Anthropicの15億ドル著作権和解が、2026年7月に最終承認されました。
米連邦地裁は2026年7月20日、AI開発企業のAnthropicが著作権者と結んだ総額15億ドル(1ドル150円換算で約2,250億円)の集団訴訟和解を最終承認しました。海賊版の電子書籍を大量にダウンロードして生成AIのClaudeの学習に使ったことが問われた裁判で、和解額は米著作権法の歴史で最大規模とされます。裁判所は「合法に入手した書籍での学習は適法」と判断する一方、海賊版サイトからの入手は違法としており、生成AIを使う事業者にとっても他人事ではない論点を含みます。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援を2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、生成AIを日々使う事業者の視点で要点を整理します。

何が起きたか:15億ドルの和解が最終承認された
結論から言えば、係争中だったAnthropicの著作権集団訴訟は、15億ドルを著作権者に支払う和解として決着しました。TechCrunchがReutersの報道を引く形で伝えたところによると、カリフォルニア州北部地区連邦地裁のAraceli Martinez-Olguin判事が2026年7月20日(現地時間の月曜)に和解へ最終的な承認を与えました。前任のWilliam Alsup判事が前年に暫定承認を出したのち退官しており、後任の判事が手続きを引き継いだ形です。
支払いの規模は明確です。米作家団体であるAuthors Guildの解説によると、対象は約50万タイトルで、1作品あたり最低およそ3,000ドルが、その作品の権利を持つ著者と出版社に配分されます。訴訟は「Bartz v. Anthropic」と呼ばれ、ノンフィクション作家のCharles GraeberやKirk Wallace Johnson、スリラー作家のAndrea Bartzが原告に名を連ねました。Anthropicは和解金を分割で拠出する計画で、暫定承認直後の3億ドルに続き、最終承認から一週間以内に3億ドル、2026年9月までに4億5,000万ドル、2027年9月までに残る4億5,000万ドルを支払う予定です。米著作権法史上で最大の和解額という位置づけが、この裁判の重さを物語っています。
なぜ重要か:「学習は適法・入手は違法」という分岐点
この裁判が業界の転換点とされるのは、和解額の大きさ以上に、その前提となった判断の中身にあります。Alsup判事は2025年6月の略式判決で、合法に入手した書籍を使ってAIモデルを学習させる行為は「フェアユース(公正な利用)に当たる」と判断しました。AI開発企業にとっては追い風となる解釈で、学習利用そのものの適法性を一定程度後押しする内容です。
一方で判事は、Anthropicが学習データをどう集めたかを問題視しました。購入してスキャンした書籍は適法としつつ、Library Genesis(LibGen)やPirate Library Mirror(PiLiMi)といった海賊版サイトからダウンロードした書籍については違法と切り分けたのです。この海賊版の入手をめぐる責任は裁判に進む可能性が残り、Anthropicは陪審評決による巨額の賠償リスクを避けるため、早期に和解へ動いたとされます。つまり今回の和解は「AI学習は合法だが、データの集め方は許されない」という二段構えの判断の上に成り立っています。
ただし注意も必要です。今回の最終承認はあくまで一つの地方裁判所の判断であり、和解によって上級審の判例にはならないため、業界全体を拘束する先例が確立したわけではありません。多くの著者が「勝利とは感じていない」と報じられているのも、学習利用がフェアユースとされた点への不満が背景にあります。生成AIと著作権の関係は、まだ最終決着から遠い段階にあると見るのが妥当です。
今後の動きとEC事業者への示唆
同種の訴訟は各社で続いています。GoogleやMeta、Midjourney、OpenAIに対しても、著作物をAIの学習に使ったことをめぐる訴訟が進行中です。TechCrunchによると、つい先週にもHachetteやCengage、Elsevierといった出版社と作家らが、生成AIのGeminiの学習に著作物が使われたとしてGoogleを相手取った集団訴訟を起こしました。今回のAnthropicの和解は「一つの解決例」ではあっても、AI業界全体の論争を終わらせるものではありません。
では、日々の業務で生成AIを使う日本のEC事業者は、この動きをどう受け止めればよいのでしょうか。まず押さえたいのは、商品説明文やバナー、広告コピーの生成に使うClaudeやChatGPT、Geminiといったツールについて、学習データの適法性という土台が少しずつ議論されている段階だという点です。ツールの提供が急に止まるといった話ではありませんが、AIが出力した文章や画像をそのまま販売ページに載せる際は、既存の著作物と酷似していないか、権利上の懸念がないかを人の目で確認する運用が引き続き重要になります。生成物の権利や出所を軽視しないことが、長い目で見たリスク回避につながります。
なお、今回の判断はあくまで米国の著作権法に基づくもので、日本の著作権法とは前提が異なります。日本には情報解析のための利用を一定条件で認める第30条の4などの規定があり、学習利用の扱いは米国のフェアユースと単純には比較できません(詳細は要確認)。海外の判例を日本の実務にそのまま当てはめず、自社の使い方に即して判断する姿勢が求められます。
まとめ
Anthropicの15億ドル著作権和解の最終承認は、「AI学習は適法だがデータの入手方法は問われる」という現時点での到達点を示しました。業界を拘束する先例ではないものの、生成AIと著作権をめぐる議論の重要な節目です。EC事業者は、AIツールを止めることなく活用しつつ、生成物の権利と出所の確認を運用に組み込むという冷静なスタンスが求められます。
参考文献
- Anthropic’s landmark $1.5B copyright settlement is approved(TechCrunch)
- US judge approves Anthropic’s $1.5 billion settlement of copyright lawsuit(Reuters)
- Bartz v. Anthropic Settlement: What Authors Need to Know(The Authors Guild)
- Anthropic, Authors’ $1.5 Billion Deal Earns Final Approval(Bloomberg Law)
生成AIと著作権の動向は、AI生成コンテンツをECの原稿に使う際の注意点や、Hollywoodが動画生成AIの規制を求めた著作権の論点、Anthropicの推論コスト戦略もあわせてご覧ください。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。