投稿者 齋藤竹紘投稿日: 2025年7月26日2025年7月26日カテゴリー EC×AI活用

EC業界は2025年、AI技術の急速な進化により大きな転換点を迎えています。ChatGPTやClaude、Geminiなどの生成AIが日常的なツールとなり、EC運営の効率化と顧客体験の向上が競争力の鍵となっています。本記事では、日本のEC事業者に人気の4つのショッピングカート（Shopify、MakeShop、カラーミーショップ、楽天市場）を、AI時代に求められる機能と実装のしやすさという観点から徹底比較します。

AIOとは？なぜEC事業者が今すぐ対策すべきなのか

AIO（AI Optimization）とは、「AI最適化」を意味する新しい概念です。従来のSEO（検索エンジン最適化）が「人間が検索した時に上位表示される」ことを目指していたのに対し、AIOは「AIが情報を収集・理解する時に選ばれやすくする」ことを目指します。

なぜこれが重要なのでしょうか？2025年現在、GoogleのAI Modeは1億人以上のユーザーを獲得し、ChatGPTは5億人以上が利用しています。これらのAIは、ユーザーの質問に対して、Web上の情報を収集・分析して回答を生成します。つまり、あなたのECサイトの情報がAIに正しく理解されなければ、AIの回答に含まれず、結果として顧客を逃してしまうのです。

例えば、顧客が「30代女性向けの肌に優しい化粧品を教えて」とAIに質問した時、あなたの商品がどんなに素晴らしくても、AIが理解できる形で情報が整理されていなければ、推薦リストに載ることはありません。これがAIO対策の本質です。

ショッピングカートが備えるべき3つのAIO機能

1. 構造化データ（JSON-LD）の自動生成

構造化データとは、AIやGoogleが理解しやすいように、商品情報を決められた形式で記述したものです。例えるなら、本の「目次」のようなもの。人間は本文を読めば内容を理解できますが、AIには「これは商品名」「これは価格」「これは在庫状況」と明確に教える必要があります。

良いショッピングカートは、この構造化データを自動で生成してくれます。商品を登録するだけで、AIが理解できる形式に自動変換されるため、特別な知識は不要です。

2. AI連携による業務自動化

現代のEC運営では、以下のような業務をAIで自動化できるかが成功の鍵となります：

• 商品説明の自動生成：商品画像をアップロードするだけで、魅力的な説明文を作成
• 在庫管理の最適化：売れ行きを予測して、適切な在庫量を提案
• 顧客対応の自動化：よくある質問に24時間365日自動で回答
• 価格の動的調整：競合の価格や需要に応じて、利益を最大化する価格を設定

これらの機能がショッピングカートに統合されているか、簡単に連携できるかが重要です。

3. データ分析とパーソナライゼーション

AIの真価は、大量のデータから顧客一人ひとりに最適な体験を提供することにあります。優れたショッピングカートは、以下のような機能を提供します：

• 顧客行動の分析：どの商品をどれくらい見たか、何を買ったかを分析
• 個別の商品推薦：過去の購買履歴から、その人に最適な商品を提案
• 動的なコンテンツ表示：訪問者によって異なるバナーや商品を表示

これらの機能により、まるで優秀な店員が一人ひとりの顧客に寄り添って接客するような体験を、オンラインで実現できます。

AI時代のECに必要な3つの要素

2025年のEC市場で成功するためには、以下の3つの要素が不可欠となっています。第一に、検索エンジンのAI化への対応です。GoogleのAI Modeをはじめ、検索結果がAIによって生成される時代において、構造化データ（JSON-LD）の実装は必須となっています。第二に、業務自動化とAI連携です。商品登録から在庫管理、顧客対応まで、あらゆる業務をAIで効率化できるかが、競争力を左右します。第三に、データの活用と分析です。顧客行動データをAIで分析し、パーソナライズされた体験を提供することが、売上向上の鍵となります。

4大ショッピングカートのAIO対応度を徹底比較

それでは、実際に各ショッピングカートがどの程度AIOに対応しているか、詳しく見ていきましょう。

観点	Shopify	MakeShop	カラーミーショップ	楽天市場
JSON-LD（構造化データ）	◎ 自動出力 Online Store 2.0テーマは製品スキーマを標準搭載し「追加設定なし」でリッチリザルト対応	◯ 一部テンプレのみ自動 公式「Complete」テンプレは商品＋レビューの構造化データを自動挿入。他テンプレは手動	△ 手動実装が前提 公式ガイドでもコピー&ペースト例を提示し「国産カートは自動が少ない」と明言	◯ サーバ側で自動生成（ショップ側は編集不可） 楽天が一括管理するため、個別最適化は不可能
AI／自動化連携の自由度	◎ API・Webhook・Shopify Flow・Sidekick等で生成AIや外部LLMをフル活用可	◯ クリエイターモード＋公開APIで連携可能だが、ノーコード連携は限定的	◯ HTML/JS編集は自由だが公式アプリ市場が小さく、生成AI連携は自己実装が多い	△ RMSは<script>禁止のため外部AIウィジェット不可。AI活用はデータダウンロード→外部処理が中心
robots.txt／canonical	◎ 自動生成 完全制御可能（インデックス可／重複防止）	◯ 生成可 基本機能あり（要確認）	◯ 生成可 基本機能あり（要確認）	△ 自動生成 楽天が一括管理（編集不可）
集客エコシステム	◎ SNS/広告アプリ豊富 Instagram、Facebook、TikTok等と深い連携	◯ Yahoo/LINEなど国内広告連携 日本市場に特化	△ 最低限 広告は外部サービス利用	◎ 楽天内トラフィック＆RPP広告 月間1億人以上の集客力
月額費用（目安）	約4,500円〜 ＋アプリ費用	約7,000円〜 初期費用あり	約900円〜 最安値クラス	約20,000円〜 ＋売上手数料
総合AIO適性	◎ 外部流入＋自動運用を狙うなら最有力 AI時代の標準プラットフォーム	◯ 国内モール連携＋レビュー星を出したいなら有力 日本市場に最適化	△ 低コストで小〜中規模なら妥当 技術力があれば活用可能	△ モール内完結なら強いが、AI活用は制限大 楽天の方針に従うしかない

2025年の新たな評価ポイント

上記の基本機能に加えて、AI時代には以下の要素も重要になっています：

1. AIエージェント対応

• Shopify：Shopify Sidekickが本格的なAIエージェントとして機能。音声指示も可能
• MakeShop：Make.comとの連携でAIエージェント構築可能（要技術知識）
• カラーミーショップ：対応なし（外部サービス併用が必要）
• 楽天市場：対応なし（楽天が提供する機能のみ）

2. 生成AI統合の深さ

• Shopify：Shopify Magicで商品説明、画像編集、FAQ作成まで統合
• MakeShop：外部AI連携は可能だが、統合度は低い
• カラーミーショップ：基本的に外部AIを別途契約して利用
• 楽天市場：店舗側でのAI活用は極めて限定的

3. データ分析のAI活用

• Shopify：AI予測分析、顧客セグメント自動化が標準
• MakeShop：基本的な分析機能のみ
• カラーミーショップ：シンプルな売上分析程度
• 楽天市場：楽天が提供する分析ツールに依存

Shopify：AI統合で圧倒的な優位性を確立

Shopifyは、AI時代のEC運営において最も先進的なプラットフォームとして位置づけられます。その最大の強みは、構造化データの自動生成と、豊富なAI連携オプションです。

構造化データについては、Online Store 2.0テーマが標準で製品スキーマを搭載し、追加設定なしでリッチリザルトに対応しています。これにより、GoogleのAI検索でも商品情報が適切に表示され、集客力の向上が期待できます。

AI連携においては、Shopify MagicとShopify Sidekickという2つの強力なツールを提供しています。Shopify Magicは、商品説明の自動生成、画像の背景除去、FAQの作成など、コンテンツ制作を大幅に効率化します。実際に、ある日本のアパレルECでは、Shopify Magicを活用することで、商品登録時間を従来の30分から5分に短縮し、月間100商品の登録で約41時間の工数削減を実現しました。

Shopify Sidekickは、チャットボット形式のAIアシスタントで、在庫管理、注文処理、レポート作成、タスク自動化まで、あらゆる業務をサポートします。音声での指示も可能で、倉庫作業中でも両手を使いながら在庫確認ができるなど、実用性の高い機能を備えています。

さらに、Shopify Flowという自動化ツールは、マーケティング、注文処理、在庫管理、不正防止など、複雑なワークフローをノーコードで構築できます。936件のレビューで4.7の高評価を得ており、特に定型業務の自動化において威力を発揮します。Google Sheets、Slack、B2Bシステムとの連携も可能で、AIと組み合わせることで、より高度な自動化を実現できます。

外部AI連携も充実しており、8,000以上のアプリとの連携が可能です。特に注目すべきは、AI動画生成、ソーシャルメディアコンテンツ自動作成、在庫予測など、最新のAI技術を活用したアプリが続々と登場していることです。月額4ドルから利用できるFlow Companionのような拡張アプリを使えば、Google GeminiやAnthropic Claudeとの連携も簡単に実現できます。

MakeShop：国内市場に特化したAI対応

MakeShopは、日本国内のEC事業者向けに最適化されたプラットフォームとして、独自の強みを持っています。特に注目すべきは、Yahoo!やLINEなど国内主要プラットフォームとの連携が充実していることです。

構造化データについては、公式の「Complete」テンプレートが商品とレビューのJSON-LDを自動挿入する機能を備えています。ただし、この機能は特定のテンプレートに限定されており、カスタムテンプレートを使用する場合は手動での実装が必要となります。

AI連携については、クリエイターモードと公開APIを通じて外部AIサービスとの連携が可能です。ただし、Shopifyのようなノーコード連携は限定的で、ある程度の技術知識が必要となります。一方で、Make.comなどの自動化プラットフォームを活用することで、2,000以上のアプリとの連携が可能になり、AIエージェントを使った高度な自動化も実現できます。

MakeShopの強みは、日本市場に特化した機能です。例えば、レビュー機能による星評価の表示は、日本の消費者にとって重要な購買判断材料となります。また、国内の決済手段や配送業者との連携が充実しており、日本のEC事業者にとって使いやすい環境が整っています。

カラーミーショップ：低コストでシンプルな運用

カラーミーショップは、低コストで始められるECプラットフォームとして、中小規模のEC事業者に人気があります。しかし、AI時代の要求に対しては、いくつかの課題があります。

構造化データについては、標準テーマには自動マークアップ機能がなく、手動での実装が前提となっています。公式ガイドでも、コピー&ペーストでJSON-LDを追加する方法が案内されており、技術的なハードルが高いのが現状です。

AI連携についても、公式アプリ市場が小さく、生成AIとの連携は自己実装が中心となります。HTML/JavaScript編集の自由度は高いものの、ノーコードでAIを活用したい事業者にとっては、やや敷居が高いプラットフォームと言えます。

ただし、シンプルな運用を求める事業者にとっては、余計な機能がなく、必要最小限の機能で運営できるメリットもあります。月額900円からという低価格で始められるため、まずはECを始めてみたいという事業者には適した選択肢と言えるでしょう。

楽天市場：モール型の強みと制約

楽天市場は、独立したECサイトではなくモール型のプラットフォームとして、独特の位置づけにあります。

構造化データについては、楽天のサーバー側で自動生成されますが、店舗側での編集は不可能です。これは、楽天全体での統一性を保つための仕様ですが、独自の最適化を行いたい事業者にとっては制約となります。

AI連携については、最も制限が厳しいプラットフォームです。RMS（楽天の管理システム）では<script>タグの使用が禁止されているため、外部AIウィジェットの設置ができません。AI活用は主にデータをダウンロードして外部で処理する形となり、リアルタイムな連携は困難です。

しかし、楽天市場の最大の強みは、月間1億人以上が訪れる巨大な集客力です。楽天内でのトラフィックとRPP広告（楽天の広告システム）による集客は、独立型ECサイトでは実現困難な規模を誇ります。また、楽天ポイントや楽天カードとの連携により、顧客の購買意欲を高める仕組みが整っています。

まとめ：あなたに最適なカートの選び方

各ショッピングカートには明確な特徴があり、事業規模や目的によって最適な選択は異なります。

Shopifyがおすすめの事業者：

• AI活用で業務効率化を最大化したい
• 海外展開も視野に入れている
• 最新技術を積極的に取り入れたい
• 月商100万円以上を目指している

MakeShopがおすすめの事業者：

• 国内市場に特化して展開したい
• Yahoo!やLINEとの連携を重視する
• ある程度の技術知識がある
• 日本の商習慣に合った機能が必要

カラーミーショップがおすすめの事業者：

• まずは低コストでECを始めたい
• シンプルな機能で十分
• 技術的なサポートは最小限でOK
• 月商50万円以下の小規模運営

楽天市場がおすすめの事業者：

• 集客を楽天に任せたい
• ブランド力より即効性を重視
• 楽天ユーザーをターゲットにしている
• 手数料を払ってでも売上を確保したい

2025年のEC市場では、AI活用の差が売上の差に直結します。特に、構造化データの実装とAI連携による業務自動化は、もはや「あったら良い」機能ではなく「なければ勝てない」必須機能となっています。

自社の現状と将来の目標を明確にした上で、最適なショッピングカートを選択することが、AI時代のEC成功への第一歩となるでしょう。どのカートを選ぶにせよ、重要なのは「今すぐ始める」ことです。AI技術は日々進化しており、早期に導入して経験を積んだ事業者ほど、大きなアドバンテージを得ることができます。

あなたのEC事業の成功を心から願っています。