投稿者 齋藤竹紘投稿日: カテゴリー Grok
シリコンバレーを揺るがす巨大訴訟の幕開け
2025年8月26日、テック業界に衝撃が走りました。イーロン・マスク氏が率いるxAIが、AppleとOpenAIを米国連邦裁判所に提訴したのです。訴訟の核心は、AppleがChatGPTをiPhoneに独占的に統合したことで、AI市場における公正な競争を阻害しているという主張です。
この訴訟は、単なる企業間の争いではありません。AI技術が社会インフラとして急速に浸透する中、プラットフォーマーによる市場支配のあり方を問う、極めて重要な問題提起となっています。
AppleとOpenAIの提携が生んだ「独占」の構図
2024年6月に発表されたAppleとOpenAIの提携は、当初から業界に波紋を呼んでいました。ChatGPTがSiriや文章作成機能、カメラ機能に深く統合され、iPhoneユーザーにとって事実上のデフォルトAIアシスタントとなったのです。
xAIの訴状によれば、この提携により「ChatGPTは単なるデフォルトではなく、Appleのスマートフォンに第一者統合された唯一の生成AIチャットボット」となり、「数十億の潜在的なプロンプトへの独占的アクセス」を獲得したとされています。
さらに訴訟では、AppleがApp Storeのランキング操作やアプリのアップデート遅延を通じて、xAIが開発するGrokを不利な立場に置いているとも主張しています。Appleは他のAIチャットボットとの統合も計画していると表明していましたが、2024年12月のChatGPT統合以降、新たなパートナーシップは発表されていません。Googleとの間でGemini統合に関する協議は行われているものの、具体的な進展は見られていない状況です。
マスク氏とサム・アルトマン氏の因縁が深まる対立
今回の訴訟は、マスク氏とOpenAIのCEOサム・アルトマン氏との間の確執をさらに深めるものとなりました。マスク氏は2015年にOpenAIの共同創業者として参画しましたが、2018年にアルトマン氏との衝突を経て取締役会を去っています。
その後、2023年にマスク氏は独自のAI企業xAIを立ち上げ、今年初めにはソーシャルメディアプラットフォームXと統合しました。マスク氏は既にカリフォルニア州でもOpenAIを相手取った訴訟を起こしており、利益追求が契約違反に当たると主張しています。
興味深いことに、裁判資料によれば、マスク氏は今年初めにOpenAIの中核資産の買収を試みたものの拒絶され、さらにMetaのCEOマーク・ザッカーバーグ氏をこの買収計画に引き込もうとしていたことも明らかになりました。
AI市場の「スーパーアプリ」化がもたらす脅威
訴訟では、AppleがAI駆動の「スーパーアプリ」の発展を妨げることで、スマートフォンの独占を守ろうとしているとも指摘されています。これらのスーパーアプリは、従来のアプリスイートに取って代わる可能性があり、Appleの収益源に対する脅威となっています。
実際、この主張は米国司法省が昨年Appleに対して起こした訴訟の内容と意図的に重なるように構成されています。司法省は、Appleが高利益率のサービス事業を守るために、このようなアプリの開発を抑制していると主張していました。
マスク氏は、Apple-OpenAI提携が発表された2024年6月の時点で、この提携を「受け入れがたいセキュリティ違反」と非難し、OpenAIがiPhoneユーザーのデータにアクセスできるようになると主張。自身の企業でiPhoneの使用を禁止するとまで宣言していました。
業界の反応と今後の展望
OpenAIの広報担当者は、「この最新の訴訟は、マスク氏の継続的な嫌がらせパターンと一致している」と反論しています。一方、Appleは今月初めにマスク氏が訴訟を起こすと発表した際、同社のApp Storeは「公正で偏見のない設計」であると述べていましたが、今回の訴訟に対する即座のコメントは控えています。
訴訟では、OpenAIとAppleが「反競争的な計画に関する誤情報を広めるためにXのプラットフォームも利用している」という主張も含まれており、情報戦の様相も呈しています。
今月初め、マスク氏はアルトマン氏を「嘘つき」と呼び、自身の投稿を宣伝するためにXを操作したという示唆に反論。「私のフォロワー数があなたの50倍あるにもかかわらず、あなたの投稿は私の多くの投稿よりもはるかに多くの閲覧数を得ている！」と応酬していました。
AI業界の未来を左右する訴訟の行方
この訴訟は、急成長するAI市場における競争と独占の問題に新たな光を当てています。プラットフォーマーによるAI統合が、市場の健全な競争をどこまで制限できるのか。その境界線を巡る議論は、今後のAI産業の発展方向を大きく左右することになるでしょう。
特に注目すべきは、従来のアプリエコシステムがAIによって根本的に変革される可能性です。AIスーパーアプリの登場により、現在のアプリストア中心のビジネスモデルが崩壊する可能性も示唆されており、これは単なる企業間の争いを超えた、デジタル社会の未来像を巡る戦いとも言えます。
日本市場においても、グローバルプラットフォーマーのAI戦略は大きな影響を与えることが予想されます。今回の訴訟の行方は、日本企業がAIパートナーシップを検討する際の重要な判断材料となることでしょう。
引用:ft.com
