Gemini の文章生成シェアが、12パーセントから1.9パーセントへ急落したという計測データが出ました。ただしこれは「Gemini が弱くなった」という話ではありません。同じ月に Google は Gemini アプリの月間10億ユーザーを主張しており、指標が違えば結論も逆になります。EC事業者にとっての本当の論点は、こうした市場シェア報道をどう扱うかです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
Pangram・OpenRouter・Similarweb の3つが同じ方向を指した
結論から書きます。2026年8月12日、The Decoder が、性質の異なる3つのデータソースがそろって Gemini のシェア低下を示したと報じました。
中心になっているのは、AI生成テキスト判定サービスの Pangram が公開したモデル別シェアです。Pangram は提出された文章がどのモデルで書かれたかを判定し、その構成比を集計しています。この集計で OpenAI は計測開始以来すべての月で50パーセント超を維持し、Anthropic は4.3パーセントから14.9パーセントへ伸びました。Anthropic の伸びは技術系・科学系の文章が中心とされています。一方の Gemini は12パーセントから2026年7月には1.9パーセントまで落ち込み、Pangram はこれを「崩壊(collapse)」と表現しました。
同じ傾向は、複数モデルを一括で呼び出せる OpenRouter のランキング にも表れています。さらに Similarweb のデータでは、Google のウェブ側シェアが前月の27パーセントから26.8パーセントへわずかに低下しました。ただしこの数値は1年前には9.4パーセントだったとされており、長期で見れば大きく伸びている点は押さえておく必要があります。

「10億ユーザー」と「1.9%」は矛盾しない
ここが一番おもしろいところです。うるチカラでもGemini アプリの月間10億ユーザー到達を取り上げたばかりですが、その数日後に「シェア1.9パーセント」という真逆に見える数字が出てきました。両者は矛盾していません。測っているものが違うからです。
The Decoder 自身が、それぞれの死角を明記しています。Pangram が測っているのは主に文章作成タスクで、この領域では Gemini はもともと ChatGPT や Claude に後れを取っていました。OpenRouter は開発者が API 経由で使うモデルが対象なので、オープンウェイト系に偏ります。Similarweb はウェブ経由の訪問しか見ておらず、モバイルアプリを勘定に入れていません。そして Google が主張する月間アクティブユーザー数について、The Decoder は「非常に質の低いシグナル」と切り捨てています。Android 端末に標準搭載されていれば、能動的に選ばれなくても数字は積み上がるからです。
つまり同じ「シェア」という言葉でも、文章生成の構成比、API 呼び出し量、ウェブ訪問数、アプリ利用者数という4つのまったく違う母集団が語られています。EC事業者が広告レポートで「インプレッションシェア」と「売上構成比」を混同しないのと同じ話です。なお The Decoder は、この動向が Google DeepMind の組織再編と無関係ではない可能性にも触れていますが、因果関係が示されたわけではありません。
EC事業者が持つべきAI選定の3原則
では、楽天市場や Amazon、Shopify などを運営する現場は、この手のニュースをどう扱えばいいのでしょうか。3つの原則にまとめます。
第一に、シェア報道でツールを決めないことです。商品説明の生成、レビュー返信、広告コピー、問い合わせ一次対応。用途ごとに得意なモデルは変わりますし、Pangram のデータはあくまで「一般的な文章作成」という一領域の話です。自社の型番表記や禁止ワードを含んだ実データで、10件から20件の比較テストを回したほうが、どんな市場調査より確度の高い判断材料になります。この考え方はAIツール選定とベンチマークの読み方でも整理しています。
第二に、乗り換えコストを先に見積もることです。プロンプト資産、社内マニュアル、API を組み込んだ在庫連携やレビュー要約の仕組み。これらはモデルを変えた瞬間に検証やり直しが発生します。シェアが下がったという報道だけで主力ツールを入れ替えると、移行工数のほうが高くつきます。逆に言えば、乗り換えコストを小さく保つ設計をしておけば、市場がどう動いても慌てずに済みます。
第三に、1社に寄せきらないことです。Anthropic が4.3パーセントから14.9パーセントへ伸び、Gemini が10分の1以下になったという事実は、上位モデルの序列が1年どころか数か月で入れ替わる市場だということを示しています。主力を1つ決めたうえで、比較検証用に別系統を1つ触れる状態にしておく。この二段構えが現実的です。
まとめ
Gemini の文章生成シェア1.9パーセントという数字は事実ですが、それは「文章作成という一領域での構成比」に限った事実です。同時期の10億ユーザー主張と並べて読むと、シェア報道が測定対象によっていくらでも姿を変えることがわかります。EC事業者がとるべきスタンスは、順位表を追いかけることではなく、自社の商品データで小さく比較し、乗り換えられる状態を保っておくことです。
参考文献
- The Decoder・Google’s Gemini is losing market share to ChatGPT and Claude according to new market data
- Pangram・Pangram’s model market share
- OpenRouter・Model Rankings(Market share)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。