「市場調査はAIで効率化できたけど、その先の事業戦略を立てるような、もっと頭を使う作業はAIに任せられるのだろうか?」
そんな疑問にお答えするのが、このシリーズ「日本語で学ぶOpenAI Academy」の第2回です。
このシリーズでは、OpenAIが公式に提供する学習プラットフォームの中から、特にビジネスに直結する「OpenAI for Business」コレクション(全13本)の内容を、一つずつ日本語で徹底解説しています。
今回のテーマは、第1回の「市場調査」から一歩踏み込んだ、「Strategic planning with ChatGPT(ChatGPTを使った戦略立案)」です。
複雑な要素が絡み合う戦略立案において、ChatGPTがどのように思考し、人間をサポートしてくれるのか。その具体的な方法論を、この記事で解き明かしていきます。
今回のキーポイント:最新フラッグシップモデル「GPT-5 Pro」の活用
注:OpenAI Academyの元動画では「01 Proモード」という、今となっては古い開発段階のモデルが使われています。本記事では、その能力を現在の最新フラッグシップモデルである「GPT-5 Pro」に置き換えて解説します。これにより、動画の知識を今日の文脈で実践的に活用できます。
戦略立案のような複雑なタスクには、GPT-5 Proが最適です。このモデルは、複数のステップにまたがる複雑な問題を、人間のように深く思考し、解決する能力に長けています。
本編:優れた戦略文書を数分で作成する3ステップ
動画では、スニーカー会社が「日本市場への参入戦略」を立てるという設定で、AIの活用法が示されています。
ステップ1:課題の網羅的なインプット
優れた戦略は、優れた問いから生まれます。まず、人間がやるべきことは、戦略を立てる上で答えが必要な「問い」を、箇条書きで網羅的にAIに投げかけることです。
動画の例:
- 日本のスニーカー市場の正確な規模は?
- 主要な消費者セグメントはどこか?
- 最も人気のある国内・国外ブランドは?
- 効果的なマーケティングチャネルと戦略は?
- 文化的・社会的な考慮事項は?
- ECサイトと実店舗のどちらに注力すべきか?
このように、初期段階で人間が考えるべき論点をすべて洗い出し、GPT-5 Proにインプットします。これは、AIに思考の「地図」を渡すようなものです。
ステップ2:AIによる思考プロセスの可視化
指示を受け取ったGPT-5 Proは、すぐには結論を出しません。まず、「思考の連鎖(Chain of Thought)」と呼ばれる機能で、これからどのような計画と論理で答えを導き出すか、その思考プロセスをユーザーに開示します。
例えば、「まず市場分析を行い、次いで消費者トレンドを調査し、競合を特定し、最後にマーケティング戦略を立案する」といった形で、自らのタスクを分解し、計画を立てる様子を見せてくれます。
このプロセスを人間が確認することで、AIの思考が正しい方向に進んでいるかをチェックし、安心して後工程を任せることができます。
ステップ3:詳細な戦略レポートの生成と活用
しばらくすると、AIは最初に入力された全ての問いに対して、非常に詳細で構造化された戦略レポートを生成します。
このレポートには、市場規模の具体的な数値、消費者セグメントの詳細な分析、競合プレイヤーのリストアップ、そして具体的なマーケティング戦略の提案まで、すべてが含まれています。
動画が強調しているのは、このプロセスの驚異的なスピードです。通常であれば、複数の担当者が何日もかけて議論し、作成するような戦略文書のたたき台が、GPT-5 Proを使えば、わずか数分で完成するのです。これはゼロから戦略を考えるのではなく、AIが生成した質の高い分析レポートを基に、人間がより高次の意思決定に集中できることを意味します。
まとめ:AIは思考のパートナーへ
今回の「Strategic planning with ChatGPT」で示されたのは、AIが単なる情報検索ツールではなく、複雑な課題に対して論理的に思考し、計画を立てる「戦略パートナー」になり得るという事実です。
特にGPT-5 Proのような最新モデルの登場により、AIは表層的な答えを出すだけでなく、多角的な視点から課題を分析し、人間をサポートする能力を飛躍的に向上させています。
