Anthropicは現地時間2026年7月7日、公式ブログで「Claude Codeのモデル選択とエフォートレベルの選び方」と題した解説記事を公開しました。執筆したのはClaude Codeチームのエンジニア、Lydia Hallieです。モデルの大小とエフォート(努力度)の高低という2つの設定が、出力品質とトークン消費にどう効くのかを、推論の仕組みまで踏み込んで説明した内容で、AIコーディングツールやAIエージェントを業務で使うすべての人に関わる実践的なガイドになっています。この記事では公式解説の要点を整理し、なぜいま「設定の使い分け」が重要になっているのかを解説します。

何が起きたか:モデルとエフォートの役割を公式が初めて体系的に解説
Claude Codeには、どのモデルを使うかを決める「モデル選択」と、どれだけ徹底的に働くかを決める「エフォートレベル」という2つの設定があります。今回の公式解説は、この2つが内部で何をしているのかを明確に切り分けました。
まずモデル選択について。解説によると、モデルの実体は学習時に固定された膨大な数値の集合(重み・weights)であり、モデルを切り替えるという操作は「どの固定された重みのセットにリクエストを処理させるか」を入れ替えることを意味します。重みは学習が終わった時点で読み取り専用になり、プロンプトやCLAUDE.md、コンテキストに入れた資料が重みそのものを書き換えることはありません。ドキュメントをコンテキストに入れれば挙動は誘導できますが、それは「教える」のではなく「操縦する」行為であり、そのリクエスト限りの影響にとどまると説明されています。存在しないAPIを自信満々に呼び出すハルシネーションも、学習パターンから「もっともらしいトークン列」が生成された結果であって、検索の失敗ではないという整理です。
一方のエフォートレベルは「考える時間の長さ」だけを指すものではありません。ファイルを読む、テストを実行する、結果をダブルチェックするといった行動の量まで含めて、1つのタスクにどれだけの仕事量を投じるかを制御する設定です。エフォートはリクエストの一部としてモデルに送られ、各レベルでどう振る舞うべきかはモデルの学習時に組み込まれています。高いエフォートでは計画を立てて検証を重ね、低いエフォートでは自力で調べるよりユーザーに確認を求める傾向になるとのことです。
なぜ重要か:「能力のモデル、徹底度のエフォート」でコストが変わる
この解説が重要なのは、AI利用のコスト構造を考える判断軸を示しているからです。モデル設定は1トークンあたりの単価を決め、エフォートは生成されるトークンの量を左右します。つまり請求額はこの2つの掛け算で決まります。
公式の推奨は明快で、ほとんどのタスクではデフォルトのエフォートのままでよいとしています。エフォートはタスクごとに調整するものではなく、自分の業務の性質に応じた全般的な好みとして選ぶべきだという立場です。また、Claude Opus 4.8ではデフォルトエフォートのまま使うと、前世代のOpus 4.7と同程度のトークン数でより良い結果が得られたという社内テストの知見も共有されています。
結果が期待外れだったときの切り分け方も示されました。最初に見直すべきは設定ではなくコンテキストであり、プロンプトが曖昧でないか、適切なツールやスキルに接続されているかを確認する。それでも失敗するなら「問題が難しすぎた(知識不足)」ならより大きなモデルへ、「ファイルを読み飛ばした、テストを実行しなかった(努力不足)」ならより高いエフォートへ、という2択で考えます。
解説では3つのモデル系統を人にたとえた説明も印象的です。Fableは誰も見たことのない問題を経験してきたスペシャリスト、Opusはエキスパート、Sonnetは優秀なジェネラリストであり、エフォートレベルは彼らが何時間働くかを決めるという比喩です。定型的な作業なら小さいモデルに任せた方が品質を落とさずコストを下げられる一方、複数ステップの難しいタスクでは、小さいモデルが能力の限界に向かって試行錯誤を重ねるより、大きいモデルが少ない手数で到達する方がタスク単位の総コストは安くなる場合があると指摘されています。社内テストでは、FableがOpusやSonnetではどのエフォートレベルでも完了できなかったジョブを完了した例も報告されました。
今後の動き:エージェント時代の「使い分け設計」が標準スキルに
今回の解説は開発者向けの技術記事の体裁を取っていますが、示された考え方はClaude Codeに限らず、Claude Coworkのようなエージェント型ツール全般に応用できます。AIに任せる仕事が増えるほど、「どの能力のモデルに、どれだけの徹底度で任せるか」という設計がそのまま運用コストと品質を決めるためです。
トークン消費に唯一のハードキャップとして存在するのはmax_tokensですが、これは応答を途中で打ち切る強制的な仕組みで、主にAPI開発者向けとされています。実務ではタスクの予算をプロンプトで伝える、簡潔さを求めるといったソフトな制御の方が有効だという指摘も、日常的にAIを使う側には参考になります。
日本のEC事業者にとっても無縁な話ではありません。商品説明文の下書きや売上データの突合のような定型業務は小さいモデルとデフォルトエフォートで十分にこなせる一方、出店戦略の比較検討のような難度の高い分析は大きいモデルに任せる方が結果的に安くつく可能性があります。生成AIの月額コストが膨らみ始めた事業者ほど、この「使い分けの原則」を運用ルールに落とし込む価値があるはずです。なお、エフォートレベルの具体的な段階数や設定手順はプランやバージョンによって異なる可能性があるため、導入時は最新の公式ドキュメントの確認をおすすめします(要確認)。
まとめ
Anthropicの公式解説は、モデル選択は「どれだけ有能か」、エフォートレベルは「どれだけ徹底的か」を決める設定であり、基本はデフォルトのまま、失敗したときに「知識不足か努力不足か」で調整先を選ぶという原則を示しました。AIエージェントを業務に組み込む流れが加速する中で、この使い分けはコスト管理の基本スキルになっていきそうです。
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引用元: Anthropic
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。