Amazonが2026年1月15日からFBA(フルフィルメント by Amazon)をはじめとする物流手数料を引き上げました。1点あたり平均8セントという一見わずかな値上げですが、関税の高止まりで利益が削られている出品者にとっては重い追加負担です。北米向けに越境ECを手がける日本の事業者にも直接効いてくる話で、Amazon.co.jpや楽天・Shopifyを運営する事業者にとっても「利益率をどう守るか」を見直すきっかけになります。本稿では何が変わったのかを整理し、日本のEC事業者がいま取るべき初動を3つにまとめます。
何が起きたか:FBA手数料の引き上げと値上げ幅
Modern Retailによると、Amazonはセラーセントラル上で2026年の手数料改定を告知し、1月15日からFBAに加えてBuy with PrimeやMulti-Channel Fulfillment(MCF)など複数の物流サービスで手数料を引き上げました。
値上げ幅は商品サイズと価格によって異なります。FBA手数料は1点あたり平均8セントの上昇で、50ドル超の小型商品では1点あたり0.51ドル、10〜50ドルの大型商品では1点あたり0.05ドルといった具合です。MCFは平均0.30ドル、Buy with Primeは約0.24ドルの上昇となりました。さらにAmazonは在庫の搬入配置手数料や大型商品の手数料体系に料金区分を追加し、配送の高速化など「付加サービス」がある場合は高めの料率を設定する仕組みに変えています。
Amazon側は、FBAの平均値上げ幅は1点あたり0.5%未満で「インフレ率を大きく下回る」と説明し、商品別採算を可視化するProfit Analyticsダッシュボードや改訂した手数料計算ツールを案内しています。とはいえ2025年はFBA手数料を据え置いた一方で、成果連動型のセール・クーポン手数料の導入や、紛失・破損在庫の返金ポリシー変更などで出品者の利益を別の形で削ってきた経緯があります。Amazonが出品者から得る手数料収入は2024年に1,500億ドル超と前年比7%増で、Marketplace Pulseの試算では手数料が1販売あたりのコストの約半分を占めることもあるとされています。
日本のEC事業者にとっての論点:越境ECは直撃、国内は前兆
今回の改定は主にAmazon.comの米国向け物流が対象です。とはいえ、北米向けに越境ECを展開しFBAで在庫を保管している日本の出品者にとっては、利益率を直接削る変更になります。たとえばコンサルティング会社Avenue7Mediaを率いるJason Boyceは、FBAで1日1,000個を販売する場合、1点8セントの上乗せだけで年間およそ2万9,000ドルの追加コストになると指摘しています。
背景にあるのは関税です。Modern Retailの取材に答えた出品者の多くはすでに今年に入って値上げを実施済みで、acceleration agencyのCrunchGrowthでは顧客が関税を理由に約30%、コーヒーブランドのThe Bean Coffee Companyは約25%値上げしたといいます。手数料と関税の二重圧迫を受け、ニューヨークのジュエリーブランドHaus of BrillianceのようにFBAから距離を置き、最も売れる2商品だけをFBAに残して自社で在庫を持つ動きも出ています。販促面でも、CTVやMeta・Google・Amazon広告といった費用のかさむチャネルを絞り、マイクロインフルエンサーへ予算を振り向ける動きが広がっています。
日本国内のAmazon.co.jp出品者にとっては、まず米国の動きが「前兆」である点に注意が必要です。Amazon.co.jpのFBA配送代行手数料も過去に改定されており、2026年の国内手数料がどうなるかは要確認ですが、プラットフォーム手数料は中長期で上がりやすいという前提で利益設計を組むのが現実的です。楽天市場やShopifyを運営する事業者にとっても、「薄い手数料増が積み重なると粗利を侵食する」という今回の構図は他人事ではありません。
今後の展望・初動アクション
第一に、商品別の利益率を可視化することです。AmazonのProfit Analyticsや手数料計算ツール、楽天であればRMSの商品別の売上・原価管理を使い、手数料・関税・広告費を差し引いた後の本当の粗利をSKU単位で把握します。どの商品が値上げや撤退の判断対象かが見えてきます。
第二に、FBAや単一モールへの依存度を下げることです。自社EC(ShopifyやBASE)、楽天、Yahoo!ショッピングへ販路を分散し、在庫の持ち方を見直すことで、特定プラットフォームの手数料改定に振り回されにくくなります。
第三に、値上げの「伝え方」と販促効率の設計です。一度に大きく上げるより小刻みに調整し、費用対効果の低い広告から指名検索やマイクロインフルエンサー施策へ予算を移すことで、利益を守りながら売上を維持しやすくなります。なお2026年のPrime Dayは6月23〜26日と例年より前倒しされており、在庫計画と値引き設計を早めに固めることも重要です。
まとめ
Amazonの2026年のFBA手数料引き上げは1点8セントと小幅でも、関税と重なれば出品者の粗利を確実に削ります。日本のEC事業者がとるべきスタンスは、値下げ競争に流されるのではなく、SKU単位の利益率を可視化し、販路と在庫を分散して手数料変動への耐性を高めることです。守りの数字管理が、これからの物販の前提になります。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。