ShopifyとOpenAIが提携。ChatGPT内で直接商品購入が可能に

投稿日: カテゴリー ChatGPT, Shopify

「AIで商品を探す」から「AIで商品を買う」へ。EC業界に大きな転換点が訪れようとしています。Shopifyは2025年9月29日、OpenAIとの提携を発表し、ChatGPT内で直接商品購入ができる新機能を間もなく展開すると明らかにしました。この機能により、Glossier、Spanx、Vuori、Away、Stanley 1913、Steve Maddenなど、数百万のShopify加盟店の商品が、ChatGPTでの会話中にシームレスに購入可能になります。

ChatGPT内で完結する新しいショッピング体験

従来のオンラインショッピングでは、ユーザーは商品を探すために検索エンジンやSNSを使い、そこから外部サイトにアクセスする必要がありました。しかし、この新機能では、ChatGPTでの会話の中で商品を発見し、リンクや画面遷移なしに購入まで完了できます。

Shopifyの製品担当副社長であるVanessa Leeは、「ショッピングは急速に変化しています。人々は検索や広告だけでなく、AIとの会話の中で商品を発見しています」と述べています。この機能により、加盟店は自然な形でそうした瞬間に登場し、買い物客は会話の流れを中断することなく購入できるようになります。

Shopify CEOのTobi Lütkeは、X(旧Twitter)で「Shopifyの加盟店がChatGPT内で直接販売できるようになります。OpenAIとはかなり前から取り組んでおり、静かにしておくのが難しい案件でした。展開はとても近いうちに始まります」と投稿しました。

数億点の商品がAIで即座に検索可能に

この仕組みの核心は、Shopifyが提供するリアルタイムデータです。価格、在庫、画像、商品バリエーションなどの情報が、AIが理解できる形式で提供され、数億点の商品が即座に検索可能になります。ユーザーがChatGPTに商品の推奨を求めると、Shopify加盟店の在庫にアクセスし、すぐに購入できる状態で表示されます。

Steve MaddenのeCommerce担当副社長であるColleen Watersは、「AIは顧客の買い物の仕方を根本的に変えるでしょう。Shopifyを使っているということは、AIとの会話の中を含め、顧客が買い物をしている場所ならどこにでも自動的に存在できるということです」と語っています。この自動化により、ブランドは新しいチャネルへの対応に追われることなく、自社のブランドと顧客に集中できます。

加盟店のブランドと顧客関係を保護

重要なのは、この新機能が加盟店のビジネスモデルを損なわない設計になっている点です。ChatGPT内で商品が表示される際、ストア名が明確に表示されるため、買い物客は誰から購入しているかを正確に把握できます。

注文はShopify管理画面に適切な帰属情報と透明な手数料とともに流れ込みます。加盟店は販売者としての地位を維持し、買い物客との関係を所有し、Instant Checkout体験を経由するか自社のオンラインストアに誘導するかをコントロールできます。

Vanessaは、「私たちの目標は、常に加盟店を最先端に保つことです。拡大するにつれて、加盟店はブランドと買い物客との関係を中心に据えたまま、自動的に新しい販売方法を解放していきます」と説明しています。

エージェント・コマースの実現

ShopifyはこれをAI時代の新しいコマース形態として位置づけています。より多くの人々がショッピングの決定にAIを活用するようになる中、Shopifyはそうした会話が自社の加盟店につながるよう取り組んでいます。

これは「エージェント・コマース」と呼ばれる概念の実践です。AIとの会話内で直接取引を可能にし、既存の仕組みを置き換えることなく、加盟店に新しい接点を提供します。

結果として、起業家は新しいチャネルの使い方を理解することに時間を費やす必要がなくなり、商品、買い物客、ビジネスといった本質的な部分により多くの時間を使えるようになります。他社がAIの可能性について議論している間、Shopifyの加盟店はすでにChatGPTを通じて販売を開始しています。

日本のEC事業者への影響

日本市場においても、この動きは無視できない変化をもたらす可能性があります。現在、日本のEC事業者の多くは楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonといったモールへの出店に加え、自社ECサイトを運営しています。Shopifyを利用している事業者であれば、今回の機能により、ChatGPTという新しい販売チャネルが自動的に追加されることになります。

特に注目すべきは、この機能が「デフォルトで利用可能」という点です。加盟店側で複雑な設定や追加の開発作業を行う必要がなく、Shopifyのプラットフォームを利用しているだけで、自動的にChatGPT内での販売が可能になります。

ただし、日本語でのChatGPT対応や、日本市場特有の決済方法(コンビニ決済、代引きなど)への対応状況については、今後の展開を注視する必要があります。

実装時期と今後の展開

Tobi Lütkeの投稿によれば、この機能の展開は「とても近いうち」とされていますが、具体的な日付は明らかにされていません。また、Shopify公式サイトには専用ページ(https://www.shopify.com/chatgpt)が用意されており、最新情報はこちらで確認できます。

Vanessaは、「私たちは、インディーズブランドから有名企業まで、すべての人が全く新しい方法で買い物客にリーチできるよう支援しています」と述べています。規模や経験に関係なく、すべての加盟店が成長できるツールの構築に注力している姿勢が示されています。

コマースの未来は「変化への対応」ではなく「準備」

Shopifyは今回の発表を通じて、コマースの未来に対する明確なビジョンを示しました。それは、変化に反応するのではなく、最初から変化に備えておくという考え方です。

AI技術の進化に伴い、消費者の購買行動は今後さらに変化していくでしょう。検索エンジンやSNSに加えて、AIアシスタントとの対話が日常的なショッピング手段になる可能性は高まっています。そうした変化が訪れたとき、Shopifyを利用している事業者は自動的にその波に乗ることができる。それが今回の提携の本質的な価値です。

日本のEC事業者にとっても、プラットフォーム選択の重要性を再認識させられる発表と言えるでしょう。単なる「ネットショップ構築ツール」ではなく、「未来のコマース基盤」としてのShopifyの位置づけが、より明確になった形です。

引用: shopify


投稿者: 齋藤竹紘

齋藤 竹紘(さいとう・たけひろ) 株式会社オルセル 代表取締役 / 「うるチカラ」編集長

   
Experience|実務経験
2007年の株式会社オルセル創業から 17 年間で、EC・Web 領域の課題解決を 4,500 社以上 に提供。立ち上げから日本トップクラスのEC事業の売上向上に携わり、 “売る力” を磨いてきた現場型コンサルタント。
Expertise|専門性
技術評論社刊『今すぐ使えるかんたん Shopify ネットショップ作成入門』(共著、2022 年)ほか、 AI × EC の実践知を解説する書籍・講演多数。gihyo.jp
Authoritativeness|権威性
自社運営メディア 「うるチカラ」で AI 活用や EC 成長戦略を発信し、業界の最前線をリード。 運営会社は EC 総合ソリューション企業株式会社オルセル
Trustworthiness|信頼性
東京都千代田区飯田橋本社。公式サイト alsel.co.jp および uruchikara.jp にて 実績・事例を公開。お問い合わせは info@alsel.co.jp まで。

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