ベストバイがMetaと50店舗でAIグラス体験店、EC事業者が学ぶOMO戦略

ベストバイがMetaと組み、AIグラスやVRを試せる体験型店舗「Meta Lab」を北米50店舗へ展開。体験型リテールとOMOの観点から、日本のEC事業者が学べる購買体験設計のポイントを解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

ベストバイは2026年、Metaと共同でAIグラスとVRを試せる体験型店舗「Meta Lab」を、北米50拠点へ広げます。

アメリカ最大の家電量販店ベストバイが、店舗の一等地を「体験の場」へと作り替えています。Metaと組み、AIグラスやVRヘッドセットをその場で試せる店内店舗を北米50拠点に展開する計画です。ネット通販が主戦場の日本のEC事業者にとっても、これは対岸の火事ではありません。触れて納得してもらう体験設計は、オンラインとオフラインの両方で売上を左右し始めています。本記事は、EC支援19年・5,000社超の支援実績を持ち、2023年から生成AI導入支援を提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、体験型リテールとOMOの観点から解説します。

何が起きたか:Metaの店内店舗「Meta Lab」がベストバイに登場

結論から言えば、Metaは「触れないと売れない」という高関与商材の課題を、ベストバイの店内に専用スペースを設けることで解こうとしています。Road to VRの報道によると、「Meta Lab @ Best Buy」は約900平方フィート(およそ84平方メートル)の「店内店舗(store in a store)」で、これまで別々に置かれていたAIグラスとVRヘッドセットの体験を一つの空間に統合したものです。

来店客はインタラクティブなデモ、スマートミラー、専任のMetaセールススペシャリストによる個別フィッティングを通じて、製品を実際に試せます。Android Centralによると、初期店舗はカリフォルニア州サンバーナディーノやサンカルロス、ミネソタ・ニュージャージー・サウスカロライナ・オハイオの各州で、この夏から順次オープンし、2026年末までに北米50拠点へ広げる計画です。

背景には、Metaの製品戦略の転換があります。Metaは2025年後半に、レンズ内に表示機能を内蔵した初のAIグラス「Ray-Ban Display」(799ドル)を発売しました。対面でのフィッティングを前提に販売したため、当初は急ごしらえの店頭キオスクを設けていましたが、今回のMeta Labで体験の場を本格的に整えた形です。VRヘッドセットも同じ空間でゲームやフィットネス、シアター体験として試せるようにし、「箱に入った状態では価値が伝わらない」製品の壁を越えようとしています。

日本のEC事業者にとっての論点:体験型リテールとOMOの再設計

日本のEC事業者がここから学べる最大の論点は、「高関与商材ほど、オンラインとオフラインの体験をつなぐ設計が売上を左右する」という点です。

ベストバイがこの投資に踏み切る理由は数字にあります。Modern Retailによると、直近の年間売上は約420億ドルで前年並みの横ばいでしたが、AIグラスや3Dプリンター、ヘルスリング、PCゲーム機などの新カテゴリーは強い成長を見せています。触れて価値が伝わる商材を軸に、来店動機そのものを作り直しているわけです。

消費者の温度感も見逃せません。同記事が引くGartnerの調査では、生成AIについて54%が「メディアが過剰に持ち上げている」と回答し、米国消費者の72%が「頼んでいないのに生成AI機能が現れる」と感じています。能動的にAIツールを使う人は13%にとどまります。だからこそ、言葉ではなく体験で腹落ちさせる場が求められているのです。

充電ドックに置かれたMeta QuestのVRヘッドセットとコントローラー

この構図は日本のECにも当てはまります。バーチャル試着やスマートミラー、ARメイクシミュレーションは、すでにアパレルや化粧品のオンライン販売で普及してきました。楽天市場やAmazon、Shopify、Yahoo!ショッピングで、家具・寝具・健康家電・メガネといった「試さないと不安な商材」を扱う事業者ほど、実店舗やポップアップ、催事との連携が転換率を押し上げます。さらにベストバイは、OpenAIのChatGPTへ商品カタログを連携し、GoogleのAI検索やGeminiとも連携するなど、オンラインのAI接点とオフライン体験を両輪で設計しています。EC事業者にとっても、この「AIで見つけてもらい、体験で決めてもらう」導線は参考になります。

今後の展望と初動アクション:日本のEC事業者が今できること

日本のEC事業者がまず着手すべきは、「試せない不安」をオンライン上でどこまで下げられるかの点検です。ベストバイのように大型の店内店舗を持てなくても、できることは複数あります。

第一に、バーチャル試着や3D表示、開封・使用シーンの動画デモなど、実物に触れられない不安を減らすコンテンツを商品ページに実装することです。第二に、ポップアップや催事、家電量販店やセレクトショップとの共同展開で、高関与商材の体験接点を作ることです。第三に、実店舗やイベントで得た試着・接客のデータを、EC側のレコメンドや接客に還流させることです。第四に、生成AIチャットや音声接客を、オンライン上の「その場で聞ける専門スタッフ」代わりに使うことです。最後に、Metaが専任スペシャリストを置いたように、商品知識を持つ人の説明が転換を生むという原則を、自社の接客体制にも反映させることです。

いずれも大規模な投資を前提としません。自社の商材が「触れないと売れない」性質をどの程度持つかを見極め、優先順位をつけて着手することが現実的です。

まとめ

ベストバイとMetaの取り組みは、AI時代の購買の重心が「情報」から「体験」へと移りつつあることを示しています。日本のEC事業者に問われるのは、オンラインで体験に近い納得感をどう作るか、そしてオフラインの体験接点とどうつなぐかです。自社の商材特性に合わせて購買体験を設計し直す好機として、この動きを捉えたいところです。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

お問い合わせ