米国のカー用品ブランドRhino USAが、TikTok Shopで800万ドル超の売上を作り、テキサスに182エーカー(約74万平方メートル)の「コンテンツ工場」を建設しています。Modern Retailが報じたこの事例は、クリエイター起点の動画コマースで成長するEC事業者の典型といえます。本記事では何が起きているかを整理し、日本のEC事業者が真似できる動画コマースの3つの型を解説します。
何が起きているか:年商9桁ブランドのTikTok Shop戦略
Rhino USAは2015年に創業し、現在は年商9桁ドル(要確認・Modern Retail掲載値)規模、直近3年で売上を4倍に伸ばしたとされます。ラチェットストラップやけん引用具、トラクションボード、キャンプ・ボート用品など300以上のSKUを扱い、WalmartやSam’s Club、AutoZoneにも卸しています。
転機はTikTok Shopでした。米国でのサービス開始直後の2023年10月に出店し、TikTok Shop単体で800万ドル超を売り上げ、自動車・バイク用品カテゴリのトップセラーになっています。特徴的なのは出店規模より、クリエイターの巻き込み方です。前年は6,000人を超えるクリエイターがRhino USAの商品を紹介し、合計で約10億回の商品インプレッションを生みました。少数の専属ではなく、膨大な数の中小クリエイターが商品を実演する構造です。
さらに同社は、テキサス州オースティン郊外に182エーカーの「RhinoWorld」を建設中です。第1期だけで延べ2万2,000平方フィートの施設を整え、8,000平方フィートのライブコマース用スタジオ、RVサイト、約13kmの走行テストコースなどを計画しています。全面開業は早くても2027年とされ、製品テストとコンテンツ撮影を一体化した拠点を作る狙いです。
日本のEC事業者が真似できる動画コマース3つの型
第一の型は、少数の大型インフルエンサーではなく、数千人規模の中小クリエイターに横展開する設計です。Rhino USAは約10〜15人の「オールスター」クリエイターと深く組みつつ、商品紹介自体は数千人の一般クリエイターに開放しました。日本でもTikTok ShopやSNS連携が広がる中、1人の有名人に頼るより、商品を実演しやすい仕組みと報酬設計を整えて裾野を広げるほうが、長期の露出を稼ぎやすくなります。
第二の型は、「実演できる商品特性」を前面に出すことです。けん引用具やトラクションボードは、使う場面が映像で一目で伝わります。日本のEC事業者も、調理器具・アウトドア用品・収納グッズなど「使う瞬間が映える」商品から動画コマースを始めると、説明文では伝わらない価値が短尺動画で伝わります。逆に映像で違いが出にくい商品は、ビフォーアフターや比較の見せ方を設計する必要があります。
第三の型は、コンテンツ制作を内製の仕組みに変えることです。RhinoWorldは極端な例ですが、本質は「撮影と製品テストを日常業務に組み込む」発想です。日本の中小EC事業者でも、商品到着時に必ず開封動画を撮る、レビューが付いたら使用シーンを撮るなど、撮影を業務フローに固定するだけで素材が継続的に増えます。
今後の展望と初動アクション
日本ではTikTok Shopの本格展開がこれからの段階ですが、Instagramリールやショート動画を使った動画コマースはすでに実践できます。初動としては、まず実演で違いが伝わる主力商品を3点選び、30秒前後の使用シーン動画を用意します。次に、自社で抱える顧客やマイクロインフルエンサーに商品を提供し、紹介してもらう簡易なアフィリエイト導線を作ります。
そのうえで、反応の良かった動画の型(冒頭の見せ方、訴求の順番)を記録し、横展開していきます。Rhino USAの強さは派手な施設ではなく、クリエイターが紹介しやすい商品と仕組みを地道に整えた点にあります。まずは1商品・1動画から、撮影を業務に組み込むことが出発点です。
まとめ
Rhino USAの事例は、動画コマースの成否がクリエイターの数と商品の実演性、そして撮影の内製化で決まることを示しています。日本のEC事業者は、有名人頼みではなく、実演しやすい商品から小さく動画を回し続ける体制づくりを優先すべきです。素材を増やす仕組みが、そのまま売上の土台になります。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。