米国で即日配送が一斉拡大、日本のEC事業者が今すぐ確認すべき3つの論点

2026年の米国で即日配送が一斉拡大。FedEx SameDay Local、Amazon1時間配送、Sam’s Club6.5万件の実績を整理し、日本のEC事業者が確認すべき在庫配置と着荷精度の3論点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米国では2026年、FedEx・Amazon・Sam’s Clubなど大手が即日配送サービスを相次いで拡大しました。

即日配送とは、注文した当日のうちに商品が届く配送サービスのことです。2026年の米国小売業界では、この即日配送が大手だけの武器ではなくなりつつあります。3月末にFedExが2時間配送に参入し、Amazonは1時間・3時間配送を追加、Sam’s Clubは1時間配送を投入しました。日本のEC事業者にとっても「あす楽」「お急ぎ便」との付き合い方を見直す材料になります。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

倉庫から住宅へ商品を届ける配送スタッフ

2026年の米国で即日配送が一斉に拡大した理由

結論から言えば、2026年に入って即日配送の提供事業者が一気に増えたのは、店舗やマイクロ拠点を使えば大手以外でも当日出荷が成立するようになったからです。物流専門メディアのSupply Chain Diveによると、2026年に入ってからFedExがSameDay Localを発表し、Amazonが1時間・3時間配送を開始、Walmart傘下のSam’s Clubが1時間配送を投入しました。加えてDollar Generalが地方部の当日配送を拡大し、DoorDashはFoot LockerやUrban Outfittersなどとの提携を追加しています。

数字も出はじめています。Sam’s Clubは1時間配送の開始からわずか3週間弱で約6万5,000件を処理したと説明しています。Amazonは2025年に、当日中に届けた商品点数が前年比で約70%増えたと開示しました。DoorDashは2025年第4四半期に、米国の食品・小売カテゴリーで過去最多の新規利用者を獲得したと発表しています。即日配送は「一部の都市部の実験」ではなく、通年の主要チャネルに変わりつつあるという読み方が妥当です。

FedExの動きはとくに示唆的です。Modern Retailによると、FedEx SameDay Localはラストワンマイル企業のOneRailとの提携で、2時間配送または当日中配送を選べる仕組みです。OneRailは1,000社超の配送会社と1,200万人規模のドライバーネットワークを持ち、DoorDashやUberに加えてギグワーカーではない専門配送員も含みます。3PL企業G10 FulfillmentのMark Beckerは、この仕組みを最も積極的に使うのはShopifyの販売事業者だろうと述べています。自社サイトの配送スピードをAmazonの水準に近づけたい事業者にとって、店舗や小規模拠点から直接出せる選択肢が現実的になったということです。

Targetのロゴが入った荷物を車両に積み込む様子

日本のEC事業者にとっての即日配送の論点は3つ

日本のEC事業者が今回の動きから読み取るべき論点は、速度そのものではなく「速度をどこで担保するか」です。日本では楽天市場の「あす楽」やAmazonの「お急ぎ便」が長く標準になってきましたが、米国で起きているのは、モールの配送網に乗るのではなく、自社の店舗・在庫拠点を配送起点に変える動きです。ここに3つの論点があります。

第一に、在庫の置き場所です。米国の事例で共通しているのは、顧客に近い場所に在庫があることが速度の前提になっている点です。サプライチェーンコンサルタントのJohn McClymontは、Walmartのような大手が速く届けられるのは顧客の近くに多数の店舗と幅広い品揃えがあるからで、その物流基盤は多くの企業が持っていないと指摘しています。日本の中小EC事業者にとっては、全国即日を狙うより、注文の多い都府県だけ在庫を前倒し配置する部分最適のほうが現実的です。楽天市場のあす楽対象地域を全国に広げるかどうかも、同じ判断軸で考えられます。

第二に、着荷予定時刻の精度です。UPS傘下Roadieの最高執行責任者Dennis Moonは「見える化と、想定した時間枠やETAどおりに届けられることは、速さと同じくらい重要だ」と述べています(Supply Chain Dive)。日本では置き配の普及と再配達削減が課題になっており、「速いが読めない」より「普通だが読める」ほうが実務上のクレームは減ります。商品ページの配送目安表記と、実際の出荷リードタイムがずれていないかを点検する価値があります。

第三に、店舗オペレーションへの負荷です。McClymontは、注文量が増えすぎると既存スタッフの業務を圧迫する摩擦点が必ず生じると述べています。実店舗を併設する日本のEC事業者が当日出荷を始める場合、レジ接客と出荷作業のどちらを優先するかを決めないまま走ると、店舗側の疲弊で先に止まります。日本ではトラックドライバーの時間外労働規制、いわゆる2024年問題以降、配送キャパシティは以前より貴重な資源になっています。速度の約束は、社内の人員配置とセットでしか守れません。

明日から着手できる初動アクション

まず着手すべきは、速度の全面強化ではなく、現状把握です。直近3か月の注文データを都道府県別に並べ、上位3地域だけで全体の何割を占めるかを確認してください。上位に集中しているなら、その地域向けの前倒し在庫や出荷締め時間の後ろ倒しだけで、体感速度は大きく変わります。

次に、商品ページの配送表記と実績の差を測ります。「翌日発送」と書いているのに実際は翌々日になっている商品があれば、速度を上げるより表記を実態に合わせるほうがレビュー評価には効きます。あわせて、送料無料ラインと即日配送オプションの価格設計を見直すと、粗利を落とさずに体験を改善できます。送料の考え方は送料無料ラインの設計の記事も参考にしてください。

三つ目に、配送遅延が起きたときの初動を先に決めておくことです。速度を上げるほど、遅延が起きたときの落差は大きくなります。あらかじめ謝罪文面と代替提案のテンプレートを用意しておくと、対応品質のばらつきが減ります。配送遅延のお詫びメール作成や、EC物流のAI最適化の記事も判断材料になります。

なお、日本国内で同種の即日配送プラットフォームがどこまで中小EC事業者に開放されるかは、現時点では公表情報が限られており要確認です。米国と同じ選択肢がすぐ日本に来る前提で設計しないほうが安全です。

まとめ

2026年の米国では、FedEx・Amazon・Sam’s Clubなどが即日配送を相次いで拡大し、店舗や小規模拠点を起点にした当日出荷が現実的な選択肢になりました。日本のEC事業者が取るべきスタンスは、全国一律の速度競争に乗ることではなく、注文が集中する地域に限って在庫と締め時間を最適化し、着荷予定の精度と店舗オペレーションの余力を先に確保することです。速さの約束は、守れる範囲で出すのが最も収益に効きます。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Supply Chain Dive


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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