Googleのリサーチツール「NotebookLM」が大型アップデートされました。各ノートブックに専用のクラウドコンピュータが搭載され、AIが自らコードを書いて実行できるようになったほか、エージェント型のリサーチ機能、ExcelやPowerPoint形式でのレポート出力にも対応します。「資料を読み込ませて質問するツール」から「調査・分析の作業そのものを任せられるエージェント」への進化であり、レビュー分析や競合調査、売上データの集計といったEC事業者の実務にも直結するアップデートです。本記事では発表内容の事実関係と、日本のEC事業者にとっての論点を整理します。
NotebookLMに何が起きたか:クラウドコンピュータ搭載とエージェント化
AI専門メディアのThe Decoderが2026年6月10日に報じた内容と、Googleの公式発表(6月8日付)によると、今回のアップデートの柱は次の3つです。
1つめは、基盤モデルの刷新です。NotebookLMは最新のGemini 3.5系モデルとAntigravity(Googleのエージェント型コーディング基盤)へアップグレードされました。Googleが公開したベンチマークでは、旧バージョンとの比較評価で65%以上の勝率(互角ラインを15ポイント上回る水準)を記録し、特に大規模ドキュメントの分析では69.9%、高度なWebリサーチとソース発見では78.2%の勝率を示したとしています。
2つめは、コード実行環境の搭載です。各ノートブックにセキュアなクラウドコンピュータが割り当てられ、AIが必要に応じてコードを書き、その場で実行できるようになりました。100以上のキュレーションされたソフトウェアスキルが統合されており、数値データの集計やグラフ作成のような「読むだけでは終わらない」処理を、ノートブックの中で完結できます。出力形式もPDFレポート、Excelスプレッドシート、PowerPointプレゼンテーション、画像、JSONやCSVと大幅に拡充されました。
3つめは、エージェント型リサーチです。手元に資料が1つもない状態からでも、テーマを指示すればNotebookLMがGoogle検索でWeb上のソースを自動的に探して追加し、調査を進められるようになりました。これまでの「ユーザーがソースを集めて読み込ませる」前提が外れたことになります。
提供対象は、Google AI Ultraの全ユーザーと、Google WorkspaceのAI Ultra Access / AI Expanded Accessプランの利用者で、6月8日から段階的にグローバル展開されています。無料版や下位プランへの展開時期は現時点で明らかにされていません。
日本のEC事業者にとっての論点:データ分析の内製化が一段進む
EC事業者の視点で見たとき、今回のアップデートで最も影響が大きいのはコード実行とExcel出力の組み合わせです。これまでNotebookLMは、商品レビューや市場レポートを読み込ませて要点を整理する「読む系」の用途が中心でした。今後は、楽天市場のRMSやAmazonのセラーセントラルからダウンロードした売上CSVをソースとして読み込ませ、週次の売上トレンド集計や商品別の構成比分析をAIにコードごと実行させて、結果をExcelレポートとして受け取る、という「手を動かす系」の作業まで一気通貫で任せられる可能性が出てきました。
エージェント型リサーチも競合調査の実務を変えます。たとえば新商品の市場投入前に「国内の同カテゴリ商品の価格帯と訴求軸を調べたい」というテーマだけを与えれば、NotebookLMがWeb上のソースを自分で集めてレポートにまとめるところまで進められます。これまでPerplexityやChatGPTのDeep Research系機能が担っていた領域に、Googleが「ソース管理とセットになったリサーチ環境」として本格参入してきた構図です。
一方で留意点もあります。今回の新機能は月額課金の上位プラン(Google AI UltraまたはWorkspaceの上位アクセス)限定で、中小EC事業者が気軽に試せる価格帯ではありません。また、売上データや顧客データのような機密情報をAIツールに読み込ませる際は、利用しているプランのデータ取り扱いポリシー(学習への利用有無、保存場所)を事前に確認しておく必要があります。
今後の展望と初動アクション
日本のEC事業者が今とるべき初動は次の通りです。
まず、無料版のNotebookLMで既存機能(ソース読み込み、要約、音声概要)に慣れておくことです。今回のエージェント機能はいずれ下位プランへ展開される可能性が高く、操作感を先に掴んでおけば移行は容易です。
次に、すでに対象プランを契約している事業者は、実データでの検証を始めることです。直近3カ月の売上CSVを読み込ませて週次レポートを自動生成させる、自社と競合の商品ページを読み込ませて訴求軸の差分を整理させる、といった小さなタスクから精度を確かめるのが現実的です。
最後に、競合ツールとの比較検討です。リサーチエージェント領域はOpenAI、Anthropic、Perplexityも機能拡充を続けており、どのツールに業務を寄せるかの判断材料として、今回のNotebookLMの進化は確認しておく価値があります。段階的展開のため自分のアカウントにまだ機能が表示されない場合もありますが、数週間単位で行き渡る見込みです。
まとめ
NotebookLMはコード実行・エージェント型リサーチ・多形式出力の3点で「調査と分析を任せられるツール」に進化しました。当面は上位プラン限定ですが、EC運営のデータ分析と競合調査の進め方を変えうるアップデートです。まずは無料版で操作に慣れつつ、自社の分析業務のどこを任せられるか整理しておくことをおすすめします。
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。