を開いて本文の文言がそこに載っているかを実際に検索して確かめます。今回のケースでほとんどを占めたのは、リンクは開けるがその主張が書かれていないという型でした。あわせて、公開前の原稿に「utm_source=chatgpt.com」のような文字列が残っていないかを一括検索しておくと、AI経由のURLをそのまま貼った事故を機械的に潰せます。
第三に、運用ルールとして「AIには出典を貼らせない」方針へ切り替えます。文章構成やリライトはAIに任せ、数字と一次情報のURLだけは人が一次ソースから入れる分業にすると、検証の対象が絞られて現実的な工数に収まります。
ここで陥りやすい罠が2つあります。ひとつは、リンクが生きているから正しいという思い込みです。今回の指摘の多くは、実在するページが根拠として不適切だったケースでした。もうひとつは、AI検出ツールのスコアを鵜呑みにすることです。GPTZero自身、検証できない引用はすべて疑わしいと判定する設計のため誤検知は多めだと明言しており、判定はあくまで確認の起点として扱うのが妥当です。
まとめ
AI幻覚出典の問題は、生成AIの文章力ではなく、根拠を人が確認する工程が抜け落ちたときに起きます。世界有数のコンサルティング会社でも起きた以上、少人数で記事を回すEC事業者ならなおさらです。数値と出典の台帳化、リンク先の実物確認、AIに出典を作らせない運用。この3つを先に決めてから、生成AIの本格導入を進めることをおすすめします。
参考文献
- GPTZero: Chasing the Hallucinations: PwC report hallucinates product and government customers
- The Decoder: PwC has allegedly published AI-generated reports containing false or fabricated sources
- The Irish Times: PwC published ‘thought leadership’ reports marred by AI hallucinations
- City A.M.: PwC thought leadership reports ‘100 per cent AI generated’
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: GPTZero
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。