Gemini 3.5とは、Googleが2026年に展開した最新世代のAIモデル群のことです。
商品写真の撮り直し、バナーの量産、Googleスプレッドシートにためた売上データの分析。EC運営で地味に時間を食うこの3領域に、Gemini 3.5は正面から効きます。とくに画像まわりの生成力とGoogleサービスとの連携は、ChatGPTやClaudeにはない強みです。本ガイドでは、Gemini 3.5を商品ビジュアル量産・データ分析・接客文の各工程にどう組み込むかを、そのまま使えるプロンプト8本とあわせて整理します。自店のどの作業から置き換えると効くか、手元で判断できる状態にします。
Gemini 3.5がEC運営で効く3つの理由
Googleは2026年5月のI/OでGemini 3.5を発表し、Gemini 3.5 Flashが一般提供(GA)として展開されています。Flashはアプリの初期モデルにもなっており、難しい作業を高速にこなす方向に振った構成です。さらに上位のGemini 3.5 Proは2026年6月の一般提供が予定され、深い推論や長い文脈の理解を担います。動画を含む生成に対応するGemini Omniも同時に発表されました。
EC運営でGeminiを選ぶ理由は、大きく3つに整理できます。1つ目は画像生成です。商品ビジュアルやバナーをテキスト指示から作れるため、撮影や外注に頼っていた工程の一部を内製化できます。2つ目はGoogleサービスとの連携です。スプレッドシートやGmailと組み合わせると、売上データの分析や問い合わせ対応がそのまま回せます。3つ目は速度です。Flashは高速処理に向いており、大量の商品データを次々とさばく用途に合います。
このうちEC事業者の関心が高いのは、やはり画像生成です。商品撮影は、スタジオ手配・撮影・レタッチと工程が多く、季節商品やセールのたびに発生するコストでした。Geminiの画像生成を使うと、バナーの背景や特集ページのイメージカットといった「実写でなくてよい部分」を内製で量産できます。重要なのは、すべてを生成画像に置き換えるのではなく、実写が必要な箇所と生成で足りる箇所を切り分ける設計です。商品の質感やサイズ感を伝えるメイン画像は実写、雰囲気やセール感を演出する補助ビジュアルは生成、という役割分担が現場では破綻しにくいです。
速度の面も補足します。Flashは1件あたりの応答が速いため、数百商品の説明文やカテゴリ分類をまとめて処理する用途で待ち時間が短く済みます。じっくり考えさせたい戦略検討は上位のProに、量をさばく定型処理はFlashに、と役割を分けると、コストと速度のバランスを取りやすくなります。
うるチカラでは、Geminiの個別機能についても継続的に追っています。Flashの実務での使い方はGemini 3.5 FlashのEC活用、Googleのデザインツール連携はGoogle発のAIデザインツールをECで使う記事にまとめてあるので、本ガイドと合わせて読むと自店の構成を組みやすくなります。
費用面を先に押さえておきます。Geminiはアプリの無料枠でFlashが使えるため、まず試すこと自体に費用はかかりません。画像生成や高度な処理を継続的に使うなら、上位プランやAPI従量課金が選択肢になります。料金は変動するため、発注前に公式ページで確認してください。本文中の効果の表現は、ALSELが支援する店舗群で観測した範囲の目安で、すべての店舗で再現する保証値ではありません。
画像生成・データ分析・接客のプロンプト8本
ここからは用途別のプロンプトです。変数は { } で囲んであるので自店の値に置き換えてください。画像生成系のプロンプトは、Geminiの画像生成機能(アプリまたは対応API)で使います。
(用途タイトル:商品イメージカットの生成)
撮影前のラフ作りや、背景違いのバリエーション検討に使います。実在しない商品を「あるように」見せると景表法上の問題になるため、生成画像はイメージ用途と明示し、実商品の説明には実写を使うのが安全です。
プロンプト1:商品イメージカットの生成
{商品カテゴリ}の商品イメージ画像を生成してください。
被写体:{商品の見た目の説明}
背景:{白背景/生活シーン/ギフト演出など}
構図:正面やや俯瞰、商品が画面の中央7割
色味:{ブランドカラー}
用途:ECのイメージカット。文字やロゴは入れない。
複数案:背景違いで3パターン
(用途タイトル:バナーの下地生成)
セール告知や特集ページのバナー下地を作ります。文字は後からデザインツールで載せる前提で、画像側には焼き込みません。後から文字を載せる余白をあらかじめ確保しておくと、デザイン工程がスムーズになります。横長・正方形・縦長の3比率を一度に作らせておくと、トップバナー・SNS・サイドバナーへ流用しやすくなります。
プロンプト2:セールバナーの下地画像生成
ECのセールバナー用の背景画像を生成してください。
テーマ:{セール名・季節}
雰囲気:{高級感/にぎやか/ナチュラルなど}
配色:{指定色}を基調に
構図:左右どちらかに余白を作り、後から文字を載せられる構成にする
文字・ロゴは入れない。3案を縦横比違いで(横長・正方形・縦長)
(用途タイトル:商品写真のレタッチ指示)
既存の商品写真をどう整えるか、人間の作業指示を言語化させます。撮影は外注しつつ、レタッチの方針出しだけAIに任せる、といった部分的な使い方ができます。写真の良し悪しを感覚で判断していた工程を、明るさ・トリミング・色補正という具体的な作業項目に分解できるため、外注先への指示書としても使えます。
プロンプト3:商品写真のレタッチ方針出し
あなたはECの商品撮影ディレクターです。
以下の商品写真の課題({暗い/背景が雑多/色が実物と違うなど})に対し、
レタッチの具体的な指示を箇条書きで出してください。
明るさ・トリミング・背景処理・色補正の観点で、実作業者が迷わない粒度で書く。
商品:{商品名・素材・実物の色}
(用途タイトル:売上データの分析)
GoogleスプレッドシートにためたデータをGeminiに読ませ、打ち手を引き出します。GeminiはGoogle環境との相性がよく、シートの内容を直接扱える場面が多いのが利点です。月初の振り返りで、数字を眺めるだけで終わっていた作業を、要因仮説と次の施策まで落とし込む工程に変えられます。出力された仮説は、あくまで人間が検証する出発点として扱ってください。
プロンプト4:月次売上データの分析
あなたはECのデータアナリストです。
以下の売上データ(商品名,販売数,売上,前月比,在庫数)を読み、次を出力してください。
1. 伸びている商品・落ちている商品それぞれ上位3つと、その要因仮説
2. 在庫と販売速度のミスマッチがある商品
3. 来月に優先すべき施策を3つ、理由つきで
データ:{貼り付け}
(用途タイトル:レビュー分析)
レビューをまとめて読ませ、商品改善とページ改善のテーマを抽出します。
プロンプト5:レビューのテーマ別要約
あなたは顧客の声を分析するCX担当です。
以下のレビュー(星評価,本文)を全件読み、商品ごとに「満足の理由」「不満の理由」を頻度順に3つまで抽出してください。
あわせて、商品ページに追記すべき情報(サイズ感・においなど購入前の不安に関わるもの)を提案する。
レビュー:{貼り付け}
(用途タイトル:商品説明文の生成)
画像とテキストを両方扱えるGeminiの特性を活かし、写真を見せて説明文を作らせる使い方もできます。商品写真を添付して特徴を読み取らせると、テキストだけで指示するより、素材感や色味を踏まえた説明が出やすくなります。撮影済みの新商品をスピーディに出品ページ化したいときに向いた使い方です。
プロンプト6:商品説明文の作成
あなたは{ジャンル}に強いECコピーライターです。
次の商品の説明文を作成してください。
構成:冒頭3行で誰の何を解決するか→特徴3点→使用シーン→配送・お手入れ注意。
条件:ですます調統一、絵文字なし、医薬品的効能の断定と最大級表現は禁止。
商品情報:{商品名・特徴・対象顧客・価格}(画像がある場合は添付して特徴を読み取らせる)
(用途タイトル:問い合わせ対応)
Gmailと組み合わせ、問い合わせの一次ドラフトを作ります。返信のたびにゼロから文章を考える負担が減り、対応スピードが上がります。ただし在庫や配送日の確定情報は店舗側でしか分からないため、ドラフトの不確実な部分は人間が必ず差し替える前提で使ってください。トーンの統一にも効くので、複数人で対応している店舗ほど効果が出ます。
プロンプト7:問い合わせ返信ドラフト
あなたはECのカスタマーサポート担当です。
以下の問い合わせに対する返信ドラフトを作成してください。
条件:結論を先に書く/不確実な事項は断定せず確認する旨を伝える/謝罪と感謝のトーンを適切に/3〜6文。
問い合わせ:{貼り付け}/分かる範囲の情報:{在庫・配送目安}
(用途タイトル:広告見出しの生成)
Google広告やショッピング広告の見出しを、Googleの検索文脈に寄せて作ります。Geminiは検索を提供するGoogleのモデルだけに、検索意図を踏まえた見出しが出やすい傾向があります。複数案を出させてから実際の配信で比較し、反応の良い軸に寄せていく運用が回しやすいです。文字数上限を超えると配信時に切れるため、生成後に確認してください。
プロンプト8:検索広告見出しの作成
あなたはGoogle広告の運用担当です。
次の商品の検索広告見出しを、A=機能・B=価格特典・C=シーンの3方向で各2案作成してください。
各案は半角30文字以内、KWを冒頭に。最大級・誇大表現は使わない。
商品情報:{商品名・主要KW・訴求ポイント}
画像生成でつまずく失敗と回避策
1つ目は、生成画像を実商品の説明として使ってしまう事故です。AIが作った商品画像は、実物と細部が違うことがあります。これを商品ページのメイン画像に使うと、景表法上の優良誤認や、届いた商品との差によるクレームにつながります。生成画像はイメージカットやバナー下地に限定し、商品の仕様を伝える画像は実写を使うのが原則です。
2つ目は、ブランドや人物、キャラクターを無断で生成させるケースです。既存ブランドのロゴや、実在の人物に似た画像を生成して使うと、権利侵害になりえます。プロンプトでは「特定のブランド・人物・キャラクターを模倣しない」と明示し、出力も確認してください。特に人物を含むイメージカットは、実在の有名人に似てしまうリスクがあるため、使う前に第三者の目で確認する一手間を挟むのが安全です。
3つ目は、Googleスプレッドシートのデータをそのまま読ませる際の個人情報の扱いです。売上データに顧客名や連絡先が含まれていると、不要な情報まで渡すことになります。分析に必要な列だけを抜き出したシートを別に作り、それを読ませるのが安全です。レビュー分析でも、投稿者個人が特定できる情報は事前に除去してください。
4つ目に触れておきたいのが、生成画像のスタイルが商品ごとにばらつく問題です。プロンプトを都度書き換えていると、特集ページ内で雰囲気の合わない画像が混ざり、サイト全体の印象が散らかります。ブランドカラー・構図・余白の取り方をテンプレ化したプロンプトを用意し、全バナーで同じ指示を使い回すと、トーンがそろいます。デザインの一貫性は、生成のたびに考えるより、最初に基準を決めておくほうが安定します。
Geminiを業務に組み込む順序
Geminiの導入も、いきなり全工程を置き換えるのではなく、失敗してもやり直せる作業から入るのが安全です。最初に向くのは、セールバナーの下地生成と月次データの分析です。どちらも公開前に人間が確認でき、品質が低ければ作り直せます。ここでAIの出力品質と自店の運用への馴染み方を見極めてから、商品説明文や問い合わせ対応へ広げます。
Google環境をすでに業務で使っている店舗ほど、Geminiの導入はスムーズです。売上管理をスプレッドシートで、問い合わせをGmailで回しているなら、Geminiはその延長線上で使えます。逆に、別のツールで業務が完結している場合は、まず画像生成のように単体で完結する用途から試すのが入りやすい入口です。自店の既存環境に合わせて、連携の濃い領域から手をつけるのが、現場での定着を早めます。
KPIと費用・工数の目安
導入効果は、ビジュアル制作とデータ分析にかかる人時で測ると分かりやすいです。直近の支援案件で観測したのは、セールごとのバナー下地作りを内製化したことで、外注の往復にかかっていた数日のリードタイムが当日〜翌日に縮んだケースです。撮影そのものを完全に置き換えるわけではありませんが、ラフ作りやバリエーション検討の初動が速くなります。
費用は、無料枠で小規模に試し、画像生成や分析を継続的に使うなら上位プランやAPIへ、という段階設計が現実的です。月額の有料プランは個人〜小規模、API従量課金は大量バッチ処理という切り分けが実務的で、まず1つの用途で効果を測ってから広げる順序が安全です。CVRや検索順位への効果は断定を避けます。ビジュアルの質が上がればクリック率や滞在に影響しやすい一方、検索順位はGoogleやモール側の複合要因で決まり、画像を変えただけで順位が確実に上がるとは言えません。
工数で見落としがちなのが、生成物の確認時間です。画像も文章も、生成そのものは一瞬でも、自店の基準に合っているかの確認は人間が行います。バナーであればブランドトーンとの整合、説明文であれば仕様の正確さと法令配慮を確認する工程が残ります。導入初期は「1日に確認できる量」を基準に生成量を決め、確認が追いつかないまま大量公開しない設計が、品質を保つうえで欠かせません。AIモデル全体の選び方や他ツールとの併用は、うるチカラのECで使える生成AIツール比較ガイドも参照してください。
今後の展望とGeminiの位置づけ
Googleの強みは、検索・Gmail・スプレッドシート・広告といった事業者が日常的に使うサービスの中にAIを織り込んでくる点にあります。2026年に入って、これらの連携はさらに密になりつつあり、Geminiを「単体のチャット」としてではなく「Google環境の操作役」として捉えると、EC運営での価値が見えてきます。
検索面の変化も見据えておくべきです。GoogleのAI Overviewが普及し、検索結果をAIが要約・回答する流れが強まっています。商品ページやFAQを、AIが引用しやすい明確な記述に整えておくと、AI経由の流入を取りこぼしにくくなります。画像についても、AIが理解しやすいalt属性や構造化を整えることが、これからの可視性に効いてきます。Gemini 3.5を、生成だけでなく「自店のコンテンツをAIに読ませやすく整える」用途にも使う発想が、競争の分かれ目になります。
よくある質問
Gemini 3.5は無料で使えますか
はい。Geminiアプリの無料枠でGemini 3.5 Flashが使えます。ただし画像生成や高度な処理を多用するなら、上位プランやAPI従量課金が現実的です。利用量に上限があるため、本格運用では有料を検討してください。
Geminiの画像生成は商品ページのメイン画像に使えますか
実物と細部が異なるため、商品の仕様を伝えるメイン画像には実写を使うべきです。生成画像はイメージカットやバナー下地に限定すれば、景表法上のリスクを避けつつ制作工数を減らせます。
ChatGPTやClaudeではなくGeminiを選ぶ理由は何ですか
画像生成の手軽さと、Googleサービス(スプレッドシート・Gmail・広告)との連携が強みです。撮影・バナー制作の内製化や、Google環境でのデータ分析を重視するなら、Geminiが向いています。
スプレッドシートのデータを読ませて情報漏えいは心配ありませんか
分析に必要な列だけを抜き出したシートを別に作り、顧客の個人情報は含めないことが原則です。売上数や在庫数など、個人が特定できないデータであればリスクは比較的低めです。
Gemini 3.5 ProとFlashはどう使い分けますか
量をさばく定型処理(説明文の一括生成、カテゴリ分類、レビュー要約)は高速なFlash、深い検討が必要な戦略分析や長文の読み込みは上位のProが向きます。アプリでは用途に応じて自動で振り分けられる場面もありますが、コストと速度を意識するなら、定型処理はFlash中心に組むのが現実的です。
生成した画像の著作権はどう考えればよいですか
特定のブランド・人物・キャラクターを模倣した生成は権利侵害になりえます。プロンプトで模倣を禁止し、出力を確認してください。自店オリジナルの抽象的なイメージやバナー下地であれば、業務利用のリスクは比較的低めですが、利用規約は変更される可能性があるため公式の最新条件を確認するのが安全です。
導入の最初の一歩はどこから始めるべきですか
セールバナーの下地生成か、月次売上データの分析から始めるのが効果を実感しやすい入口です。どちらも失敗しても公開前にやり直せるため、AIの出力品質を見極めながら範囲を広げられます。Google環境をすでに使っている店舗なら、データ分析から入ると連携の利点を早く実感できます。
著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。