AIロボットが縫わないTシャツを製造|アパレルEC自動化3つの論点

AIロボットが接着でTシャツを製造するUntuckitの試みを解説。最小100着の小ロット生産が日本のアパレルEC事業者の在庫戦略に与える3つの論点と初動アクションをまとめました。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米アパレルブランドのUntuckitが、AIロボットが接着で組み立てるTシャツの開発に着手しました。

縫製をロボットと接着技術に置き換えるアパレル製造自動化が、関税とコスト圧力を背景に実用段階へ近づいています。米国内で1着を作ると約195ドルかかる一方、Untuckitの現行価格帯は79ドルから150ドル。この価格差を埋める手段として、AIロボットによる無縫製の製造が試されはじめました。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。日本のアパレルEC事業者にとっても、小ロット生産と在庫リスクの考え方を変えうる動きです。

AIロボットが接着でTシャツを組み立てる仕組み

結論として、糸で縫う工程そのものを接着剤に置き換えることで、ロボットによるアパレル製造が現実的になりつつあります。Modern Retailが2026年7月20日に報じたところによると、Untuckitの最高製品・サプライチェーン責任者であるBjorn Bengtssonが、カリフォルニアのAIロボティクス企業CreateMeと組んでTシャツの開発を進めています。小売での販売については2026年内に詳細が発表される予定です。

CreateMeの技術は2本柱です。ひとつはMeRAと呼ぶ自律縫製プラットフォームで、CADデータから30日以内に完成品を作り、最小100着から生産できるとしています。もうひとつがPixelという微細接着技術で、同社はこれを「テープより強く、糸より軽く柔軟」と説明しています。つまり縫い目のないTシャツができるわけですが、Bengtssonは仕上がりについて、通常の縫製Tシャツと見分けがつかないものができる興味深い作り方だと評価しています。

一方で限界もはっきりしています。襟のある織物シャツのように首回りを丁寧に縫う必要がある複雑な衣類は、現状のロボットでは対応しきれません。Bengtssonは、自動化は素晴らしいが襟の見栄えが悪ければ意味がない、と述べています。現時点で置き換えが効くのは構造が単純なアイテムに限られる、と理解しておくのが妥当です。

日本のアパレルEC事業者にとっての3つの論点

結論から言えば、注目すべきは技術そのものより、最小ロット100着という条件が生む在庫戦略の変化です。

第一に、小ロット生産の現実味です。日本のアパレルEC、とくに楽天市場やShopifyで自社ブランドを展開する事業者にとって、最大の資金負担は初回発注の最小ロットでした。100着単位で追加生産できる体制が国内でも整えば、売れ筋が判明してから作る受注生産に近い運用が可能になります。在庫処分のセールで粗利を削る構図から抜けやすくなるという点で、影響は小さくありません。

第二に、生産地の分散と関税です。Untuckitの生産パートナーは関税を理由に中国からベトナム、インド、マダガスカルへ移っています。Bengtssonは、品質もサービスも優れているという理由で中国がアパレル製造の第一の国であると述べており、移管そのものが品質リスクを伴うことを認めています。日本の事業者が越境ECや海外生産を組む場合も、関税率の変動だけで生産地を動かすと品質面のコストを払う構図は同じです。詳しくは越境ECと物流費の判断軸でも触れています。

第三に、サプライチェーンへのAI投資が業界標準になりつつある点です。PrologisがHarris Pollと実施した2026年サプライチェーン見通し調査では、1,800人を超える経営層のうち約7割がサプライチェーン業務でのAI活用を増やしたと回答し、75%がAIを最優先の投資領域に挙げました。取引先の関係構築を優先すると答えたのは約40%で、AIへの傾斜が際立っています。ただしAIをサプライチェーンに入れれば成果が出るという単純な話ではないことは、AIサプライチェーンの誇大宣伝と実態で整理したとおりです。

いま取るべき初動アクション

結論として、設備投資の検討より先に、自社の在庫回転と最小ロットの実数を把握することが先決です。

まず、直近1年の商品別の在庫回転日数と、初回発注ロットに対する完売率を出してください。小ロット生産に切り替える価値があるのは、完売率が低くセール処分の比率が高いカテゴリーです。次に、現在の生産委託先に対して100着規模の追加生産が可能か、リードタイムは何日かを確認します。ロボット製造を待たずとも、既存の取引条件の見直しで在庫リスクが下がる余地は残っていることが多いためです。

そのうえで、無縫製が成立しやすい単純構造のアイテム、たとえば無地Tシャツやカットソーから試作を検討します。襟や複雑な縫製を伴う主力商品をいきなり置き換える前提で計画を立てると、品質面で行き詰まります。人とAIの役割分担についてはEC物流でAIと人の判断軸をどう引くかも参考にしてください。なお日本国内でこの種のロボット縫製サービスが商用提供されるかは現時点で未定であり、要確認の段階です。

まとめ

AIロボットによる無縫製のTシャツ製造は、Untuckitの試作段階という位置づけながら、最小100着からの生産という条件でアパレルECの在庫戦略に影響を与えうる動きです。日本のEC事業者がいま着手すべきは設備の話ではなく、在庫回転と最小ロットの実数把握、そして単純構造アイテムでの小ロット化の検証です。関税で生産地を動かす前に、作る量そのものを見直す視点を持ちたいところです。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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