Anthropicは自社アプリの日次保守をClaude Codeに任せています。
AI開発企業が自社プロダクトの地味な保守作業をAIに丸投げし、その結果を数字で公開しました。数週間で388件のプルリクエストが作られ、そのうち180件、約46パーセントが人間のレビューを経て採用されています。採用率46パーセントという数字は、AIエージェントに定型業務を任せるときの現実的な期待値を考えるうえで、EC事業者にとっても有用な基準になります。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
Claude Codeの日次保守とは何か、何が起きたか
Claude Codeの日次保守とは、AIがソフトウェアの点検と修正を毎日決まった手順で自動実行する運用のことです。The Decoderによると、AnthropicのエンジニアでありClaude Codeの生みの親であるボリス・チェルニーが、LinkedIn上の投稿でこの実験の経過を明かしました。
仕組みはシンプルです。プロジェクト専用のSlackチャンネル(proj-claude-maintains-apps)を用意し、Claude Tagと呼ばれるSlack上のAI経由で、iOS、Android、デスクトップ、ウェブ、コマンドライン、Agent SDKという全プラットフォームに向けて毎日の保守ルーティンを走らせます。Slackから開発作業を呼び出す構成は、Anthropicが公開しているClaude CodeとSlackの連携や公式ドキュメントでも提供されている機能です。
The Decoderが一覧化したルーティンは11種類あります。アプリをシミュレータ上で起動してランダムに操作し、クラッシュを発生させて原因を特定したうえで修正まで作るクラッシュファザー、似ているが微妙に違う実装を見つけて統合を提案する重複統合、到達不能なコードを削除するデッドコード除去、絶対に失敗しないテストを削る無意味テスト除去、不安定なテストを直すフレーキーテスト修正などが並びます。特徴的なのは、疑わしいコードにはいきなり手を入れず、まずログを仕込んで翌日に本当に使われていないかを確認するという慎重な段取りが組み込まれている点です。
チェルニーによれば、指示に凝ったプロンプト設計はしていません。日常の言葉で「iOSとAndroidとデスクトップでクラッシュ調査の日次ルーティンを始めて、モックではなく実アプリを使って、修正付きのプルリクエストを作って」と伝えているだけだといいます。この実験を彼は「うまくいくかもしれないという初期の兆し(early signs of life)」と表現しています。

46パーセントという採用率を日本のEC事業者はどう読むか
結論から言えば、46パーセントは失望する数字ではなく、AIに任せる業務範囲を決めるための設計基準です。裏を返せば半分以上のプルリクエストは採用されなかったわけですが、それでも人間が着手すらしていなかった保守作業が毎日棚卸しされ、180件分の改善が実際に取り込まれています。ゼロだったものが180件になった、という読み方が実務的です。
EC運営の現場に置き換えると、これは商品ページやバックヤードの「誰も手を付けない定型メンテナンス」に重なります。使われなくなったクーポン設定や終了済みキャンペーンのバナーが残っている、同じ内容の説明文が商品ごとに微妙に違う書き方で散らばっている、更新が止まった特集ページからリンク切れが発生している。楽天市場でもAmazonでもShopifyでも、売上に直結しないという理由で後回しにされ続ける作業です。Claude Codeの実験が示したのは、この領域こそAIに毎日回させる価値があるということです。
重要なのは、採用率をKPIとして測る発想です。AIが出した提案のうち何割を人間が採用したかを記録し、採用率が低いルーティンは指示文を翌日調整する。チェルニーのチームも、うまくいかなかったときはルーティン自体を手直しして翌日の精度を上げており、その調整に数日かかることもあると述べています。AIの出力品質を一度きりの評価で判断せず、日次で回しながら育てるという運用設計は、当メディアで解説した複数のAIエージェントを同時に動かすときの3原則とも共通する考え方です。
明日からの初動アクションと今後の展望
第一に、自社の「誰もやらない定型作業」を10個書き出すことです。商品データの表記ゆれ、在庫CSVの整合チェック、使われていないメルマガセグメントの整理など、担当者が頭の中で認識しているだけの作業をリスト化します。ここが日次ルーティン化の候補になります。
第二に、そのうち1つだけを選び、AIには提案までを任せ、実行の可否は人間が判断する形で1週間回してみることです。いきなり全自動にせず、プルリクエストのように「提案と承認を分ける」構造を先に作るのが安全です。監査ログの残し方についてはAI操作ログとコンプライアンスの3論点で整理しています。
第三に、採用率を毎日記録することです。初週は3割を下回っても問題ありません。指示文を1文ずつ具体化していけば数字は動きます。3週間続けて採用率が上がらないルーティンは、AIの能力ではなく作業の切り出し方に原因があると考えたほうが早いです。
今後については、Anthropicがこの種の機械的な変更に対してマージ工程を速める方法を検討していると報じられています。AIが提案する量に人間のレビューが追いつかなくなる構図は、EC事業者がAIに商品説明の改稿を大量に投げたときにも同じ形で起きます。セッションをまたいだ文脈の引き継ぎについてはClaude Codeのクロスセッション機能の3論点も参考になります。
まとめ
Claude Codeによる日次保守は、388件の提案のうち180件が採用されるという実測値を残しました。EC事業者が学ぶべきは全自動化ではなく、提案と承認を分けたうえで採用率を毎日測り、指示文を翌日直すという運用の型です。まずは後回しにしている定型作業を1つ選び、小さく回すところから始めてください。
参考文献
- The Decoder – Claude Code now runs daily maintenance on Anthropic’s software with a 46 percent merge rate
- Boris Cherny – LinkedIn投稿(一次情報)
- Claude by Anthropic – Claude Code and Slack
- Claude Code Docs – Claude Code in Slack
- Claude by Anthropic – Claude in Slack(Claude Tag)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。