Anthropicは2026年8月25日、Claudeの記憶をチャットとCoworkで共通化しました。
これまでチャットで積み上げた前提が、Cowork側のタスクには引き継がれていませんでした。今回の更新でその壁がなくなり、どの入り口から使っても同じ記憶から始まります。日本のEC事業者にとっては、店舗の前提を毎回説明し直す手間が減る一方で、記憶させてよい情報の線引きという新しい運用課題も生まれます。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

何が起きたか:Claudeの記憶が1つに統合された
結論から言えば、Claudeの記憶とは、ユーザーごとに保存された前提情報をトピック単位のファイルとして持つ仕組みのことです。Anthropicの公式発表によると、8月25日から、チャットで使っている記憶とClaude Coworkの記憶が同一のものになりました。Coworkがクラウド上でタスクを実行するときにもチャット側の記憶が参照され、逆にCoworkで出てきた内容はチャットにも戻ってきます。
記憶の作られ方も変わりました。従来は会話の終了後に要約する方式でしたが、今回からは会話の最中にトピックが追加されていきます。締切が9月にずれたと会話の中で伝えれば、「覚えておいて」と指示しなくても次の会話には反映されている、という挙動です。記憶の一時停止やリセットはいつでも可能とされています。
保存された内容は、設定画面の「Memory」内にあるTopicsの一覧から確認できます。ファイルは短く、読んで編集して削除できる形式です。公式発表では「会社の旧社名を1つのファイルで直せば、それ以降のすべての会話で正しくなる」という趣旨の効果が説明されています。海外メディアのEngadgetやSiliconANGLEも、チャットとCoworkをまたぐ統合とユーザー側の制御強化として同日に報じています。

EC事業者にとっての論点:センシティブ設定と権限の2段構え
日本のEC事業者がまず押さえるべきは、機微情報の扱いです。既定では、健康、人種、民族、宗教的信条、政治、ジェンダーアイデンティティなどのセンシティブな話題は記憶に保存されません。設定で「センシティブな話題を記憶に含める」を有効にすれば保存されますが、有効化した時点より前の内容にはさかのぼって適用されないと明記されています。保存が発生するたびに通知が出る仕様で、設定はいつでも解除できます。
さらに、この設定を有効にしても保存されない領域があります。社会保障番号や政府発行のID番号といった機微な識別番号、犯罪歴、在留資格、そして利用規約に違反する内容です。健康食品やサプリメントを扱う店舗、あるいは顧客の体調に関する問い合わせを日常的に受ける店舗では、この線引きがそのまま運用ルールになります。詳細はAnthropicのヘルプセンターに案内があります。
もう1つの論点は、プランによる違いです。Free、Pro、Maxの各プランではWeb、デスクトップ、モバイルで記憶が既定で有効になっています。一方、TeamとEnterpriseでは組織の管理者が利用可否を制御し、個々のユーザーが自分でオンにするまでは無効のままです。法人契約で複数店舗を運営していて「うちだけ動きが違う」という場合、機能の不具合ではなく管理者設定である可能性が高い、という理解が必要です。
初動アクション:棚卸しと線引きを先に決める
最初にやるべきは、Topicsの棚卸しです。設定画面から保存されているトピック一覧を開き、古い店舗名、終了したモール施策、退任した担当者名などが残っていないかを確認します。記憶が共通化された分、間違った前提はチャットとCoworkの両方に波及します。1ファイル直せば全体に効くという性質は、裏を返せば1ファイルの誤りが全体に効くということです。
次に、記憶させる情報の社内ルールを決めます。取り扱いカテゴリ、主要モール、繁忙期、レポートの提出形式といった「毎回説明していた前提」は積極的に記憶させる価値があります。逆に、仕入原価、取引先との個別条件、未公開の販促計画などは、記憶に残す前に社内で可否を確認しておくのが安全です。委託先のアカウントで作業する場合は特に、誰の記憶に何が残るのかを事前に整理してください。
最後に、法人プランを使っている場合は管理者側の設定を確認します。TeamやEnterpriseでは管理者が組織全体の可否を握るため、現場が使いたくても解放されていなければ始まりません。有効化の判断とあわせて、センシティブ設定を組織としてどう扱うかも同時に決めておくと、後戻りが減ります。
まとめ
Claudeの記憶がチャットとCoworkで共通化されたことで、前提の説明コストは下がります。ただし恩恵を受けるには、保存されている内容を定期的に見直し、記憶させてよい情報の線引きを社内で決めておくことが前提になります。法人プランでは管理者設定が入口になる点も、あわせて確認しておきたいところです。
参考文献
- Claude’s memory works everywhere, and you decide what’s in it(Anthropic公式ブログ)
- Claude’s memory now works across both chats and Cowork sessions(Engadget)
- Anthropic updates Claude’s memory to enhance customization and protect sensitive topics(SiliconANGLE)
- Use Claude’s chat search and memory to build on previous context(Anthropicヘルプセンター)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: Anthropic公式ブログ
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。