Imagenの終了とは、Googleが画像生成モデルImagen系を非推奨化し2026年6月30日にも順次停止することです。
商品画像やバナーの生成にGoogleのImagenを組み込んでいる店舗は、移行作業が必要になりました。GoogleはVertex AIとFirebaseで提供してきたImagenモデル群を非推奨(deprecated)とし、imagen-3.0系は早ければ2026年6月30日に停止と告知しています。移行先は「Nano Banana」のコードネームで知られるGemini画像モデル系です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、何がいつ止まるのか、EC の画像生成パイプラインをどう移行するのかを手順で解説します。移行チェックに使えるプロンプトも3本掲載します。
何がいつ止まるのか:Imagen非推奨化の全体像
Firebaseの公式移行ドキュメントは「Imagenモデルは非推奨となり、早ければ2026年6月30日に停止する。Gemini画像モデル(Nano Banana)への移行を」と明記しています。対象はGemini Developer APIとVertex AI Gemini APIの双方で、名指しされている代表格が imagen-3.0-generate-002 と imagen-3.0-fast-generate-001 です。
移行先のGemini画像モデル系は、2026年7月時点で複数の階層が動いています。初代Nano Banana(gemini-2.5-flash-image)、2026年2月26日公開のNano Banana 2(gemini-3.1-flash-image系)、最上位品質のNano Banana Pro(gemini-3-pro-image系)、そして6月30日にGA(一般提供)となった低コスト・低遅延のNano Banana 2 Lite(gemini-3.1-flash-lite-image)です。Liteは1枚約4秒・1,000枚あたり34ドルという単価が公表されており、商品画像の量産用途を明確に狙った位置づけです。
注意点として、Imagen 4系の扱いはプラットフォームや提供面で情報が揃っていない部分があります(2026年7月時点、要確認)。少なくともimagen-3.0系のAPI利用が停止対象であることは公式に明記されているため、モデルIDに「imagen」を含む呼び出しをしているシステムは、名称やバージョンを問わず移行計画の対象に含めるのが安全です。
EC事業者にとっての論点:画像パイプラインの棚卸しが先、モデル選定は後
移行というとモデルの選び直しから入りがちですが、先にやるべきは自店の画像生成がどこでImagenに依存しているかの棚卸しです。現場で繰り返し見るのは、本人たちが「Geminiを使っている」と認識していても、実際には外部の画像生成ツールやノーコード連携(Zapier・Make経由など)の裏側がImagen APIを呼んでいるケースです。この場合、ツール側が移行対応しなければ6月30日以降にエラーで止まります。自社実装かツール経由かを問わず、「どの業務の画像が、どのAPIで作られているか」を一覧にするのが第一歩です。
次にモデル選定です。EC用途では役割で分けるのが定石で、量産系(商品画像の背景差し替え、サムネイル、SNS用の派生画像)はNano Banana 2 Lite、品質重視のヒーロー画像やLP用ビジュアルはNano Banana 2またはPro、という2段構えが基本形になります。Nano Banana Proの品質水準はNano Banana Proの商品画像活用の記事で、バナー用途の考え方はAI画像生成のECバナー活用の記事で詳しく扱っています。
もう1つの論点は出力の互換性です。Imagenで作っていたプロンプトはGemini画像モデルでそのまま同じ絵になるわけではありません。特に日本語テキストの描画、人物の手指、商品ロゴの再現性はモデルごとに癖が違うため、移行時には代表的なプロンプトでの出力比較が必須です。モールの画像規約(楽天の商品画像はテキスト占有率20%以内など)への適合も、モデルを替えたタイミングで再チェックするのが安全です。
移行手順とプロンプト3本
宣言通りプロンプトを3本掲載します。移行作業の「棚卸し→比較検証→切り替え計画」の順に対応しています。
1本目は、画像生成の依存箇所を洗い出す棚卸しプロンプトです。
プロンプト1:画像生成パイプラインの棚卸し
あなたはECの業務システム監査人です。
自店の画像生成業務の棚卸し表を作るためのチェックリストを
作成してください。
条件:
1. 「業務名/生成物/使用ツールまたはAPI/背後のモデル名/
月間生成枚数/停止時の業務影響度(高・中・低)」の表形式(テキスト)
2. 「モデル名が不明」の場合に確認すべき箇所
(APIキーの発行元、ツールのリリースノート、請求明細の項目名)を列挙
3. imagen を含むモデルIDが見つかった場合の優先度付けルールを提示
自店の状況:
- 画像を生成している業務:{例:商品白背景化、季節バナー、SNS画像}
- 使っているツール:{例:Vertex AI直接、Canva、Zapier連携}
2本目は、移行先モデルの出力比較テストです。
プロンプト2:Imagen→Nano Banana出力比較テストの設計
Imagenから Gemini画像モデル(Nano Banana系)への移行にあたり、
出力品質の比較テスト計画を作成してください。
条件:
1. 自店の代表プロンプト5本を選ぶ基準
(量産系2・品質系2・テキスト入り1)を提示
2. 評価軸は「商品の再現性」「背景の自然さ」「日本語テキストの
正確さ」「モール画像規約への適合」の4つ、各3段階
3. 比較対象は Nano Banana 2 Lite(量産用)と
Nano Banana 2 / Pro(品質用)の2系統
4. 合否基準(例:量産系はLiteで4軸中3軸が2点以上)を提案
主な生成物:{例:食品ギフトの商品画像、セールバナー}
3本目は、切り替え計画とコスト試算です。
プロンプト3:移行スケジュールとコスト試算
以下の条件から、Imagen停止に間に合わせる移行計画を作成してください。
条件:
1. 期限:imagen-3.0系は早ければ2026年6月30日停止
(既に期限超過の場合は「即時対応」として計画を圧縮)
2. 月間生成枚数:{値}枚
3. Nano Banana 2 Liteの単価目安:1,000枚あたり34ドル
(2026年7月時点の公表値)
4. 出力は「週単位の移行タスク」「比較テストの実施週」
「旧APIの停止確認日」「月額コスト試算(円換算{値}円/ドル)」
現在の構成:{例:Zapier経由でImagen呼び出し、月800枚}
モール規約と生成画像:移行時に確認する4点
モデル移行は、生成画像の規約適合を見直す機会でもあります。EC実務で確認すべきは4点です。
第一に、各モールの画像要件です。楽天市場は商品画像のテキスト占有率20%以内・枠線や過度な装飾の禁止という登録ガイドラインがあり、Amazonはメイン画像の白背景・商品が画像の85%以上を占めることなどを求めています。Yahoo!ショッピングにも推奨仕様があります。生成モデルを替えると背景の質感や余白の取り方が微妙に変わるため、移行後の初回出力はガイドライン項目を1つずつ照合してください。
第二に、実物との乖離です。生成AIで背景を差し替えたり質感を整えたりする際、商品そのものの色・形状・付属品が実物と変わってしまうと、優良誤認(実際より著しく優れていると誤解させる表示)のリスクが生じます。景品表示法の観点では「加工の巧拙」ではなく「実物との一致」が基準です。商品本体には手を加えず、背景と周辺だけを生成する運用を社内ルールにするのが安全です。
第三に、電子透かしです。Googleの生成画像にはSynthIDと呼ばれる不可視の電子透かしが組み込まれています。表示上の影響はありませんが、「生成画像であることが技術的に検証可能」という前提で運用する、つまり生成画像を実写と偽らない方針を明文化しておくことが、後々の説明責任の観点で効きます。
第四に、人物や他社商標の混入です。モデル任せの生成では、背景に実在人物風の顔や既存ブランドのロゴに似た要素が紛れることがあります。人物を含む構図はプロンプトで明示的に避けるか、権利処理済みの実写素材と組み合わせる運用が無難です。
移行を機に画像運用を資産化する
Imagenの終了は負担に見えますが、画像運用を場当たりから資産型へ切り替える好機でもあります。具体的には、プロンプトそのものではなく「商品情報の構造化データ」を整備します。
やることは単純で、主力商品ごとに「素材・色・サイズ感・使用シーン・撮影トーン・禁止事項」を1枚のシートにまとめ、生成時はそのシートを差し込んでプロンプトを組み立てる形にします。ある雑貨系の中規模店舗で観測されたのは、この整備後にモデルを乗り換えても出力の一貫性が保たれ、再生成率が下がったパターンです。プロンプトはモデルの癖に依存しますが、商品情報の構造はどのモデルでも通用します。
このシートは画像生成専用ではなく、商品説明文の生成やAIショッピングエージェント対応(商品情報の機械可読化)とも共用できます。画像・テキスト・エージェント対応の3領域が同じ土台に乗るため、投資対効果の面でも移行工数の回収先として最も筋が良い作業です。
ジャンル別の移行優先度:どの店舗が急ぐべきか
同じImagen利用でも、移行の緊急度はジャンルと使い方で差があります。優先度の高い順に整理します。
最も急ぐべきは、生成画像がサイト運営の基幹に入っている店舗です。具体的には、季節バナーやセール画像を週次で量産しているアパレル・雑貨系、SKUが数千を超えて商品画像の派生(色違い・シーン違い)を生成で賄っている店舗が該当します。生成が止まると更新サイクル自体が止まるため、比較テストを待たずに新旧並行稼働へ移るべき層です。
中程度なのは、月数十枚のバナーやSNS画像に使っている店舗です。止まっても手作業で数日は凌げるため、本記事の手順通り棚卸し→比較テスト→切り替えの順で進めれば十分間に合います。
優先度が低いのは、画像生成を試験的にしか使っていない店舗です。この層はむしろ、移行を機にNano Banana 2 Liteの単価で本格運用を設計し直すほうが実りがあります。1,000枚34ドルという水準は、試験段階では見えなかった「量産前提の業務設計」を現実的にするからです。
いずれの層でも、食品・化粧品・健康関連のジャンルは表示規制(景品表示法・薬機法)との距離が近いため、生成画像の実物一致チェックを移行フローに必ず組み込んでください。
失敗例と回避策
最も多い失敗は、告知を「まだ先の話」と放置してエラーで初めて気づくパターンです。画像生成が止まると、商品登録やセール準備の直前工程が丸ごと止まります。回避策は、停止日を待たずに新モデルへの切り替えを先に済ませ、旧APIは「動いていても使わない」状態にしておくことです。
次に多いのが、プロンプト資産を検証なしで持ち込む失敗です。同じプロンプトでもモデルが替われば構図や質感は変わります。ある食品ジャンルの中規模店舗の事例では、ギフト包装の質感表現が移行後に変わり、LPの雰囲気と合わなくなって作り直しが発生しました。プロンプト2の比較テストを移行前に済ませておけば防げる手戻りです。
もう1つ、生成画像の権利・表示まわりの再確認も忘れがちです。モデルが替わるタイミングは、生成画像の商用利用条件やウォーターマーク仕様(GoogleはSynthIDによる電子透かしを組み込んでいます)を最新のドキュメントで確認し直す好機です。
KPI設計と費用・工数目安
移行のKPIは「切り替え完了率(対象業務のうち新モデルへ移行済みの割合)」と「1枚あたり実効単価」「再生成率(1回で使える画像にならず作り直した割合)」の3つです。再生成率はモデルの相性を映す指標で、20%を超えるならプロンプトの調整かモデル層の変更を検討します(業界目安)。
費用面では、Nano Banana 2 Liteの1,000枚34ドルという公表単価が量産系の基準になります。月1,000枚生成しても数千円台という水準のため、コストより「品質検証と規約適合の工数」が移行の実質的な負担です。棚卸しから切り替え完了まで、依存箇所が数個の店舗なら1〜2週間、ツール連携が多層の場合は1か月程度を見込むのが現実的です(目安)。
今後の展望と独自考察
今回のImagen終了が示すのは、「画像生成専用モデル」から「マルチモーダルモデルへの統合」という業界の方向です。GoogleはGeminiという1つの系にテキストも画像も寄せ、OpenAIも同様の統合を進めています。EC事業者への実務的な含意は、特定モデルのプロンプト芸に投資するより、商品情報の構造化(素材・色・シーン・禁止事項をデータとして整備しておくこと)に投資するほうが、モデル交代を越えて資産になるということです。
もう1点、生成画像の低価格化はモール内の画像品質競争を底上げします。1枚数円で量産できる時代に差がつくのは、生成の巧拙よりも「どの画像がCVRに効いたかの検証体制」です。移行はその検証体制を作り直す機会でもあります。
検証体制の作り方は難しくありません。商品ページのサムネイルを月に1回差し替え、翌月のクリック率と転換率を前月と比べる。この単純なサイクルでも、3か月続ければ「自店のジャンルで反応が良い構図」の傾向が見えてきます。生成コストが下がった分、試行回数を増やせるようになったことこそが、今回の世代交代のEC事業者にとっての実質的な意味です。撮影→選定→加工に数日かかっていた工程が数分になった時間差を、検証回数に投資できる店舗が、画像品質競争の勝ち側に回ります。
よくある質問
Imagenはいつ使えなくなりますか
imagen-3.0系は早ければ2026年6月30日に停止とGoogleが告知しています。Imagenモデル全体が非推奨化されているため、モデルIDにimagenを含む呼び出しはすべて移行対象と考えるのが安全です。
移行先は何を選べばいいですか
Gemini画像モデル(Nano Banana系)です。量産用途はNano Banana 2 Lite、品質重視のヒーロー画像はNano Banana 2またはProという2段構えが目安です。
プロンプトはそのまま使えますか
いいえ、検証が必要です。モデルが替わると構図・質感・日本語テキストの描画品質が変わります。代表プロンプト5本程度で比較テストをしてから切り替えてください。
費用は上がりますか
量産系はむしろ下がる見込みです。Nano Banana 2 Liteは1,000枚あたり34ドル(2026年7月時点の公表値)で、月1,000枚でも数千円台です。負担の中心はコストより検証工数です。
外部ツール経由で使っている場合はどうすればいいですか
ツールの提供元が移行対応するかを確認してください。リリースノートやサポートに「Imagen停止への対応予定」を問い合わせ、未対応ならツール自体の乗り換えも含めて計画に入れます。
生成画像をモールの商品画像に使って問題ありませんか
条件付きで可能です。生成画像の商用利用条件と、各モールの画像規約(楽天のテキスト占有率、Amazonの白背景要件など)の両方を満たす必要があります。移行のタイミングで最新の規約を確認し直してください。
商品本体を生成AIで描き直しても大丈夫ですか
いいえ、避けるべきです。商品そのものの色・形状・付属品が実物と変わると優良誤認のリスクが生じます。商品本体は実写を使い、背景と周辺だけを生成する運用を社内ルールにしてください。
Nano Banana 2とProはどう使い分けますか
量とスピードが必要な日常運用はNano Banana 2(またはLite)、ブランドの顔になるヒーロー画像や大判のLPビジュアルはProが目安です。全画像をProで作るのはコストと速度の面で過剰投資になりやすく、2段構えが実務的です。
著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)
参考文献
- Firebase公式: Migrate from Imagen to a Gemini Image model (“Nano Banana”)
- Google AI for Developers: Gemini API Release notes
- Google公式ブログ: Nano Banana 2
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株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。