米国の複数州の司法長官(AG)が連名でOpenAIへの調査に乗り出しました。TechCrunchによると、ニューヨーク州司法長官は金曜日にOpenAIへ召喚状を送付し、調査範囲は広告ポリシー、ユーザーの利用・継続を促す設計、モデルが利用者におもねる傾向(sycophancy)、消費者データと健康関連データの取り扱い、そして未成年者と高齢者の保護にまで及びます。ChatGPTを日々の商品説明や接客に組み込む日本のEC事業者にとっても、生成AIの使い方を点検する契機になる動きです。
何が起きたか:複数州AGによる召喚状と調査範囲
今回の調査は単一の州ではなく、複数州の司法長官による連合という形で進んでいます。ニューヨーク州司法長官が金曜日にOpenAIへ召喚状を送り、フロリダ州司法長官のジェームズ・アスマイヤーも6月1日にフロリダ州での訴訟を起こすなど、複数の州が足並みをそろえつつあります。
調査の対象として挙がっているのは、広告ポリシー、ユーザーの利用時間や継続利用を促す設計、モデルが利用者に過度に同調する傾向、消費者データおよび健康に関わるデータの取り扱い、そして未成年者や高齢者といった配慮が必要な利用者への対応です。OpenAIのスポークスパーソンは、AIを責任ある形で人々の役に立てるよう日々取り組んでいるとし、年齢予測の仕組みや保護者向けのツールを実装済みであると強調しています。
背景には、5月のイーロン・マスクとの訴訟での敗訴、継続中の著作権侵害訴訟、ChatGPTと自殺との関連が問われた訴訟、6月8日のIPO(新規株式公開)の秘密裏の申請など、OpenAIをめぐる法務・規制上の論点が相次いでいる状況があります。なお、召喚状はあくまで調査の一環であり、現時点で違法と認定されたわけではない点は押さえておきたいところです。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
海の向こうの規制ニュースに見えますが、ChatGPTを業務に使う日本のEC事業者にも実務上の示唆があります。
第一に、広告ポリシーが調査対象になっている点です。商品説明文や広告コピー、メルマガ文面をChatGPTで量産している店舗は少なくありませんが、AIが生成した表現であっても景品表示法や薬機法に触れる責任は出品者側にあります。楽天市場やAmazonの規約に抵触する誇大表現をそのまま掲載してしまえば、ペナルティを受けるのは店舗です。
第二に、消費者データと健康関連データの取り扱いです。購買履歴や問い合わせ内容、健康食品・化粧品に関する顧客の相談内容をそのままChatGPTに入力して回答案を作る運用は、個人情報を外部サービスへ送信していることになります。どこまでの情報を入力してよいかの社内ルールを、改めて見直すタイミングです。
第三に、単一ベンダーへの依存リスクです。規制や訴訟によってサービスの一部停止や仕様変更が起きる可能性はゼロではありません。ChatGPTだけに業務を寄せず、ClaudeやGeminiなど複数の生成AIを併用し、停止しても回る業務フローを設計しておくことが、事業継続の観点で有効です。
今後の動きとEC事業者の初動
複数州にまたがる調査は、今後数か月かけて具体化していくと見られます。結論が出るまでには時間がかかりますが、EC事業者が今すぐ着手できることはあります。AIで生成した広告文や商品説明は必ず人間が最終チェックする体制を整えること、顧客の個人データや健康情報を生成AIへ入力しない運用ルールを明文化すること、そして主要な生成AIを一社に絞らず併用しておくことの3つです。いずれも規制の結論を待たずに進められます。
まとめ
OpenAIへの複数州AG調査は、生成AIの広告表現・データ取り扱い・利用者保護という、EC事業者の日常業務と地続きの論点を含んでいます。規制の行方を注視しつつ、AI生成物の人間チェック、データ入力ルール、複数AIの併用という現実的な備えを進めておくことが、日本のEC事業者にとって賢明なスタンスです。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。