2025年9月、GoogleがAIエージェント向けの決済プロトコル「Agent Payments Protocol(AP2)」を発表しました。これまでECサイトでは人間が購入ボタンをクリックすることが大前提でしたが、AIエージェントが消費者に代わって商品を探し、価格を比較し、購入まで実行する時代が本格的に到来します。日本のEC事業者にとって、この変革への対応は避けて通れない課題となっています。
AIエージェントが変えるオンラインショッピングの未来
AP2の登場背景には、EC市場の構造的な変化があります。現在、AIエージェントによる取引は急速に拡大しており、消費者はますますAIに買い物を任せるようになっています。AIエージェントは消費者の指示に基づいて、複数のECサイトを巡回し、最適な商品を見つけて自動的に購入手続きを進める仕組みです。
このような取引において重要となるのが、AIエージェントの購入権限の正当性です。AP2は「Mandates(マンデート)」と呼ばれる改ざん防止機能を持つ暗号署名付きデジタル契約を使用することで、この問題を解決します。これによりユーザーの指示を検証可能な形で証明し、不正な購入や誤注文を防ぐ仕組みを提供します。
日本のEC事業者が押さえるべき3つの重要ポイント
AP2が解決する課題は大きく3つあります。Authorization(権限)は、AIエージェントが本当に購入権限を持っているかを確認します。Authenticity(真正性)は、購入リクエストがユーザーの真の意図を反映しているかを検証します。Accountability(責任)は、エラーが発生した場合の責任の所在を明確にします。
実際の購入プロセスは2つのパターンに分かれます。リアルタイム購入では、ユーザーが立ち会う状態で、まず「Intent Mandate(意図マンデート)」によりAIエージェントに商品検索を許可し、次に「Cart Mandate(カートマンデート)」で購入を承認します。委任タスクでは、詳細な条件を事前に設定し、条件が満たされた時点で自動的に購入が実行されます。
現時点でAP2には、American Express、Mastercard、PayPal、Revolut、Etsyなど60社以上の決済企業やテクノロジー企業が賛同しています。クレジットカード、デビットカード、銀行振込、さらにはステーブルコインまで、多様な決済手段に対応している点も重要です。
今すぐ始めるべき準備と期待される効果
日本のEC事業者がAIエージェント時代に備えるためには、まず商品データの構造化が不可欠です。全商品にGTIN(国際商品識別番号)を付与し、サイズ、色、素材などの属性情報を詳細に記載することで、AIエージェントが商品を正確に認識できるようになります。楽天市場やYahoo!ショッピングの商品登録において、任意項目も含めてすべての情報を入力することが重要になります。
次に必要なのがAPI連携の強化です。Google Merchant CenterやShopping APIとの連携により、在庫情報と価格をリアルタイムで更新できる体制を整えます。AIエージェントは瞬時に価格比較を行うため、競合他社の価格変動に素早く対応できる動的価格設定システムの導入も検討すべきです。
在庫管理システムの高度化も急務です。AIエージェントによる大量の同時アクセスや瞬時の購入判断に対応するため、リアルタイム処理に最適化された在庫管理が必要となります。特に限定商品や人気商品では、在庫の正確な把握と迅速な更新が売上を大きく左右します。
日本企業の参加がまだ少ない今こそ、先行者利益を獲得する絶好の機会です。特に越境ECを展開する事業者にとっては、グローバル市場での競争力確保のためにも早急な対応が求められます。AP2への対応は単なる技術的な課題ではなく、今後のEC戦略の根幹に関わる重要な経営判断となるでしょう。
引用: axios.
