AI利用可の試験で平均96点だったクラスが、監督付きの対面試験では平均48.6点に落ちました。
米ブラウン大学の経済学の授業で、持ち帰り試験の平均点が過去に例のない96点を記録し、担当教授がAIによるカンニングを疑って期末を対面試験に切り替えたところ、平均点は48.6点まで急落しました。Inside Higher Edが2026年7月8日に報じ、The Decoderが7月12日、同じ構図を裏づける2本の大規模研究とあわせて伝えました。宿題の成績は上がるのに試験の点は下がるという「AI依存の学力空洞化」が、数字で見え始めています。本記事は、EC事業者のAI導入支援を19年・5,000社超に提供してきた株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
何が起きたか:平均96点の異常値から発覚
結論から言うと、86人のクラスの大半がAIで解答した疑いを、教授自身が対面試験で立証した形です。ブラウン大学の経済学教授Roberto Serranoが担当する授業では、持ち帰り形式の中間試験の平均点が96点に達しました。この授業の平均点は例年65点から80点の間で推移しており、明らかな異常値でした。
Serranoが試験問題をChatGPTに入力したところ、学生の答案とほぼ同一の解答が返ってきたといいます。多くの学生が、素直な直接証明ではなく、ChatGPTが選んだものと同じ回りくどい数学的証明を使っていたことも、疑いを強める材料になりました。
Serranoは学生に警告したうえで、期末試験を監督付きの対面形式に変更しました。結果は劇的でした。18人が履修を取り下げ、9人は試験会場に現れず、受験した学生の平均点は48.6点と、この授業の史上最低を記録しました。19人が不合格となり、Serranoは中間試験を無効化して期末の比重を成績の80%に引き上げています。

大学側の対応についてSerranoは「腰が引けている」と批判しています。不正の疑いを1件ずつ個別に報告するよう求められたことを「ばかげている」とし、「私たちは自ら愚かになることを選ぶわけにはいかない」と、より強い姿勢を大学に求めました。協議は現在も続いているとのことです。
なぜ重要か:2本の大規模研究が同じ構図を示した
この事例が単発の珍事でないことは、規模の大きい2本の研究が示しています。宿題の成績が上がる一方で試験の点数が下がるという逆転現象は、すでに統計的なパターンとして観測されています。
1本目は中国中部の中高生2万6,000人超を30カ月追跡した調査です。The Decoderが以前の記事で詳報したこの研究では、生徒がAIを使い始めて6カ月後、宿題の点数は18%上昇し、宿題にかける時間は64分から45分に短縮されました。ところが試験の点数は20%下落。入学試験ベースの長期的な学力損失は18%から24%に達し、影響が完全に表れるまでに約2年かかることも分かりました。長期利用者の約81%が「宿題は速く高得点、試験は低得点」というパターンに該当し、最も打撃を受けたのは成績上位層で、24%の性能低下を示したとされています。
2本目はカリフォルニア大学バークレー校の研究チームによる調査で、テキサス州の大規模研究大学の成績50万件超を分析しました。The Decoderの過去記事によると、ChatGPT公開後、ライティングやプログラミングの課題が多い科目ではA評価の比率が13ポイント上昇しました。効果は監督のない宿題に集中しており、宿題の比重が大きい科目は、監督付き試験の比重が大きい科目より16ポイント高い上昇幅を示しています。成績インフレの正体が「学習の向上」ではなく「作業の外注」であることを示唆する結果です。
3つの調査に共通するのは、AIが成果物の見た目を引き上げる一方で、本人の中に残る実力とのギャップを広げるという構図です。評価の仕組みが「提出物の質」を測っている限り、このギャップは表面化しません。監督付き試験のような「AIなしの実測」を挟んだ瞬間に、初めて数字として現れます。
今後の動き:評価は「AIあり」と「AIなし」の二本立てへ
教育現場では、対面・監督付き試験への回帰が進む可能性が高いと見られます。Serranoのケースは、持ち帰り課題の成績が信用できなくなったとき、教員が取れる対抗手段が「監督付きの実測」しかないことを示しました。一方で、AIの業務利用が当たり前になる時代に、AIを一切使わせない評価だけに戻るのも現実的ではありません。「AIを使って何ができるか」と「AIなしで何が身についているか」を分けて測る二本立ての評価設計が、教育機関の次の論点になるはずです。
この構図は企業にもそのまま持ち込まれます。採用選考で提出される課題や職務経歴書、社内研修のレポートは、いずれも「持ち帰り試験」と同じ性質を持ちます。EC事業の現場でも、AIに業務を任せる範囲が広がるほど、スタッフの実力を測る機会は減っていきます。うるチカラではWalmartのAI研修の取り組みやGMのAI人材シフトを紹介してきましたが、AI活用と並行して「AIなしでも判断できる力」をどう維持するかは、AIエージェントに業務を任せる線引きとセットで設計すべきテーマです。たとえば新人教育では、AIで作った成果物のレビューを人が口頭で説明させる、月に1度はAIなしで売上レポートの数字を読ませる、といった「実測の機会」を意図的に残すことが、2年後のスキル空洞化を防ぐ現実的な手になります。
まとめ
ブラウン大学の事例と2本の大規模研究は、AI利用で宿題や課題の成績が上がっても、監督付きの実測では学力が下がっているという同じ構図を示しました。影響が表れるまで約2年かかるという知見は、教育機関だけでなく、AI導入を進める企業にとっても警告です。成果物の質と本人の実力を分けて測る評価設計を、いま考え始める価値があります。
参考文献
- The Decoder: Grades dropped from 96 to 48 percent when a Brown professor made students take the exam without AI
- Inside Higher Ed: Brown Professor Suspects Most of His Class Used AI to Cheat
- The Decoder: A 26,000-student study shows AI’s hidden learning cost takes two full years to surface
- The Decoder: AI is inflating student grades, and the effect points to outsourced work, not better learning
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。