ChatGPT業務利用の44%が職種外|EC兼務担当が押さえる3手順

OpenAIの調査で職種固有のChatGPT利用の43.5%が他職種の業務と判明。小規模企業ほど越境が多い実態と、EC事業者が兼務体制を戦力化する3手順を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

タスククロスオーバーとは、AIで他職種の業務を自分でこなす動きのことです。

OpenAIは2026年7月27日、仕事でのChatGPT利用に関する調査を公開し、職種固有のリクエストの43.5%が本来は他職種が担ってきた業務だったと報告しました。しかも、この傾向は専任担当を置きにくい小規模な企業ほど強く出ています。1人が商品登録も広告運用もカスタマーサポートも担う日本のEC事業者にとって、これは他人事ではなく現場そのものの話です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

ChatGPTで他職種の業務を扱う割合を示したOpenAIの調査グラフ

何が起きたか|80万件の会話から見えた職種の境界の溶解

結論から言えば、AIの利用実態が示したのは「職種の看板と、実際にやっている仕事のズレ」です。The Decoderが伝えたところによると、OpenAIは米国のビジネス利用者による80万件超の仕事関連メッセージを分析し、職種に固有のリクエストのうち43.5%が別の職種の業務にあたると分類しました。OpenAIはこれを「タスククロスオーバー(task crossover)」と呼んでいます。調査結果はOpenAIの公開レポートにまとめられています。

分類には米国労働省系の職業データベースO*NETを使い、メール作成・要約・日程調整といったどの職種でも発生する一般的な作業は集計から除外しています。つまり、残ったのは「その職種らしい専門的な仕事」だけで、そのうえで4割超が越境していたという読み方になります。越境が多かったのは、マーケティング素材の作成、ソフトウェアの不具合切り分け、財務計算、規制の解釈といった領域でした。

職種別の内訳も公開されています。Axiosが先行して報じた集計では、カスタマーサポートが77%で最も高く、デザインが75%、人事が69%と続きます。法務は56%、マーケティングは53%、営業と財務が40%、エンジニアリングは28%でした。OpenAIのチーフエコノミストであるRonnie Chatterjiは「AIによって職種の境界はすでに柔軟になりつつあると考えられます」とAxiosに語っています。

職種別に見たChatGPTの越境利用割合の棒グラフ

ただし調査には明確な留保があります。AIが新しい越境業務を生み出したのか、もともと担っていた仕事を助けただけなのかは、この分析では区別できないと著者自身が断っています。生産性が上がったのか、専門家が担った場合と同じ品質になったのか、採用判断が変わったのかも測定されていません。数字の解釈には慎重さが要ります。

日本のEC事業者にとっての論点|兼務は弱点ではなく前提になる

日本の中小EC事業者にとって重要なのは、この調査が「小さい組織ほど越境が起きる」と示した点です。典型的な利用者で見ると、最も小規模な企業では仕事関連リクエストの約19%が職種の境界を越えており、大きな企業の約16%を上回りました。専任のマーケター、専任のデータ分析担当、専任の法務がいない組織ほど、AIが穴埋め役として使われているという構図です。

これは楽天市場やAmazon、Shopify、Yahoo!ショッピングを運営する現場の実感と一致します。3人から5人の体制で、商品ページの原稿も、広告の入札調整も、レビュー対応も、月次の売上分析も同じ人が回している店舗は珍しくありません。カスタマーサポート職の越境率が77%で最上位だった事実は、問い合わせ対応をしながら商品説明文を書き、返品ポリシーの文面を考え、在庫の数字を眺めている担当者の姿と重なります。

一方で、越境が増えるほど品質のばらつきと責任の所在が問題になります。景品表示法や薬機法に触れる表現、特定商取引法に基づく表記、返品条件の文面は、専門知識がないまま生成AIの出力をそのまま公開すると事故につながる領域です。商品名やページ文言のように各モールの規定に沿う必要がある作業も同じで、たとえばAmazonの商品名75文字ルールのような仕様変更は、AIの一般知識だけでは追随できません。越境できる範囲と、専門家に確認すべき範囲を線引きしておくことが前提になります。

初動3手順|越境を「事故」ではなく「戦力」に変える

第一に、自社の越境マップを1枚に書き出すことです。誰がどの職種の業務を実際に担っているかを、商品登録・広告・CS・分析・法務チェックといった単位で並べ、AIに任せている部分に印を付けます。調査が示したのは「肩書と実務がずれている」ことなので、まず自社のずれを可視化するところから始めます。所要時間は1時間程度で足ります。

第二に、越境してよい業務と、専門家の確認を通す業務を分けます。社内向けの下書き、比較検討のたたき台、データの一次集計はAI主導で問題が起きにくい領域です。反対に、公開する広告表現、法令に関わる表記、契約書の解釈、価格や在庫に直接影響する自動処理は、人の確認を挟む設計にします。判断基準を「公開されるか」「取り消せるか」の2軸で決めると運用しやすくなります。

第三に、越境業務ほど指示文(プロンプト)を資産として残します。CS担当がページ原稿を書くときの型、分析担当が広告レポートを読むときの観点を、用途別にファイル化して更新日と担当者を添えておきます。人が変わっても品質が落ちにくくなり、ツールを乗り換えるときにも持ち出せます。特定のAIサービスに業務の型を預けきらない考え方は、一社依存のリスクを指摘したマイクロソフトCEOの発言とも共通します。事務作業の自動化を進める場合は、GrokのGoogle Workspace・Outlook連携のような実務ツールや、用途に応じた低コストモデルの使い分けも併せて検討すると、費用対効果が読みやすくなります。

まとめ

OpenAIの調査は、職種固有の業務リクエストの43.5%が他職種の領域に及んでいること、そしてその傾向が小規模企業ほど強いことを示しました。少人数で複数職能を回す日本のEC事業者にとって、これは弱点の証明ではなく、AIで戦える領域が広がっている証拠でもあります。越境マップの可視化、公開物と法令領域の線引き、指示文の資産化という3手順で、兼務体制を戦力に変えていく段階に来ています。

よくある質問

タスククロスオーバーとは何ですか。

タスククロスオーバーとは、ある職種の担当者がAIを使って別の職種の業務をこなす動きのことです。OpenAIは職種固有のChatGPTリクエストの43.5%がこれに該当すると報告しました。メール作成や日程調整のような一般作業は集計から除外されています。

この調査は日本のEC事業者にも当てはまりますか。

調査対象は米国のビジネス利用者であり、日本のデータではありません。ただし「専任担当がいない小さな組織ほど越境が起きる」という傾向は、少人数で複数職能を担う日本のEC事業者の実態と整合します。日本市場での定量的な検証は要確認です。

AIに任せてはいけない業務はありますか。

公開される広告表現、景品表示法や薬機法に関わる文言、契約書の解釈、価格や在庫を直接書き換える処理は、人の確認を挟む設計をおすすめします。取り消しにくい操作ほど、AIの出力をそのまま実行しない運用が安全です。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: The Decoder


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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