DeepSeekが法人利用で急浮上|EC事業者のAIコスト選定3つの論点

中国発DeepSeekが法人利用で急浮上。安さの裏にあるデータ預け先のリスクと、EC事業者がAIコストを選ぶ3つの論点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米国企業のソフトウェア支出データで、中国発のAIモデル「DeepSeek」が2026年6月に急浮上しました。性能は西側の最上位モデルに及ばないものの、価格は数分の一。AI活用のコストに悩む日本のEC事業者にとっても、商品説明文の自動生成や接客チャットの裏側で「どのモデルを使うか」は利益を左右する論点です。ただし安さの裏には、中国製モデル特有のデータ預け先のリスクがあります。本記事では事実関係と、EC事業者がAIコストを判断するうえでの3つの論点を整理します。

何が起きたか:法人決済データでDeepSeekが6月のトレンド首位に

法人向け経費管理サービスのRampは、5万社超の実際の取引データから企業のソフトウェア支出動向を集計しています。The Decoderが報じたところによると、そのRamp AI Indexで、DeepSeekが2026年6月に「トレンドのソフトウェアベンダー」首位に立ちました。

背景にあるのが、2026年4月末にリリースされたDeepSeek V4です。総合性能では西側の最上位モデルに届かないものの、価格は数分の一とされ、Rampのチーフエコノミストであるアラ・カラジアンは、急浮上の主因を「コスト意識」だと指摘しています。米国企業のDeepSeek採用率は2025年1月時点で0.3%、その後0.1%まで落ち込んでいたため、6月の伸びは反転の動きと言えます。中国発モデルはHugging Faceの新規モデルダウンロードの44%を占めるという調査もあり、コスト圧力が世界的に効いていることがうかがえます。

一方でカラジアンは、「米国企業がDeepSeekに直接支払い、そのプラットフォームにデータを送っている」状態を問題視し、中国製モデルを直接使うことの安全保障上・競争上のリスクと、トレンドの持続性に疑問を呈しています。

日本のEC事業者にとっての論点:安さとデータ預け先のトレードオフ

このニュースは、楽天市場・Amazon・Shopify・Yahoo!ショッピングを運営する事業者がAIをどう内製・外注するかに直結します。商品ページの説明文生成、レビュー要約、問い合わせ対応チャット、広告コピーの量産といった用途では、処理するトークン量が多いほどモデルの単価差がそのまま月額コストに跳ね返るためです。DeepSeekのような低価格モデルは、確かに月数万件規模の文章生成コストを大きく押し下げる可能性があります。

ただし注意すべきは、DeepSeekに直接APIで投げる場合、顧客の問い合わせ内容や購買データといった情報が中国側のプラットフォームを経由しうる点です。日本のEC事業者は個人情報保護法に基づく適切な取り扱い義務を負っており、顧客データを海外事業者へ送る場合は越境移転のルールも関わります。安さだけでモデルを選ぶと、データガバナンスの面で後から見直しを迫られる恐れがあります。

なお、DeepSeekのモデルはFireworks AI・fal AI・DeepInfraといった西側のインフラ事業者経由でも利用でき、その場合はデータの預け先が変わります。「モデルの安さ」と「データを誰に預けるか」は分けて検討できる、という点は知っておく価値があります。

今後の展望とEC事業者の初動アクション

第一に、自社のAI利用を用途で切り分けることです。顧客の個人情報を含まない商品説明文の量産のような領域は低価格モデルでコストを下げ、問い合わせ対応など個人情報を扱う領域は実績のあるモデルや国内・西側基盤に寄せる、という棲み分けが現実的です。

第二に、API経由でモデルを使う際は「どの事業者にデータが渡るか」を契約・仕様の段階で確認することです。同じDeepSeekでも直接利用と西側インフラ経由ではデータの流れが異なります。

第三に、コスト比較は単価だけでなく月間の総トークン量で試算することです。安いモデルでも生成量が多ければ差は開き、逆に高品質モデルで一発で良い文章が出れば修正コストを含めた総額では安くなる場合もあります。性能と価格、データガバナンスの三点で評価する習慣をつけたいところです。

まとめ

DeepSeekの急浮上は、AIコスト圧力が世界の企業を動かしている証左です。日本のEC事業者も「安いモデルへ乗り換えるか」は今後避けられない判断になりますが、価格・性能・データの預け先を切り分けて評価することが欠かせません。安さに飛びつく前に、扱うデータの性質で用途を分けるスタンスをおすすめします。

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引用元: The Decoder


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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