AIグラスが、いよいよ実験的なガジェットから本格的な消費者向けデバイスへと移り変わろうとしています。TechCrunchによると、韓国の光学スタートアップLetinARが韓国産業銀行とロッテベンチャーズから1,850万ドルを調達し、累計調達額は4,170万ドルに達しました。AIグラスの心臓部となるレンズ部品を手がける同社の躍進は、この市場が量産フェーズに入りつつあることを示しています。日本のEC事業者にとっても、スマートフォンに続く新しい購買接点として、AIグラスは今から動向を押さえておくべきテーマです。

AIグラス市場で何が起きているか
LetinARは2016年に設立された光学モジュールの専業メーカーで、独自の「PinTILT」技術によって、爪の先ほどの大きさのレンズで光を正確に目に届ける仕組みを持っています。同社は2027年に韓国での新規株式公開を予定しており、過去にはLG Electronicsからの出資も受けています。
注目すべきは市場の伸びです。記事によると、AIグラスの世界出荷台数は2025年に870万台へと前年比約300%の伸びを記録し、2026年には1,500万台に達すると予測されています。MetaがRay-Banブランドで2023年から先行し、GoogleはAndroid XRで、AppleやSamsung、Huawei、Alibaba、Xiaomiなども相次いで参入しています。Samsungは2026年7月にも投入が見込まれており、競争は一気に加速しています。
LetinARの顧客には、日本のNTT QONOQ Devicesや、東芝のクライアント事業を継ぐDynabookが名を連ねています。AIグラスは海の向こうの話ではなく、日本企業が部品供給と製品化の両面で関わる、足元の産業になりつつあるということです。
日本のEC事業者にとっての論点
AIグラスがなぜEC事業者に関係するのか。論点は購買体験の入口が変わることにあります。スマートフォンが検索とモバイルコマースを生んだように、視界に情報を重ねるAIグラスは、商品の発見から比較、購入までの動線を新しい形に変える可能性があります。
第一に、商品情報の「見え方」が変わります。AIグラスでは音声アシスタントと画像認識が前提になるため、実店舗で目にした商品をその場で認識し、価格やレビューを呼び出す使い方が想定されます。楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングの商品ページが、文字情報だけでなく音声で読み上げられ要約される時代に向けて、構造化された商品データの整備が効いてきます。
第二に、画像と動画の役割がさらに重くなります。視覚デバイスでの体験を見据えると、商品の見栄えや短尺動画の質が購買判断を左右します。Shopifyや自社ECで動画コンテンツに投資してきた事業者ほど、移行で有利に立てると考えられます。
今後の展望と初動アクション
現時点でAIグラス経由の購買が日本のECの主力になるわけではありません。とはいえ、出荷台数の伸びを踏まえれば、今のうちに小さく備えておく価値はあります。
まず、商品データの構造化を進めることです。商品名、価格、在庫、レビューを機械が読み取りやすい形で整えておくと、音声・画像アシスタント経由の流入に備えられます。次に、商品画像と短尺動画の質を底上げすることです。視覚デバイスでは第一印象がこれまで以上に効きます。そして、生成AIによる検索体験の変化を観察し続けることです。AIグラスはAIアシスタントと一体で使われるため、AI経由の商品発見にどう対応するかという課題と地続きになります。
なお、AIグラス対応をうたう高額なツールへ慌てて投資する必要は、現段階ではありません。基礎となる商品データと画像・動画の整備は、AIグラスの普及を待たずとも今のECで成果につながる施策です。
まとめ
AIグラスは出荷台数を急増させ、日本企業も部品と製品の両面で関わる現実的な市場になってきました。日本のEC事業者がとるべきスタンスは、専用対応を急ぐことではなく、商品データの構造化と画像・動画の品質という普遍的な土台を固めることです。その土台が、次の購買接点への備えにそのまま生きてきます。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。