Sunoは2026年9月9日、権利者と共同開発した新モデルv6を公開しました。
商品動画やショート動画のBGMを生成AIで作っている店舗にとって、今回の発表は「使ってよいのか」という前提そのものが動く話です。TechCrunchによると、Suno は旧モデルを段階的に引退させ、v6 世代へ全面移行すると説明しています。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者の実務目線で整理します。結論を先に言えば、モデルが権利者公認になっても、店舗側が確認すべき対象は学習データではなく利用規約の商用利用条件のほうです。

Suno v6とは何か、EC視点で何が変わったのか
Suno v6 とは、Suno がワーナー・ミュージック・グループ、BMG、そしてディストリビューターの Believe との提携に基づいて開発した新世代の音楽生成モデル群のことです。Suno の発表では、v6 が Pro・Premier 向けのフラッグシップ、v6-wild が同じく有料プラン向けの実験的モデル、v6-mini が全ユーザーが使える高速版という3本立てで、以後は旧モデルを引退させて v6 世代に一本化するとされています。同社は v6 について、旧バージョンの学習に使ったデータは使用していないと説明しています。
機能面では、曲の一部分だけをプロンプトで書き換える、歌詞の一語だけを差し替える、複数の自作曲を組み合わせてマッシュアップを作る、サンプルから特定の楽器を分離して新しいビートを組む、といった編集操作が言葉で指示できるようになりました。テキストだけでなく音声・画像・動画を参照素材にできる点も含め、商品イメージに合わせて既存トラックを微調整する用途と相性が良い変更です。
背景には権利者との関係修復があります。Suno は2025年11月にワーナーと和解し、2026年8月にBMGと提携、9月8日にはBelieve と TuneCore との提携を発表しました。一方で Sony と Universal Music Group による訴訟、アーティスト側の提訴、データ侵害を巡る集団訴訟は継続中で、発表前日にはYouTube の音声を学習に使ったことを認めたと報じられています。つまり v6 は「全面的に安全になった」ではなく「権利者と組んだ系統が1本できた」という段階です。最高プロダクト責任者の Jack Brody は、今回の狙いについて権利者やアーティストの収益機会を増やすことだと TechCrunch に語っています。資金調達額は PitchBook のデータで累計8億1,900万ドル超に達しています。
論点はモデルではなく規約、商用利用の線引きは3か所
結論として、日本のEC事業者が確認すべきなのは、学習データの出自ではなく、自社の契約プランでその音源を商用利用してよいかどうかです。Suno の利用規約を読むと、線引きは大きく3か所にあります。
1つ目はプランです。無料・ベーシックの利用者は、生成物を個人的かつ非商用の目的でのみ使うと定められています。Pro・Premier の加入者に対しては Suno が生成物の権利を譲渡しますが、規約は同時に、機械学習の性質上その生成物に著作権が発生する保証はしないとも明記しています。2つ目はダウンロードです。商用利用が認められるのは、プランごとのダウンロード枠の範囲で正規チャネルからダウンロードした音源に限られ、ダウンロードしていない音源の商用利用は認められません。録音や画面収録での取得も禁止されています。3つ目はリミックスで、こちらはプランに関係なく非商用のみとされています。
実務に落とすと、外注の動画編集者やデザイナーが無料プランで作った音源をそのまま納品してきた場合、それを楽天市場の商品ページ動画やAmazonの商品動画、TikTok・Instagramの広告クリエイティブに載せた時点で規約違反になり得るということです。誰のアカウントで、どのプランで、いつダウンロードした音源かという記録が、そのまま店舗側のリスク管理になります。なお規約は、透かしやフィンガープリント、メタデータの除去・改変を禁止しており、加えて、生成物を Suno の外で使う場合はその配信先プラットフォームの規約も別途適用されると明示しています。各モールやSNSがAI生成音源にどこまで表示を求めるかは公表情報が限られており、この点は要確認です。
明日から動かせる3つの初動
第1に、公開中の商品動画で使っている音源の棚卸しです。どのサービスで、どのアカウントの、どのプランで生成しダウンロードしたかを1行ずつ記録します。数十本規模でも半日あれば終わる作業で、後から遡って調べるより圧倒的に安く済みます。
第2に、外注契約と発注書の文言修正です。「商用利用が可能なプランで、正規のダウンロード機能を使って取得した音源であること」を成果物の要件に加え、あわせて音源の生成サービス名とアカウント名義の申告を求めます。無料プラン由来の音源が混ざる事故は、ここで止まります。
第3に、旧モデル引退への備えです。Suno は v6 への一本化を明言していますが、規約上、いったん取得したダウンロード音源の商用利用権は、ダウンロード枠を使い切った後も、解約・ダウングレード後も存続すると定められています。つまり過去の動画を慌てて差し替える必要は基本的にありません。落ち着いて、新規制作分から v6 に切り替えるのが合理的です。あわせて、透かしを前提とした運用に切り替え、モール側の表示ルールの更新を定期的に確認しておくと安全です。
まとめ
Suno v6 は、権利者と組んだライセンス系統のモデルが初めて主力になったという意味で大きな一歩ですが、EC事業者にとっての判断材料はモデルの出自ではなく規約です。無料プランは非商用のみ、商用利用は正規ダウンロードした音源のみ、リミックスは非商用のみ。この3点を社内と外注先で共有し、音源の取得記録を残す運用に切り替えることが、商品動画を安心して増やすための最短ルートです。
参考文献
- TechCrunch: Suno replaces its AI models with a new one trained on licensed music as copyright suits pile up
- Suno: Introducing v6
- Suno: Terms of Service
- Suno: A New Partnership with Believe and TuneCore
- Music Business Worldwide: Suno v6 AI music models launch in partnership with WMG, BMG and Believe
- Axios: Suno launches v6 AI music models with Warner Music Group, BMG
あわせて、Sunoの透かし導入とダウンロード制限、ミュンヘン地裁がSunoの著作権侵害を認定した件、ソニーとワーナーによるAI著作権提訴もあわせてご覧ください。
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。