Yahoo!ショッピングが2026年9月から有料化──12年続いた「eコマース革命」の終焉と、中小EC事業者がとるべき戦略

投稿日: カテゴリー Yahoo!Shopping

2026年2月27日、LINEヤフーがYahoo!ショッピングの出店プランを2026年9月から変更すると発表しました。2013年10月、孫正義氏の「eコマース革命」宣言によって実現した月額利用料・売上ロイヤリティの完全無料化。あれから12年、ついにその時代に幕が下ろされることになります。

このニュースを受けて「すぐ退店すべきか」「そのまま続けるべきか」と判断に迷っているEC事業者の方は少なくないはずです。本記事では、今回の料金改定の全容を整理した上で、中小EC事業者がこの変化をどう受け止め、どう動くべきかを考えます。

料金改定の全容──何が変わり、何が変わらないのか

今回の変更点を整理します。

月額システム利用料は無料から1万円(税抜)に、売上ロイヤリティは無料から2.5%に、それぞれ有料化されます。一方でキャンペーン原資負担は1.5%から無料に、PRオプションは3%から2%に値下げとなります。初期費用は無料のまま変更ありません。

さらに注目すべきは、LINEショッピングタブ経由の売上に対する「チャネル掲載料」(2〜4%、カテゴリにより異なる)の新設です。LINEヤフーはLINEショッピングタブを2025年9月以降に一部ユーザー向けに公開を開始しており、2026年4月以降にYahoo!ショッピング商品のテスト掲載を開始、同年6月に新プランの詳細を案内し、9月1日に新プランが適用されるスケジュールです。

つまり「有料化と引き換えにLINEの1億人の顧客基盤にアクセスできるようにする」というのがLINEヤフー側のロジックといえます。AIエージェントによる購買体験の向上にも取り組んでおり、2月25日には生成AIが商品選びから配送確認まで支援する「Yahoo!ショッピング エージェント」の提供開始も発表されています。

eコマース革命とは何だったのか──2万店舗から120万店舗への光と影

2013年10月、孫正義氏は「新規出店する費用を下げて多くの方々にeコマースで儲けるチャンスを作り、日本一のショッピングサービスになる」と宣言しました。その結果は劇的でした。革命前に約2万店舗だった出店数は、わずか数年で数十万店舗に急増。2025年時点では120万店舗を超えるまでに膨れ上がっています。

しかし、この数字には大きな落とし穴があります。120万店舗の大半は休眠ストアです。無料だから「とりあえず出店しておこう」という事業者が大量に流入し、結果としてモール内は休眠ストアで溢れかえることになりました。出店数では楽天市場の約5.5万店舗をはるかに凌ぎますが、取扱高では楽天やAmazonの後塵を拝し続け、「日本一のショッピングサービス」というビジョンは実現しませんでした。

今回の有料化で、こうした休眠ストアの大量退店は確実に起きるでしょう。

中小EC事業者にとって何が本当の問題なのか

Yahoo!ショッピングの有料化そのものよりも、中小EC事業者が直面している本質的な課題に目を向ける必要があります。

国内のBtoC-EC市場は2024年に26.1兆円(前年比5.1%増)と成長を続けていますが、物販系分野に限ると前年比3.7%増の15.2兆円で、成長率は2年連続で5%を切っています。市場は成長しているものの、その恩恵を受けているのは大手企業が中心です。

たとえば楽天市場の自転車市場をリサーチすると、市場全体は昨対比ほぼ横ばいなのに対し、国内最大手の量販店は昨対比50%超えの成長。一方で中小ストアはマイナス20%〜50%以上という厳しい数字が並んでいます。これは自転車市場に限った話ではなく、多くのカテゴリで同様の二極化が進んでいると考えられます。

大手の参入、海外セラーの台頭、さらにはモール自体の直営強化。楽天で「エリクシール」と検索してみてください。楽天24(楽天の直販)の商品で埋め尽くされているのが現実です。

有料化後の判断基準──残るべきか、撤退すべきか

では、Yahoo!ショッピングの有料化に対して中小EC事業者はどう動くべきでしょうか。

まず冷静にコスト計算をしましょう。月商30万円のストアであれば、月額1万円+ロイヤリティ7,500円=約17,500円の新規負担で、売上比は約5.8%です。キャンペーン原資1.5%が無料になることを差し引いても、実質的なコスト増は避けられません。月商10万円以下のストアにとっては、かなりシビアな判断を迫られることになります。

ただし、退店が大量に発生するということは、残ったストアにとっては検索順位やカート獲得で有利になる可能性があるということでもあります。さらにLINEショッピングタブとの連携によって、これまでYahoo!ショッピングにはアクセスしなかった層にリーチできるチャンスも生まれます。

市場が伸び悩む局面では「面を取る」──つまり販路を広げておくことが戦略のセオリーです。市場が伸びているときは一つのモールに集中していても自然と売上が伸びますが、成長が鈍化しているときこそ、なるべく多くの売場で露出を確保しておく必要があります。

その観点から考えると、Yahoo!ショッピングを有料になっても維持するという選択は十分にあり得ます。一方で、同じコストをかけるなら楽天の2店舗目・3店舗目を出すという選択肢も検討すべきです。実際に、楽天を複数店舗運営していたおかげで売上を維持できている、というショップは少なくありません。

今年EC事業を成長させるための3つのカギ

厳しい環境だからこそ、中小EC事業者が意識すべきポイントは明確です。

1つ目は、売場でも商品でも面を増やすこと。単一モール依存のリスクは年々高まっています。Yahoo!ショッピングの継続判断も含め、楽天、Amazon、自社EC、越境ECなど複数の販路で面を広げることが重要です。

2つ目は、自己流の運営をやめて、戦略的で論理的な運営をすること。データに基づいた商品戦略、広告運用、価格設定ができているかどうかで、同じ市場にいても結果は大きく変わります。

3つ目は、AIの活用でできる限り運営業務を効率化してコストを削減し、浮いた時間やコストを成長のために使うこと。複数モールを運営する際の商品登録、在庫管理、広告運用、顧客対応など、AIで効率化できる業務は急速に増えています。

Yahoo!ショッピングの有料化は、12年間続いた「無料だからとりあえず出店」の時代が終わることを意味します。これは裏を返せば、本気で運営している事業者にとって、モール内の競争環境が健全化するチャンスでもあります。重要なのは、この変化に受動的に反応するのではなく、自社の販路戦略を改めて見直すきっかけにすることです。

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。 https://uruchikara.jp/contact/


投稿者: 齋藤竹紘

齋藤 竹紘(さいとう・たけひろ) 株式会社オルセル 代表取締役 / 「うるチカラ」編集長     Experience|実務経験 2007年の株式会社オルセル創業から 17 年間で、EC・Web 領域の課題解決を 4,500 社以上 に提供。立ち上げから日本トップクラスのEC事業の売上向上に携わり、 “売る力” を磨いてきた現場型コンサルタント。 Expertise|専門性 技術評論社刊『今すぐ使えるかんたん Shopify ネットショップ作成入門』(共著、2022 年)ほか、 AI × EC の実践知を解説する書籍・講演多数。gihyo.jp Authoritativeness|権威性 自社運営メディア 「うるチカラ」で AI 活用や EC 成長戦略を発信し、業界の最前線をリード。 運営会社は EC 総合ソリューション企業株式会社オルセルTrustworthiness|信頼性 東京都千代田区飯田橋本社。公式サイト alsel.co.jp および uruchikara.jp にて 実績・事例を公開。お問い合わせは info@alsel.co.jp まで。

お問い合わせ