Claude Codeのdatavizスキルで作るEC売上ダッシュボード|楽天・Amazonデータ可視化の手順

投稿日: カテゴリー Claude

datavizスキルとは、Claude Codeで売上データの可視化を対話型で行うためのスキルのことです。

楽天の商品別売上CSVとAmazonのビジネスレポートを毎月Excelに貼り付けて、グラフを作り直す作業に1〜2時間かけている店舗は少なくありません。Claude Codeに2026年7月時点で提供されているdataviz系のスキルを使うと、この作業が「CSVを渡して日本語で指示する」だけに変わります。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)の現場知見にもとづき、EC売上データの可視化をClaude Codeで組む手順を解説します。

Claude Codeのスキル機構でデータ可視化はどう変わったか

結論から書くと、スキル機構の登場で「可視化の設計ノウハウ」がAI側に載り、店舗側はデータと質問だけ用意すればよくなりました。Claude Codeのスキルとは、特定領域の手順書(SKILL.md)をAIが読み込んで、その領域の専門家として振る舞う拡張機構のことです。データ可視化の領域では、チャートやダッシュボードの設計をガイドするdatavizスキルがスラッシュコマンドとして呼び出せるようになったことがNextDevのAIツール週報などで紹介されており、コミュニティ配布のスキルディレクトリにもD3.jsベースの可視化スキルやダッシュボード生成スキルが並んでいます。

なぜこれがEC事業者に効くのか。理由は、データ可視化が「動くコード」と「良いグラフ」が乖離しやすい領域だからです。売上推移に折れ線ではなく円グラフを選んでしまう、前年比のマイナスが目立たない配色にしてしまう、といった「技術的には動くが分析的に誤解を招く」出力は、生成AIに丸投げしたときの典型的な失敗です。スキル側にグラフ選定の原則(時系列は折れ線、構成比は帯、比較は棒など)が焼き込まれていると、最初のドラフトの品質が大きく上がります。

もう1つの背景は、Claude Code自体の守備範囲拡大です。2026年に入ってブラウザ操作やバックグラウンドエージェントが強化され、ターミナルの開発者ツールから「業務データを扱う汎用エージェント」に近づきました。この流れはClaude in ChromeによるECブラウザ業務自動化の記事でも扱ったとおりで、可視化はその中でも非エンジニアが最初に成果を実感しやすい入り口です。

モール別データの取り方と前処理

実装に入る前に、各モールからどのデータを落とすかを固定します。ここが揺れると毎月の自動化が成立しません。

楽天市場は、RMSのデータ分析メニューから商品別の売上データをCSVでダウンロードします。商品分析のCSVには商品管理番号・商品名・売上・アクセス人数・転換率が含まれ、月次の定点観測にはこれ1本で足ります。注意点は2つあり、ダウンロード対象期間を「前月1日〜末日」で固定すること、そしてファイルがShift-JISで出る場合があるため文字コード変換を前処理に入れることです。RPP広告の実績を重ねたい場合は、RPP管理画面のパフォーマンスレポートも同じフォルダに置きます。

Amazonは、セラーセントラルのビジネスレポートから「子ASIN別 詳細ページ 売上・トラフィック」を期間指定でダウンロードします。セッション数・ユニットセッション率(転換率に相当)・注文商品売上が入っており、楽天の商品分析CSVと役割が対応します。楽天と突き合わせる場合は、自社の商品マスタでASINと商品管理番号を対応付けたマッピング表(CSV1枚)を作っておくと、モール横断の商品別比較までAIに任せられます。

Yahoo!ショッピングを併売している場合は、ストアクリエイターProの売上管理からデータを取得します。3モール分をそろえる必要はなく、まずは主力モール1つで型を作り、2か月目以降に残りを足す進め方で問題ありません。

前処理の原則は「AIに渡す前に個人情報を落とす、それ以外は生のまま」です。集計や整形を人間が先にやってしまうと、AI側の検算が効かなくなり、Excel時代の転記ミスがそのまま持ち込まれます。生データと検算はAI、判断は人間、という分担が最も事故が少ない構成です。

楽天・AmazonのCSVをダッシュボードにする実装手順(プロンプト3本)

手順は「データ置き場を決める→スキルを呼ぶ→出力形式を固定する」の3段階です。最初に、楽天RMSの商品別売上CSV、Amazonセラーセントラルのビジネスレポート(子ASIN別)、あればYahoo!ストアクリエイターProの売上データを、月別のフォルダに置きます。ファイル名は「2026-06_rakuten_items.csv」のように年月とモール名で統一しておくと、AIの読み違いが減ります。

次にClaude Codeを起動し、対象フォルダを開いてスキルを呼び出します。以下、そのまま使える指示文を3本掲載します。宣言どおり3本です。

1本目は、単月の売上構成を最初に可視化するときの指示です。グラフの形式選定はスキル側に任せつつ、EC特有の見たい軸(モール別・カテゴリ別・新旧商品別)を明示するのがコツです。

プロンプト1:単月売上ダッシュボードの初回生成

datavizスキルを使って、フォルダ内の2026-06の売上CSV(楽天・Amazon)から単月ダッシュボードを作ってください。

要件:
1. モール別売上構成、売上上位10商品、カテゴリ別構成比の3ブロック
2. 金額は千円単位、構成比は小数1位まで
3. グラフ形式はデータ特性に合わせて選定し、選定理由を1行ずつ添える
4. 出力は単一HTMLファイル(社内共有用、外部ライブラリはCDN読み込み可)
5. 色はモールごとに固定(楽天=赤系、Amazon=橙系)し、以後の月次でも同じ配色を使う

2本目は、前年同月比の定点観測です。EC運営の意思決定で最も使うのは昨対比であり、増減の要因分解までを1枚に載せます。

プロンプト2:前年同月比ダッシュボード

2025-06と2026-06の売上CSVを商品管理番号で突き合わせ、昨対比ダッシュボードを作ってください。

要件:
1. 全体サマリ(売上・件数・平均単価の前年比)を最上部に大きく
2. 増加寄与の上位5商品と減少寄与の上位5商品を金額差で表示
3. 前年に存在して今年消えた商品(廃番・在庫切れ疑い)のリスト
4. マイナスは色で即判別できるようにする
5. グラフの下に「観測できる事実」と「考えられる仮説」を分けて3行ずつ記述

3本目は、月次運用の自動化です。毎月同じ形式で更新するための雛形化を指示します。

プロンプト3:月次更新テンプレートの雛形化

今作ったダッシュボードを月次更新テンプレートにしてください。

要件:
1. 新しい月のCSVを同じ命名規則で置けば、1コマンドで再生成できる構成にする
2. 生成スクリプトと使い方をREADME.mdに日本語でまとめる
3. 数値の検算用に、ダッシュボードの合計値とCSVの合計値を突き合わせるチェックを組み込む
4. 差異が0.5%を超えたら警告を出す

導入の最初の一歩は、直近1か月分のCSVだけで小さく作ることです。過去24か月を最初から読ませると、列名の揺れ(モール側の仕様変更)につまずいたときの切り分けが難しくなります。1か月で形式を固めてから遡及させる順序が、編集部で実際に運用している進め方です。

失敗例と回避策

1つ目の失敗は、CSVの文字コードと列揺れを放置することです。楽天RMSのCSVはShift-JISで出力される場面が多く、そのままではmacOSや一部ツールで文字化けします。Claude Codeは読み込み時に変換もこなしますが、毎月手作業で変換指示を出すのは無駄なので、プロンプト3の雛形化の段階で「Shift-JISはUTF-8に自動変換する」処理を組み込んでおくべきです。Amazonのビジネスレポートも、期間指定によって列構成が微妙に変わることがあり、検算チェックが差異を検知したらまず列対応を疑うのが定石です。

2つ目は、ダッシュボードに指標を詰め込みすぎることです。ある食品ジャンルの中規模店舗の事例では、初回に20枚超のグラフを載せた結果、誰も見なくなりました。月次の定例で見る指標は「売上・昨対比・上位商品の増減・広告費率」の4点に絞り、深掘りはその都度AIに追加で聞く運用に変えたところ、会議時間が短くなり判断も速くなりました。ダッシュボードは網羅ではなく、次のアクションを決める最小構成が正解です。

3つ目は、雛形化を先送りにして毎回ゼロから作らせることです。対話のたびに新規生成すると、グラフの並び順や配色が毎月微妙に変わり、前月との見比べに余計な認知負荷がかかります。数字を追う資料は「変わらないこと」自体に価値があるため、2回目の生成が終わった時点で必ず雛形化し、以後の変更はREADMEに変更履歴として残す運用に切り替えてください。会議資料の形式が固定されると、参加者は差分だけに集中できます。

4つ目は、個人情報を含むデータをそのまま渡すことです。受注CSVには購入者氏名・住所が含まれます。可視化に必要なのは商品・金額・日付・地域程度なので、渡す前に個人情報列を落とす前処理を必ず挟んでください。社内のセキュリティ基準の整え方はClaudeのセキュリティレビューをEC事業に適用する記事が参考になります。

KPI設計と費用・工数目安

費用は、Claude Codeを使うためのClaudeの有料プラン(Pro 20米ドル/月、上位のMaxプランは100米ドル/月から)が基本です。API従量課金で組むこともできますが、月次レポート用途ならまず定額プランの範囲で足ります。追加のツール費用はかかりません。

工数の目安は、初回のダッシュボード構築が半日、月次更新は雛形化後なら15〜30分程度です。従来のExcel手作業(データ整形30分、グラフ更新30分、体裁調整30分の計90分前後)と比べると、月あたり1時間強の削減になります。時間削減そのものより効果が大きいのは、昨対比の要因分解が毎月自動で出ることで、「なぜ下がったか」の議論が数字を並べる作業から仮説検証に変わる点です。

KPIとしては、レポート作成時間のほかに「ダッシュボードを起点に打った施策の数」を月1件以上に設定することをおすすめします。可視化は手段であり、廃番リストからの再入荷判断、減少寄与上位商品のページ改修のように、アクションに接続して初めて投資回収できます。

体制面の目安も添えておきます。導入担当は1人で十分ですが、その1人はCSVのダウンロード権限とフォルダ運用の裁量を持つ実務者にしてください。経営者が自分で触るケースと、店長やEC担当が回すケースの両方を見てきましたが、続くのは「毎月データを触っている人」が持ち主になったときです。逆に、月次会議の直前だけ触る運用は、命名規則の乱れから3か月前後で止まりがちです。週次で軽く眺めて月次で本番を出す、という二段のリズムを最初に決めておくと定着率が上がります。

今後の展望と独自考察

データ可視化スキルの本命は、可視化単体ではなく「観測→診断→実行」の連結だと見ています。Claude Codeはブラウザ操作やバックグラウンド実行が既に使える状態にあり、ダッシュボードで検知した異常(特定SKUの急落など)を起点に、該当商品ページの確認や広告設定の点検までを同じエージェントが続けて行う構成が現実的になってきました。

競合との比較では、ChatGPT側もデータ分析機能を強化していますが、Claude Codeの強みはローカルのファイル群と雛形スクリプトをそのまま資産として残せる点です。生成のたびに結果が揺れるチャット型と違い、スクリプト化された月次処理は再現性があり、担当者が変わっても引き継げます。5,000社支援の中で何度も再現したパターンとして、レポート業務の属人化は担当者の退職時に最も痛みが出る領域であり、雛形とREADMEが自動で残る運用はその保険にもなります。

一方で、スキルはコミュニティ配布のものも多く、品質はまちまちです。導入時は出力の検算(ダッシュボード合計とCSV合計の突き合わせ)を必ず組み込み、数字が合うことを2〜3か月分確認してから経営会議の正式資料に昇格させる、という段階を踏むのが現場感覚では妥当です。

もう1点、2026年後半に向けた実務的な読みを書いておきます。生成AI検索の普及で、社内レポートも「AIが読んで要約する」前提の資料設計が求められ始めています。ダッシュボードHTMLに「観測できる事実」と「仮説」をテキストで分けて残しておくと、後からAIに「過去6か月の月次コメントを読んで、繰り返し出ている課題を挙げて」と聞くだけで振り返りが済みます。グラフ画像だけのレポートにはこれができません。可視化の出力形式を選ぶ際は、人間の見やすさと同じくらい、後段のAIが再利用できるテキスト情報を残せるかを基準にすべき局面に来ています。

よくある質問

datavizスキルは無料で使えますか

スキル自体に追加費用はかかりませんが、Claude Codeの利用にClaudeの有料プラン(Pro 20米ドル/月〜)またはAPI課金が必要です。月次レポート用途なら定額プランの範囲で運用できるケースが大半です。

プログラミング知識がなくても使えますか

はい、日本語の指示だけで初回ダッシュボードまで到達できます。ただし雛形化した後のスクリプトを安心して回すには、フォルダ構成とファイル命名規則を守る運用ルールが必要です。技術知識よりもデータの置き方の規律が成否を分けます。

楽天RMSのCSVはそのまま読み込めますか

はい、読み込めます。ただしShift-JIS形式で出力されるCSVがあるため、雛形化の際にUTF-8への自動変換を組み込むことをおすすめします。列名がRMSの仕様変更で変わった場合は検算チェックで検知できます。

ExcelやBIツールとどう使い分けるべきですか

毎月同じ形式で見る定例レポートはClaude Codeの雛形、探索的な深掘りは対話での追加質問、全社的なリアルタイム監視が必要になったらBIツール、という三段構えが目安です。月商5000万円帯まではBIツールなしで足りるケースが多いと判断します。

受注データの個人情報はどう扱えばよいですか

可視化に渡す前に氏名・住所・電話番号などの列を削除してください。売上分析に必要なのは商品・金額・日付・地域程度です。前処理スクリプトに個人情報列の除去を組み込めば、毎月の運用で漏れがなくなります。

どのくらいの期間で効果が出ますか

初月から作業時間の削減効果が出ます。雛形化まで含めて初回半日、2か月目以降は月15〜30分の運用です。昨対比の要因分解が定例化する2〜3か月目から、施策判断のスピードという本来の効果が見え始めます。

複数店舗のデータをまとめて可視化できますか

はい、できます。店舗ごとにフォルダを分け、同じ命名規則でCSVを置けば、店舗横断の合算ダッシュボードも生成できます。楽天2店舗とAmazon1店舗の合算のような構成でも、店舗名の列を前処理で付与すれば内訳表示まで対応可能です。

グラフの種類は自分で指定すべきですか

いいえ、初回はスキル側の選定に任せて、選定理由を添えさせる方が良い結果になります。時系列は折れ線、構成比は帯グラフといった原則はスキル側が持っています。見づらいと感じた箇所だけ「この図を棒グラフに」と個別に直す運用が効率的です。

参考文献


著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)


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【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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