米、カナダ製品に50%関税を提案|越境EC事業者が押さえる3つの論点

米政権がカナダ製品に追加50%関税を提案(2026年8月19日発効予定)。1930年関税法338条を根拠とする異例の措置を、日本の越境EC事業者が押さえるべき3つの論点として解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米トランプ政権が2026年7月、カナダ製の一部品目に追加50%の関税を提案しました。発効予定は8月19日で、今後の交渉で税率が動く可能性があります。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本の越境EC事業者の視点で要点を整理します。

対象は自動車・乳製品・酒類などに限定され、カナダの対米輸出のうち金額ベースで約5%にとどまる見込みです。ただし該当カテゴリの中小事業者には影響が偏る構図で、越境ECの仕入れ・出荷を北米に依存する事業者は、他人事として流さないほうがよい論点を含みます。

何が発表されたのか:1930年関税法338条という異例の根拠

Modern Retailによると、今回の追加関税は自動車、乳製品、酒類、釣り竿、ウィッグなどを対象とし、原油と天然ガスは除外されます。発効予定日は2026年8月19日です。

根拠として用いられたのが、1930年関税法(Tariff Act of 1930)の第338条です。これは米国製品を差別的に扱う国に対し、大統領が最大50%の関税を課せると定めた条項で、実際に関税発動へ使われるのは今回が史上初とされます。昨年の関税ラウンドが違憲と判断された経緯があり、政権が新たな法的根拠を持ち出した形です。

対象品目はカナダの対米輸出の約200億ドル分、割合にして約5%と見られます。カナダは米国にとって第2位の貿易相手で、2025年の対米輸出は3,820億ドルでした。数字だけを見れば全体に占める比率は小さいものの、貿易情報企業デカルト(Descartes)のJackson Woodは、乳製品や独立系スピリッツなど該当カテゴリの中小事業者に負担が偏ると指摘しています。背景には、2020年にNAFTAを置き換えたUSMCA(米国・カナダ・メキシコ協定)が7月1日に期限を迎え、1年ごとに更新される不安定な状態に入ったことがあります。

日本の越境EC事業者にとっての3つの論点

まず押さえるべきは、これは基本的に米国とカナダの通商問題であり、国内向けの楽天市場・Amazon.co.jp・Yahoo!ショッピング運営に直接の影響はほぼない、という点です。無理に「日本のECにも激震」と捉える必要はありません。そのうえで、北米向けに販売する、あるいは北米・カナダから原材料を仕入れる越境EC事業者には、次の3つの論点があります。

第1に、原産国リスクの棚卸しです。完成品が日本製でも、原材料や部材の原産国がカナダの場合、仕入れコストに間接的な影響が及ぶ可能性があります。今回も、乳原料を使う冷凍ピザブランドのように「完成品は対象外」と判断されるケースがある一方、原材料の原産国次第で扱いが分かれます。自社商品の部材がどの国を経由しているかを、この機会に一度洗い出す価値があります。

第2に、様子見と先回りの線引きです。物流企業OEC Group New YorkのJoseph Firrincieliは、相次ぐ関税発表に輸入業者が「またか」と慣れてしまい、現時点では出荷計画を変えていないと話しています。関税は発表から発効までに交渉で変動することが多く、慌てて調達先を切り替えるとかえってコスト増を招きます。一次情報を確認しながら、発動が固まってから動く判断が現実的な場面は多いといえます。

第3に、仕入れ国の分散です。特定国の政策一つで調達が揺らぐ構造そのものが、越境ECの利益を不安定にします。関税環境の変化を「今回だけの話」とせず、仕入れ先を複数国に分けておく設計が、中長期のリスク管理として効いてきます。

今後の展望と初動アクション

今後数週間で米国とカナダの交渉が進み、50%という税率が修正される余地があります。日本の越境EC事業者がいま取るべき初動は、大きく次のとおりです。一次情報(米政府の公式発表や貿易専門メディア)で対象品目リストを自社商品と照合すること。北米向けの販売価格に関税転嫁が起きた場合のシミュレーションを、発動前に一度だけ作っておくこと。そして、DDP(関税元払い)で出荷している場合は、条件見直しの要否を物流パートナーと確認することです。生成AIを使えば、公式発表の英文を要約し、自社SKUの原産国リストと突き合わせる作業を短時間で回せます。過去に関税還付を計上したナイキのIEEPA関税還付の事例や、EUのデミニミス撤廃と国際配送の変化も、関税環境の変化にどう構えるかの参考になります。

まとめ

今回のカナダ関税は、対象が限定的で、交渉次第で変動する提案段階のものです。日本の越境EC事業者にとっては、直接の打撃というより「原産国リスクの棚卸し」「様子見と先回りの線引き」「仕入れ国の分散」を再点検する好機と捉えるのが現実的です。関税ニュースに一喜一憂せず、一次情報で自社への影響を淡々と確認する姿勢が、北米市場と付き合ううえでの土台になります。

参考文献

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https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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