【日本語で学ぶOpenAI Academy】ビジネス活用編⑨:複数のアプリをまたぐ「複雑なワークフロー」自動化術

投稿日: カテゴリー ChatGPT, Gemini

「毎月末のレポート作成、複数のツールを使い分けてデータ集計して…本当に時間がかかる」 「定型業務は多いけど、完全に自動化するには複雑すぎて諦めている…」

今日のビジネスでは、一つのタスクを完了するために、複数のアプリケーションやプロセスを順番に実行することが頻繁にあります。これまでは、その「つなぎ」の部分に人間の手間がかかっていました。

このシリーズ「日本語で学ぶOpenAI Academy」では、OpenAI公式の学習プラットフォーム「OpenAI for Business」コレクション(全13本)の内容を、日本語で徹底解説しています。

第9回のテーマは、「Automate complex workflows with OpenAI o3(OpenAI o3を使った複雑なワークフローの自動化)」。 ※動画では「o3」モデルが使われていますが、本記事では最新の「GPT-5 Pro」に置き換えて解説します。

ChatGPTが複数のツールを自律的に使いこなし、複雑なビジネスプロセスを丸ごと自動化する、その画期的な方法をご紹介します。

今回のキーポイント:複数のツールを自律的に連携させるAIエージェント

今回の動画の核心は、GPT-5 Proが持つ「マルチステップ推論」能力と「ツール利用」能力の組み合わせです。これは、AIが単に指示された一つのタスクをこなすだけでなく、そのタスクを完了するために必要な複数のサブタスクを特定し、それぞれに最適なツール(データ分析ツール、ウェブ検索、文書作成ツールなど)を自律的に選択・実行できる、まさに「AIエージェント」のような振る舞いをすることを示しています。

本編:月次レポート作成を数分で自動化する3ステップ

動画では、企業財務担当者が毎月末に行う「月次差異分析レポート」の作成を例に、複雑なワークフローをAIがどのように自動化するかを示しています。この作業は通常、データ収集、分析、可視化、外部情報の参照、要約作成など、複数のステップとツールの利用を伴う非常に時間のかかるものです。

ステップ1:複雑なタスクを自然言語で指示

まず、ユーザーはGPT-5 Proに、すべてのプロセスを含む複雑なタスクを、箇条書きのリスト形式で詳細に指示します。

動画の例: 「このダミーデータ(CSVファイル)に基づいて、月次差異分析レポートを作成してください。

  1. データを統合・分析し、7%を超える差異をフラグ付けする。
  2. そのデータを可視化する(グラフ化)。
  3. ウェブで関連する業界ベンチマークを検索し、比較する。
  4. CFO向けの要約とSlack投稿用のメッセージを作成する。」

人間が「何をしてほしいか」を明確に伝えれば、AIが「どうやって実行するか」を考えます。

ステップ2:AIによる「思考の連鎖」とツールの自律的利用

指示を受けたGPT-5 Proは、すぐに作業を開始します。その過程で、画面下部にはAIが今何をしているかを示す「思考の連鎖(Chain of Thought)」が表示されます [01:27]。

  • データ分析: まず、アップロードされた複数の部門のCSVファイルを分析し、指定された7%を超える差異を特定するためのPythonコードを記述・実行します [01:34]。
  • ウェブ検索: 次に、業界ベンチマークを検索するためにウェブ検索ツールを自律的に呼び出し、KPMGなどの信頼できる情報源からデータを収集します [01:56]。
  • データ可視化: 分析結果を分かりやすいグラフとして可視化し、インタラクティブな要素も加えてくれます [02:25]。
  • 文書作成: 最後に、分析結果と外部データを基に、CFO向けの要約レポートと、Slackで共有するための簡潔なメッセージを作成します [02:57]。

これらの一連のプロセスは、AIが自律的に判断し、最適なツールを必要なタイミングで呼び出して実行します。

ステップ3:数分で完成する、網羅的で実用的なレポート

そして、わずか数分後には、通常であれば何時間もかかっていたであろう、非常に詳細で網羅的な月次差異分析レポートが完成します。

レポートには、フラグ付けされた差異の詳細、データ可視化、ウェブ検索で得られた引用付きの業界ベンチマーク、そしてすぐに使えるエグゼクティブサマリーとSlack投稿メッセージがすべて含まれています。

GPT-5 Proのような最新モデルは、人間が複数のアプリケーションを開き、データをコピー&ペーストし、手動で分析・要約する手間を、AIがすべて引き受けてくれるため、業務効率は劇的に向上します。

まとめ:AIは「タスクの自動化」から「ワークフローの自動化」へ

今回の「複雑なワークフローの自動化」機能が示すのは、AIが単一のタスクを効率化するだけでなく、複数のツールと連携し、複雑なビジネスワークフロー全体を自律的に自動化できる「エージェント」へと進化している事実です。

これは、定型的ながらも煩雑だった業務から人間を解放し、より創造的で戦略的な業務に集中できる時間をもたらします。GPT-5 Proが提供するこの能力は、企業の生産性向上に計り知れない影響を与えるでしょう。


投稿者: 齋藤竹紘

齋藤 竹紘(さいとう・たけひろ) 株式会社オルセル 代表取締役 / 「うるチカラ」編集長

   
Experience|実務経験
2007年の株式会社オルセル創業から 17 年間で、EC・Web 領域の課題解決を 4,500 社以上 に提供。立ち上げから日本トップクラスのEC事業の売上向上に携わり、 “売る力” を磨いてきた現場型コンサルタント。
Expertise|専門性
技術評論社刊『今すぐ使えるかんたん Shopify ネットショップ作成入門』(共著、2022 年)ほか、 AI × EC の実践知を解説する書籍・講演多数。gihyo.jp
Authoritativeness|権威性
自社運営メディア 「うるチカラ」で AI 活用や EC 成長戦略を発信し、業界の最前線をリード。 運営会社は EC 総合ソリューション企業株式会社オルセル
Trustworthiness|信頼性
東京都千代田区飯田橋本社。公式サイト alsel.co.jp および uruchikara.jp にて 実績・事例を公開。お問い合わせは info@alsel.co.jp まで。

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