2025年12月、AIアシスタント「Claude」を開発するAnthropic社が、Chrome拡張機能の一般提供を開始しました。これまで月額200ドルのMaxプラン限定だった機能が、月額20ドルのProプランから利用可能になり、日本のEC事業者にとっても導入のハードルが大きく下がっています。
この拡張機能は単なるチャットボットではありません。ブラウザ上でウェブサイトを自動操作し、フォーム入力やマルチタブでのワークフローを実行できる「AIエージェント」として機能します。EC運営における定型作業の自動化に、新たな可能性が開けそうです。
ブラウザで「動く」AIエージェントとは何か
Claude Chrome拡張機能の最大の特徴は、ウェブページを「見て」「操作できる」点にあります。従来のAIチャットボットは、ユーザーがテキストを入力し、AIが回答を返すという一方向のやり取りが中心でした。しかしこの拡張機能では、Claudeが直接ブラウザ上のボタンをクリックしたり、フォームに入力したり、複数のタブを行き来しながら作業を完了させることができます。
Anthropic社内でのテストでは、カレンダー管理、ミーティングのスケジュール調整、メール返信の下書き、経費精算の処理、ウェブサイトの機能テストなどで生産性向上が確認されています。
主な機能は以下のとおりです。ウェブサイトのナビゲーションとページ内容の読み取り、フォームへの自動入力、複数タブにまたがるワークフローの実行、スケジュールタスクの設定(毎週のレポート作成など)、そしてClaude Codeとの統合によるターミナルからブラウザへのシームレスな連携です。
セキュリティ対策と利用上の注意点
ブラウザ上でAIが自律的に動作することには、当然ながらリスクも伴います。Anthropic社が最も警戒しているのが「プロンプトインジェクション攻撃」です。これは悪意あるウェブサイトやメールに隠された指示によって、AIを騙して意図しない操作をさせる攻撃手法です。
同社は123のテストケース、29の攻撃シナリオで検証を実施しました。対策前の攻撃成功率は23.6%でしたが、新たな防御策により11.2%まで低減させています。ただし、完全にゼロではないため、金融サービスや機密性の高い業務での利用は推奨されていません。
現在実装されている安全機能は3つあります。まず、サイトレベルのパーミッション設定で、ユーザーがClaude にアクセスを許可するサイトを個別に指定できます。次に、高リスク操作の確認機能で、購入、公開、個人情報の共有といった操作を実行する前に必ずユーザーの承認を求めます。そして、Teams/Enterpriseプラン向けには管理者によるサイト許可・ブロックリストの設定も可能です。
EC事業者はどう活用できるか
EC運営では、複数のプラットフォームを横断した作業が日常的に発生します。楽天、Amazon、Yahoo!ショッピング、自社Shopifyサイトなど、各管理画面でのルーティン作業に多くの時間を費やしている事業者も多いでしょう。
Claude Chrome拡張機能の活用が期待される場面としては、商品情報の一括確認と更新作業、競合商品のリサーチと価格モニタリング、各モールの売上データ収集とレポート作成、顧客対応テンプレートの自動入力などが考えられます。ただし、決済処理や顧客の個人情報を扱う操作については、セキュリティリスクを考慮して当面は手動で行うべきです。
料金プランはProプラン月額20ドル(約3,000円)から利用可能で、Teamプランは月額25ドル/ユーザー、Enterpriseプランは要問い合わせとなっています。ChromiumベースのブラウザであるBraveやOperaでも動作しますが、Firefox、Safari、Microsoft Edgeには対応していません。
今後の展望とEC事業者への提言
ブラウザ上で動作するAIエージェントは、OpenAIのOperator、Google Geminiの各種機能など、各社が開発を進めている領域です。Anthropic社は安全性を重視する姿勢で知られており、段階的に機能を拡張しながらリスク軽減策を強化していく方針を示しています。
EC事業者としては、まず低リスクな作業から試験的に導入し、AIエージェントの特性と限界を理解することが重要です。競合調査やデータ収集など、機密性の低い情報収集業務から始めて、徐々に活用範囲を広げていく段階的なアプローチが現実的でしょう。
Chrome拡張機能のインストールはChrome ウェブストアから可能です。利用にはClaudeの有料プラン契約が必要ですので、まずは公式サイトで詳細を確認してみてください。
引用:anthropic
