Amazon は2026年7月30日の四半期決算で、食品・日用品が本体の成長率を上回ったと明かしました。
日用品リピートの取り込みが、Amazon の伸びを支える主戦場になっています。2026年第2四半期(4〜6月)の売上は2,000億ドルをわずかに超え、前年同期比20%増。そのなかで CEO のアンディ・ジャシーは、食品・日用品カテゴリが Stores 事業全体より「意味のある差で速く」伸びたと述べました。生鮮の月間アクティブ購入者は年初から50%以上増えています。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者向けに論点を整理します。
Amazon決算が示した生鮮・日用品の数字
結論から言えば、Amazon の成長ドライバーは「高単価の一点買い」から「低単価の高頻度リピート」へ重心を移しています。Modern Retail によると、ジャシーは決算発表で「Grocery and Everyday Essentials growing meaningfully faster than the rest of the business」と語りました。
数字を並べると輪郭がはっきりします。第2四半期の全社売上は2,000億ドル超で前年同期比20%増、その多くは AWS の36.7%増が牽引しましたが、オンラインストア収益も15%増でした。上半期には即日・翌日配送の取扱点数が40%以上増加。生鮮の月間アクティブ購入者は年初比で50%以上増え、生鮮を含む即日注文は1注文あたりの点数が平均3倍以上になり、生鮮食品が Amazon.com のベストセラー上位20位のうち6枠を占めるまでになりました。Amazon Pharmacy の利用者も上半期で2倍以上に増えています。
背景にあるのが2026年5月に米国で立ち上がった30分以内配送「Amazon Now」です。TechCrunch の報道によれば、アトランタ、ダラス・フォートワース、フィラデルフィア、シアトルなどで開始し、マイクロフルフィルメントセンターを起点に生鮮・日用品・ヘルスケアなどを扱います。第2四半期にはさらに米国内80都市へ広げたとされます。なお日本での Amazon Now 展開は本稿執筆時点で公表がなく、要確認です。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
第一に、セール期の設計が「客単価」から「購入頻度」へ移ることです。今年の Prime Day は6月23日から26日に前倒しされ、第2四半期に売上が計上されました。Numerator の推計では1世帯あたりの平均支出は143.45ドルで、前年の156.37ドルから下がっています。点数は増えても単価は下がる。プロテイン飲料や経口補水パウダーが売れ筋上位に入ったのは象徴的で、セールが「まとめ買いの機会」に変質したことを示します。楽天のお買い物マラソンやYahoo!ショッピングの5のつく日でも、同じ力学は起きているはずです。単価の高い一点勝負ではなく、消耗品の買い置き需要をどう取るかが問われます。
第二に、配送速度が「日用品カテゴリの参入条件」になりつつある点です。40倍の品揃えと即日配送という組み合わせは、日本では楽天西友ネットスーパーやイトーヨーカドーネットスーパー、Amazon.co.jp の生鮮領域が担ってきました。中小のEC事業者が30分配送で戦うのは現実的ではありません。むしろ狙うべきは、即配網が扱いにくい定期性の高いニッチ商材です。ペット用療法食、サプリメント、業務用消耗品といった「指名買いされる補充品」であれば、配送速度より在庫の安定と定期便の使いやすさが勝負どころになります。
第三に、リピート前提の商品ページと同梱設計です。生鮮を含む注文の点数が3倍という数字は、ついで買いが起きる導線が機能していることを意味します。自社ECでも楽天でも、単品ページに「何個で何日分か」「セットならいくら安いか」を明記し、まとめ買いのSKUを用意するだけで平均点数は動きます。定期おトク便や楽天の定期購入に相当する仕組みを、面倒な解約導線で囲い込むのではなく、頻度変更のしやすさで選ばれる設計にしておくことが中長期では効きます。なお楽天市場では商品ページから楽天外へ誘導することが規約上できないため、リピート設計は楽天内の定期購入機能とバンドルSKUで完結させる必要があります。
今後の展望と初動アクション
今後注目すべきは、Amazon が生鮮を入口に「日常の補充需要」をどこまで囲い込むかです。ジャシーは Prime での即日配送対象が数百万点にのぼり、一般的な大型店の最大40倍の品揃えだと強調しました。ウォルマートやターゲット、コストコとの競争軸が価格から「補充のしやすさ」へ移れば、日本のモール運営にも同じ発想が輸入される可能性があります。
日本のEC事業者がいま着手できることは3つあります。まず、自社の売上を「初回購入」と「再購入」に分けて集計し、リピート比率と平均購入間隔を把握することです。次に、上位10SKUについて「1回あたりの消費量と次回購入までの日数」を仮説として置き、まとめ買いSKUと定期便の価格差を設計し直すこと。最後に、セール期のKPIを客単価から「1注文あたり点数」と「同一顧客の年間購入回数」に変えることです。これらは広告費を増やさずに着手でき、効果の測定も既存の受注データで完結します。
まとめ
Amazon の第2四半期決算は、生鮮の月間アクティブ購入者50%増、生鮮を含む注文の点数3倍という具体的な数字で、日用品リピートが成長の中心になったことを示しました。日本のEC事業者にとっての含意は、速さの真似ではなく、補充されやすい商品設計とリピート指標への切り替えです。単価を守る発想から、購入回数を増やす発想へ舵を切る時期に来ています。
参考文献
- Modern Retail|Amazon says groceries and essentials are growing ‘meaningfully faster’ than the rest of its Stores business
- TechCrunch|Amazon launches 30-minute delivery across the US
- Digital Commerce 360|Amazon launches Amazon Now in U.S. for 30-minute delivery
- Numerator|Prime Day tracker
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。