インフルエンサーブランド撤退が相次ぐ理由|EC事業者が学ぶ3論点

インフルエンサーブランドの撤退が相次ぐ理由を解説します。メッシのMás+とUnwellの終了から、日本のEC事業者がリピート率とF2転換率で判断すべき3つの論点をまとめました。

投稿日: カテゴリー AIニュース

インフルエンサーブランドの撤退が相次ぐ理由は、認知は作れてもリピート購入を作れなかったからです。

Modern Retailが2026年8月25日に報じたところによると、リオネル・メッシの飲料ブランド「Más+」と、ポッドキャスターのアレックス・クーパーが手がけた機能性飲料「Unwell」が、いずれも立ち上げから2年以内に終了します。インフルエンサーブランドの撤退は米国で連鎖的に起きており、日本でタレントコラボやインフルエンサープロデュース商品を扱うEC事業者にとっても他人事ではありません。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

何が起きたか:2年以内に消えた2つの大型ブランド

結論から言えば、潤沢な資本と流通を持っていたインフルエンサーブランドが、それでも継続できませんでした。Más+は2024年にデビューし、BevNETが2026年5月20日に「目標未達により段階的に終了する」と報じています。Más+はハードセルツァー「White Claw」を持つMark Anthony Brandsとの共同事業で、初年度から強い流通網を確保していました。それでも飽和したスポーツドリンク市場で長期目標に届かなかった、という結末です。

Más+ by Messiの商品画像

Unwellも構図は似ています。電解質飲料、エナジードリンク、プロテイン飲料を展開したUnwellは、2025年後半にネスレとの合弁として立ち上がりましたが、2026年秋のハロウィン限定フレーバーを最後に終売となります。撤退は飲料に限りません。キム・カーダシアンの「Skkn」は2025年に事業を終え、商品はSkimsへ統合されました。グウェン・ステファニーの「Gxve Beauty」は2026年に、ドリュー・バリモアの「Flower Beauty」は2025年に、それぞれ終了しています。

背景にはカテゴリーの過密があります。Modern Retailが引用したTastewiseのデータでは、機能性飲料は2026年に前年比29パーセント超で成長しており、成長市場であるがゆえに新規参入が絶えません。市場が伸びていても、棚とカートの取り合いは激化する一方だということです。

日本のEC事業者にとっての論点:認知とリピートは別の通貨

日本のEC事業者が持ち帰るべき論点は、フォロワー数は初回購入の燃料にはなるが、2回目の購入の理由にはならないという点です。メッシのInstagramフォロワーは5億1,600万人にのぼりますが、それでもMás+は継続的な購入者を積み上げられませんでした。ブランディング会社Mottoのサニー・ボネルは、Modern Retailの取材に「注目を集めることと、そのカテゴリーへの参入を許されることは別物です」と述べています。

元アンハイザー・ブッシュおよびハイネケンの飲料流通担当だったマーク・ガロは、同じ記事のなかで小売は回転率の商売であり、知名度は認知の資産にすぎないと指摘しています。1回目は名前で売れても、2回目は味と効果と価格で売れる。ここが弱いまま高い価格を付ければ、2回目は発生しません。

これは楽天市場でもAmazonでもShopifyでも同じ構造です。インフルエンサー施策の直後は新規セッションとCVRが跳ね、売上グラフはきれいな山を描きます。問題はその後で、山が引いた30日後、60日後にF2転換率(初回購入者が2回目を買う比率)が動いているかどうかです。日本の商材でも、コラボ企画で初月の受注が大きく伸びたのに、翌月の定期購入継続率や再購入率が平常時と変わらず、在庫と広告費だけが残るケースは珍しくありません。ここを見ずに施策の成否をROASだけで判断すると、判断を誤ります。

今日からの初動:コラボ商品を出す前に決める3つの基準

まず、2回目の購入理由を1文で書けるかを確認してください。「◯◯さんが作ったから」以外の理由、つまり味、成分、容量、価格のいずれかで既存商品に明確に勝てる点を、企画段階で言語化します。書けないなら、それは認知施策であって商品開発ではありません。

次に、KPIを初動売上からリピート指標に置き換えます。楽天市場ならRMSの購買履歴から初回購入者の90日以内リピート率を、Amazonなら定期おトク便の継続率を、Shopifyなら購読の解約率を、コラボ商品と既存商品で並べて比較します。コラボの初動が既存商品の3倍でも、リピート率が半分なら、在庫計画は初動基準ではなく既存商品基準で組むべきです。

3つ目に、撤退基準を先に決めます。Más+もUnwellも、巨大企業が流通を支えたうえでの終了でした。中小のEC事業者であれば、発売から何カ月でリピート率が何パーセントに届かなければ生産を止めるのか、在庫を何カ月分でキャップするのかを、契約前に社内で合意しておく必要があります。

AIを使うなら、レビューと問い合わせの分析が費用対効果の高い入り口です。生成AIに「2回目を買わなかった理由」の観点でレビュー本文と問い合わせログを分類させれば、味が合わない、価格が高い、容量が使い切れないといった離脱要因を数日で棚卸しできます。感覚ではなく理由の分布で判断できるようになると、コラボ商品の撤退判断も早くなります。

まとめ

インフルエンサーブランドの撤退が相次ぐ理由は、認知の資産と購買の継続が別物だからです。日本のEC事業者は、コラボ企画を評価する軸を初動売上からF2転換率とリピート率に移し、企画段階で2回目の購入理由と撤退基準を決めておくことが実務的な防衛策になります。市場が伸びているカテゴリーほど、この基準がないまま参入するリスクは高くなります。

参考文献

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引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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