Googleが、サイト運営者にAI検索からの離脱(オプトアウト)を認める新しい仕組みを導入します。英国の競争当局による規制を受けた対応で、サイト運営者はGoogle Search Console上のトグル一つで、AI OverviewsやAI Modeといった生成AI検索機能への自社コンテンツの掲載を拒否できるようになります。日本のEC事業者にとっては「AI検索に載るか載らないか」を初めて自分で選べる時代の入り口であり、商品ページの集客戦略に直結する論点です。本記事で何が起きたのか、そして日本のEC事業者が取るべきスタンスを整理します。
何が起きたか:英国規制がGoogleにAI検索の選択権を強制
TechCrunchが報じたところによると、今回の動きは英国の競争・市場庁(CMA)による規制が起点です。CMAは2025年10月にGoogleを「戦略的市場地位(strategic market status)」と指定し、2026年1月にはサイト運営者がAI機能へのコンテンツ集約について選択権を持てるよう求める案を提示していました。Googleはこれを受けて、Search Console上に新しいオプトアウト用のトグルを用意します。
このトグルをオンにすると、AI Overviews、AI Mode、Discover内のAI Overviewsといった生成AI検索機能から自社コンテンツが除外されます。重要なのは、この離脱を選んでも通常のGoogle検索(青いリンクの検索結果)の掲載順位には影響しないと説明されている点です。つまり「AI検索には出したくないが、従来検索の流入は維持したい」という選択ができる設計になっています。
Googleの生成AI検索の規模は大きく、同社によればAI Overviewsの月間アクティブユーザーは25億人、AI Modeは10億人を突破しています。あわせてSearch Consoleには、自社ページがAIの回答にどれだけ表示されたか(インプレッションやどのページが引用されたか)を示す指標も提供される予定です。CMAはこの措置を「世界初」と位置づけ、報道機関を含むサイト運営者がコンテンツ取引を交渉する上でより強い立場に立てると評価しています。なお現時点では英国の一部運営者で先行テストし、その後グローバルに展開する計画とされています(日本での提供時期は要確認)。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
第一に、ほとんどのEC事業者にとってオプトアウトは「やるべきではない」選択です。報道機関が離脱を検討するのは、AI Overviewsに記事を要約されて自社サイトへの流入が奪われるからですが、商品を売るEC事業者の構造はむしろ逆です。AI検索やAI Modeで自社商品が引用・推奨されることは、新たな購買接点の獲得を意味します。楽天市場やAmazonの商品ページ、自社Shopifyサイトの商品説明がAIの回答に登場すれば、それ自体が無料の露出になります。
第二に、注目すべきは離脱機能そのものよりも、Search Consoleに追加されるAI表示指標のほうです。これまで「自社ページがAI Overviewsに何回引用されたか」はほぼ不可視でしたが、今後は計測できるようになります。日本での提供が始まれば、自社EC(Shopifyや自社ドメインのサイト)を運営する事業者は、どの商品ページ・どのブログ記事がAIに拾われているかを把握し、AEO(AI検索最適化)の打ち手を数字で検証できるようになります。
第三に、楽天市場やAmazonに出店している事業者は、この指標を直接は触れない点に注意が必要です。Search Consoleはサイト所有者が登録するツールであり、モール内の商品ページはモール側が管理します。自社でAI検索流入を計測・最適化したいなら、自社ドメインのオウンドメディアや自社ECを持っておくことの価値が改めて高まります。モール依存だけでは、AI検索時代の集客データを自分の手元に残せません。
今後の動きと初動アクション
直近で日本のEC事業者がやるべきことは大きく3つです。まず、自社ドメインのサイトを運営しているなら、Search Consoleの登録状況を確認し、近く追加されるAI表示指標をすぐ見られる状態にしておくこと。次に、オプトアウトのトグルは原則オフのまま(AI検索に載せたまま)にし、安易に離脱しないこと。最後に、商品説明やFAQをAIが引用しやすい形(結論先出し、具体的な仕様や用途の明記、簡潔な一問一答)に整える、いわゆるAEOの基本を商品ページに反映していくことです。
今回の規制は英国発ですが、欧州や他地域への波及は十分にあり得ます。Googleが先行テストからグローバル展開へ進む過程で、日本でもSearch Consoleの画面が変わる可能性が高い領域です。AI検索を「脅威」と捉えて離脱するのか、「新しい入口」と捉えて最適化するのか。EC事業者の答えは、報道機関とは逆方向にあります。
まとめ
GoogleはCMAの規制を受け、サイト運営者がAI Overviews・AI ModeからオプトアウトできるトグルをSearch Consoleに追加します。ただしEC事業者にとってAI検索は集客機会であり、原則として離脱せず、むしろ追加されるAI表示指標を使ってAEOを磨くのが取るべきスタンスです。モール依存だけでなく自社サイトでデータを持つ重要性も、改めて確認しておきたい局面です。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。